7人のメイド物語

モモん

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第五章 結婚

第99話 実食!

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 俺は、ハリで魚醤とワサビ、鰹節とウスターソースみたいなのを見つけた。青のりもあった。
「タウ、肝心なモノ忘れてないか?」
「えっ、そうだ、ソフィアのお土産を忘れるところだった。」
「そうだよな。何のためにここへ来たのか忘れてただろ・」
「ああ、ありがとう。」
 雑貨店や洋服店、アクセサリー店などを回って気に入ったモノを買っていくのだが、どうも気に入らない。浴衣みたいな衣類や西洋風の人形、美しい食器などを買ったのだが、ソフィアに似合うかと言われると疑問が残る。
「唯一、ソフィアに似合いそうだって思ったのは、この髪留めなんだけど銀貨二枚なんだよね……。」
「別に金額じゃないだろ。アタイも姫様に似合うと思うぜ。」
 不満もあったが、その日のうちに王都に帰ることができた。早速、陛下に推進機の報告をして魔法局と価格を調整する旨の確認を取った。土産は王妃と揃いのティーカップだ。白磁に花柄のデザインで、日本でも人気だったアレに似ている。
「王女様、ただいま戻りました。」
「おかえりなさい。いかがでしたか?」
「推進機のおかげでシーサーペントが大量に獲れました。」
「では、また食堂に?」
「いえ、今回はうちの惣菜店で販売してみようと思います。」
「まあ、では国民の口に入るのですね。」
「ええ。白焼きにして販売するつもりです。」
「あれは美味しいですからね。」
「明日、こちらにもお持ちしますよ。新しい調味料が手に入りましたので、そのお披露目も兼ねてね。」
「まあっ。楽しみですわ。」
「それから、これお土産なんですけど……、なかなかいいものがなくて安物ですみません。」
「まあ、蝶の髪留めですね。つけてくださいな。」
「はい。」
 ソフィアの金髪に黒い蝶の髪飾り。透かし彫りになっている。
「綺麗です。メイドさん達にも、少し小さい色違いのものを買ってきましたので渡してあげてください。」
「ありがとう、タウ。」
 喜んでもらえたようだ。

 この日はそのまま家に帰った。やることは沢山ある。魔法局に渡す推進機を作って魔石をはめ込み、タコとシーサーペントの下処理をして、翌日の指示をする。大釜を作ってコメを研いでご飯を炊く。タコ焼きの器具を作って、かば焼きのたれを調合し、シーサーペントの切り身に串を通して焼き上げていく。もちろん、ミーシャとエリスにも手伝ってもらった。
 今日の晩飯は、シーサーペントのかば焼き丼と蛸ワサだ。
「主、この白いのは麦とは違いますね。」
「うん。コメという穀物なんだ。うん、シーサーペントのかば焼きには、やっぱりコメが合うな。」
 かば焼き丼は大好評だったが、蛸ワサは好みが別れた。というよりも、ワサビに対する好みだろう。
「主、明日はお休みをいただいて、里に帰ってこようと思います。」
「うん。それがいいよ。そうだ、これジュリに渡して。ソフィアとお揃いなんだ。ジュリはソフィアにあこがれているみたいだから喜んでくれると思うよ。」
「ありがとうございます。」
「私たちには?」
「花の髪飾りだけど、みんなの分も買ってきたよ。」
 こういうところで手を抜いてはいけない。女性とは、そういう生き物なのだから……。

 翌朝、魔法局に顔を出し、魔法局長に推進機を渡して増産をお願いした。
「ふむ。売れることが間違いない製品ですからな。全力やらせますよ。」
 魔法局長もご機嫌だ。そのまま飛空艇班にも顔を出して、シーサーペントの魔石を10個渡した。
「こんなに恵まれた環境で開発ができるなんて初めてです。ありがとうございます。」
「頑張ってください。期待していますよ。」
 続いて医療課でシーサーペントの素材を渡し、総務局長に夜お邪魔する旨伝えた。
 次に時間を見計らって陛下のところに行く。民間では昼飯は一般的でないが、城では夜遅くまで仕事をすることも多いので、昼食は定着している。当然、料理長には事前に連絡してあった。
「今日のお昼は、シーサーペントのかば焼き丼になります。」
「何でしょうこの香りは。魚醤かしら。」
「はい。魚醤に甘みをつけて煮詰めてあります。主食の白いものはコメという穀物で、ハリで見つけてきました。」
「こ、これは!」
「美味しいですね、お父様。」
「白焼きとは違った美味しさね。」
「甘じょっぱいタレがコメというのに沁みていていくらでも食べられるな。」
「コメの種も入手できましたので、農林局と調整してわが国でも栽培できればと考えています。」
「タウの次のポストは農林局長かな。」
「あら、魔法局からも要望が来ていますわよ。」
「お父様、それを言ったら医療課からも要望されていますからね。」
「どちらにしても、教育局の後釜を考えんといかんな。」
「教育局は大幅な増員が必要ですわね。他の局とのパイプ役も必要ですし、いっそのこと全部の局から移動させた方が良いかもしれませんね。」
「うむ。次の局長会議で諮ってみるか。」

 この日はそのまま帰宅し、魔道具の構想を具体化していった。ワンボックスカーを流線形にしたイメージでハンドルとブレーキを組み込む。
「視界を広くするために、ガラス部分が増えてくるな。推進機は前進と後退を装備して……、あれっ、これだけで動きそうだな。」
 早速ジュラルミンで骨組みを作り、魔道具を組み込んで魔導線で配線をする。風を吹き出す魔法式は水流操作と構造が似ているため、変数の部分はすぐに確認できた。ヘッドライトの魔道具も船で作ったものを応用できたし、バックミラーも取り付けた。下部にも噴出孔を作って魔道具を埋め込む。下部の噴出孔は、浮かび上がるほどのものではなく、車体を少し浮かせる程度のものだ。出入り口を作れば一応の完成だ。
「強化ガラスはとりあえず前面だけでいいかな。よし、これで試運転できるぞ。」
 すべての魔石に魔力を流して起動させると、少し浮き上がる感じがした。ギアをローに入れてアクセルを踏む。アクセルの踏み込み量で魔力の強さを制御してみたのだ。魔導車はゆっくりと前進する。敷地から通りへ出てギアをセカンドにして速度をあげていく。ブレーキや後退の試験をして家に戻る。全部の座席にクッションを入れてシートベルトを設置し、ガラスを取り付ければ魔導車の完成だ。
 俺はエリスを除いて屋敷に残っていた全員を呼んで魔導車に乗ってもらい、試乗会を行った。
「自動馬車の完成でござるな。」
「馬がいないのに何で動くんだ!」
「動く理屈は船と同じだよ。」
「これも、お金の匂いがしますわ。」
「普及させるのは当分先だよ。こんなものをいきなり出したら、事故が増えて大変なことになるからね。」
 ともあれ、これを飛空艇班のスタッフに見せて、バラバラに設置した魔石の魔法式をまとめてもらい、システム化していく。
 飛空艇の完成は近いだろう。


【あとがき】
 一気に飛空艇に近づいてきました。とりあえず、魔導車を走らせてみます。
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