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第五章 結婚
第97話 自動小銃とバズーカ
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ヤップまでゆっくり走っても3時間だが、飛ばしたところ2時間で到着した。アノーラの船を探したが見当たらなかったので、俺は収納から戦闘艦を取り出して海に浮かべた。
「何だよこれ。」
「シーサーペント狩り専用の船だよ。」
「面しれえ、じゃ早速行ってみようぜ!」
アイラに主砲の操作を簡単に教えて海に出た。
「でも、場所が分からないな。方位磁石があるから帰ってくるのは簡単だけど……」
「まあ、適当に行こうぜ。」
推進装置のギアを4速まであげると、船首が浮き上がって不安定になってしまう。俺は3速でしばらく走ってみた。
「出てこねえな。」
ギアを2速に落としてゆっくり進んでいくと、なにかが船体にぶつかったようでゴンと鈍い音がした。水面を見ると長い魚影が並走しているのがわかった。
俺は収納から自動小銃型魔道具を取り出してアイラに渡した。
「これで、水の中にいるやつを撃ってみて。レバーを氷にして撃てば多分効くと思うんだ。」
「これがスイッチなんだな。分かった!」
アイラは後部のドアを開けてデッキに出て行った。そこから惨殺劇が始まった。万一を考えて命綱をつけてもらったのだが、一撃一殺でシーサーペントを片づけていく。
戦闘が終わったとき、船の進んできた後ろには数えきれないほどのシーサーペントが浮いていた。
「おっ、もう一匹いやがった。」
バシュ!
「何だ、シーサーペントじゃねえよ。」
そこには白いマンボウのような魚が浮いていた。体長は5mくらい。大物だ。俺は船を反転して、それらを全部収納に納めていった。
港に戻るとアノーラさんの船も戻っていた。
アイラがデッキに出てアノーラさんに手を振った。
「やっぱりお前たちの船だったか。」
「やっぱりって?」
「銀色の船が、帆もないのに高速で沖に向かっていたって見た仲間がいたんだ。」
「あははっ、でも大漁だったぜ。」
「どこに……って、収納ってやつか。」
「ああ、首を出さなかったから、こいつで一撃だよ。」
「何だそれは?」
「ジドーショーガ魔道具って新兵器だ。」
「自動小銃型な。アノーラさん、久しぶりです。」
「一週間前に会ったばかりだろうが!まあいい、獲物は?」
「シーサーペントが20匹くらいと白いのが2匹です。」
「二人だけで20匹だと!まさか白いのって……。」
「ここで出していいですか?」
「いや、市場で出してくれ。運ぶのが大変だ。血抜きは?」
「してないです。」
「なら、急いで血抜きしちまおう。みんなも来てくれ。」
周囲に集まっていた人にも声をかけて皆で移動する。順に収納から出していくとすぐに血抜きを手伝ってくれた。
「くっ、やっぱりマルボロかよ。」
「マルボロ?」
タバコかよ……。
「その白いやつだ。白身魚の王様って呼ばれていて、滅多に獲れないんだ。この港で最高級の魚だぜ。」
「じゃあ、シーサーペントの魔石とマルボロ一匹だけもらっていきますので、あとは皆さんの酒代にしてください。」
「いいのかよ……。」
「もちろん。」
「みんな聞いた通りだ。今夜はタウ教育長の驕りだぜ!」
「「「オーッ!」」」
シーサーペントが27匹もいたため、市場で受け取り拒否されてしまい、結局7匹は持ち帰ることにした。魔石も27個受け取って船に戻る。
「じゃあ、アノーラさんの船に推進機を付けますから。」
「ああ、頼む。」
船の後部を補強して船外型推進機を取り付ける。5分程で作業は完了した。
「そんなに簡単なのかよ……。」
「試運転しましょう。」
「待ってくれ、わしも乗せてくれ。」
「ああ、漁労長。いいっすよ。」
俺はクルーに説明しながら推進機を稼働させた。
「レバーをこの位置にするとバックします。」
「で、前進はレバーをこの位置に。港を出るまでは遅いほうがいいでしょう。」
「おお、本当に帆をはってないのに動いておる。」
「4速にすると船首が浮くので、3速まででいいと思います。」
「ああ、この速度が出れば十分だ。」
「で、このレバーを氷にして、ここを握るだけなんだ。」
「ホントにそんなんで氷の矢が出るのかよ。」
「いいから試してみな。」
「ああ、何かいるな。」
バシュッ!
アノーラさんの撃った何かは、7mにもなる首を持ち上げた。
「ヌ、ヌシだ……」
ヌシと呼ばれたモノは首をあげたまま船を追ってくる。
「アノーラ、火のほうにして撃ってみろ。」
「こ、こうか……」
ボムッ!
「だ、ダメだ。こいつでも効かない……」
「ちょっと離れてください。」
俺は収納からバズーカを取り出した。主砲と同じものを携帯型にして作っておいたのだ。
バスン!
1mほどの火球が打ち出され、ヌシに命中。ヌシはそのまま沈んでいった。
「そ、それは?」
「バズーカ型魔道具。自動小銃の強力版です。」
「戦争でも始めるのか?」
「対ドラゴン用ですよ。戦争は嫌いですからね。」
「アイラ、お前の主を信用していいんだろうな?」
「た、多分……。」
その夜は大宴会だった。俺は乾杯をして魚をご馳走になり部屋に戻って自動小銃とバズーカを作った。アノーラさんのクルーからリクエストされたのだ。それから、漁労長から依頼された船外機を作って寝た。
朝起きると、アイラの胸が目の前にあった。こいつら、絶対に俺を男だとおもってないよな……。
俺はアノーラさんの船に行き、自動小銃とバズーカを渡した。
「何かあったらアイラさん充てに手紙でもください。」
「この料金はどうしたらいい。」
「貸しにしておきます。僕が困ったときに助けてもらいますから。」
「お前が困った時っていうのがイメージできないが……。」
「自分が動けない時って来ると思いますから、その時に返してください。」
「分かった。じゃあ、またな。」
「ええ、お元気で。」
そのまま漁労長を訪ねて船外機を渡した。
「製品化した時の料金は魔法局と相談します。」
「なるべく安く頼む。」
「そうですね、シーサーペントの魔石を提供すれば安くできると思いますよ。」
「ホントか、それなら助かるが。」
俺たちは朝食を食べてヤップの町を後にした。
【あとがき】
ヌシは首長竜のイメージです。浮袋がないので沈んでいったと考えます。全長20m、この世界最大級の生物です。
「何だよこれ。」
「シーサーペント狩り専用の船だよ。」
「面しれえ、じゃ早速行ってみようぜ!」
アイラに主砲の操作を簡単に教えて海に出た。
「でも、場所が分からないな。方位磁石があるから帰ってくるのは簡単だけど……」
「まあ、適当に行こうぜ。」
推進装置のギアを4速まであげると、船首が浮き上がって不安定になってしまう。俺は3速でしばらく走ってみた。
「出てこねえな。」
ギアを2速に落としてゆっくり進んでいくと、なにかが船体にぶつかったようでゴンと鈍い音がした。水面を見ると長い魚影が並走しているのがわかった。
俺は収納から自動小銃型魔道具を取り出してアイラに渡した。
「これで、水の中にいるやつを撃ってみて。レバーを氷にして撃てば多分効くと思うんだ。」
「これがスイッチなんだな。分かった!」
アイラは後部のドアを開けてデッキに出て行った。そこから惨殺劇が始まった。万一を考えて命綱をつけてもらったのだが、一撃一殺でシーサーペントを片づけていく。
戦闘が終わったとき、船の進んできた後ろには数えきれないほどのシーサーペントが浮いていた。
「おっ、もう一匹いやがった。」
バシュ!
「何だ、シーサーペントじゃねえよ。」
そこには白いマンボウのような魚が浮いていた。体長は5mくらい。大物だ。俺は船を反転して、それらを全部収納に納めていった。
港に戻るとアノーラさんの船も戻っていた。
アイラがデッキに出てアノーラさんに手を振った。
「やっぱりお前たちの船だったか。」
「やっぱりって?」
「銀色の船が、帆もないのに高速で沖に向かっていたって見た仲間がいたんだ。」
「あははっ、でも大漁だったぜ。」
「どこに……って、収納ってやつか。」
「ああ、首を出さなかったから、こいつで一撃だよ。」
「何だそれは?」
「ジドーショーガ魔道具って新兵器だ。」
「自動小銃型な。アノーラさん、久しぶりです。」
「一週間前に会ったばかりだろうが!まあいい、獲物は?」
「シーサーペントが20匹くらいと白いのが2匹です。」
「二人だけで20匹だと!まさか白いのって……。」
「ここで出していいですか?」
「いや、市場で出してくれ。運ぶのが大変だ。血抜きは?」
「してないです。」
「なら、急いで血抜きしちまおう。みんなも来てくれ。」
周囲に集まっていた人にも声をかけて皆で移動する。順に収納から出していくとすぐに血抜きを手伝ってくれた。
「くっ、やっぱりマルボロかよ。」
「マルボロ?」
タバコかよ……。
「その白いやつだ。白身魚の王様って呼ばれていて、滅多に獲れないんだ。この港で最高級の魚だぜ。」
「じゃあ、シーサーペントの魔石とマルボロ一匹だけもらっていきますので、あとは皆さんの酒代にしてください。」
「いいのかよ……。」
「もちろん。」
「みんな聞いた通りだ。今夜はタウ教育長の驕りだぜ!」
「「「オーッ!」」」
シーサーペントが27匹もいたため、市場で受け取り拒否されてしまい、結局7匹は持ち帰ることにした。魔石も27個受け取って船に戻る。
「じゃあ、アノーラさんの船に推進機を付けますから。」
「ああ、頼む。」
船の後部を補強して船外型推進機を取り付ける。5分程で作業は完了した。
「そんなに簡単なのかよ……。」
「試運転しましょう。」
「待ってくれ、わしも乗せてくれ。」
「ああ、漁労長。いいっすよ。」
俺はクルーに説明しながら推進機を稼働させた。
「レバーをこの位置にするとバックします。」
「で、前進はレバーをこの位置に。港を出るまでは遅いほうがいいでしょう。」
「おお、本当に帆をはってないのに動いておる。」
「4速にすると船首が浮くので、3速まででいいと思います。」
「ああ、この速度が出れば十分だ。」
「で、このレバーを氷にして、ここを握るだけなんだ。」
「ホントにそんなんで氷の矢が出るのかよ。」
「いいから試してみな。」
「ああ、何かいるな。」
バシュッ!
アノーラさんの撃った何かは、7mにもなる首を持ち上げた。
「ヌ、ヌシだ……」
ヌシと呼ばれたモノは首をあげたまま船を追ってくる。
「アノーラ、火のほうにして撃ってみろ。」
「こ、こうか……」
ボムッ!
「だ、ダメだ。こいつでも効かない……」
「ちょっと離れてください。」
俺は収納からバズーカを取り出した。主砲と同じものを携帯型にして作っておいたのだ。
バスン!
1mほどの火球が打ち出され、ヌシに命中。ヌシはそのまま沈んでいった。
「そ、それは?」
「バズーカ型魔道具。自動小銃の強力版です。」
「戦争でも始めるのか?」
「対ドラゴン用ですよ。戦争は嫌いですからね。」
「アイラ、お前の主を信用していいんだろうな?」
「た、多分……。」
その夜は大宴会だった。俺は乾杯をして魚をご馳走になり部屋に戻って自動小銃とバズーカを作った。アノーラさんのクルーからリクエストされたのだ。それから、漁労長から依頼された船外機を作って寝た。
朝起きると、アイラの胸が目の前にあった。こいつら、絶対に俺を男だとおもってないよな……。
俺はアノーラさんの船に行き、自動小銃とバズーカを渡した。
「何かあったらアイラさん充てに手紙でもください。」
「この料金はどうしたらいい。」
「貸しにしておきます。僕が困ったときに助けてもらいますから。」
「お前が困った時っていうのがイメージできないが……。」
「自分が動けない時って来ると思いますから、その時に返してください。」
「分かった。じゃあ、またな。」
「ええ、お元気で。」
そのまま漁労長を訪ねて船外機を渡した。
「製品化した時の料金は魔法局と相談します。」
「なるべく安く頼む。」
「そうですね、シーサーペントの魔石を提供すれば安くできると思いますよ。」
「ホントか、それなら助かるが。」
俺たちは朝食を食べてヤップの町を後にした。
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