7人のメイド物語

モモん

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第五章 結婚

第92話 メロン

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 なぜか俺は魔法局で講演していた。俺が教わりに来たのになんでこうなった……。
「人間が動力を使って空を飛ぶにはいくつもの方法がありますが、現実的な二つに絞ってお話しします。
一つ目は、速い速度で進んで浮力を得る方法で、重さにもよりますが時速300kmを超えれば浮力が発生します。
これには丈夫なタイヤと長い滑走路が必要で、翼をこのような形状にすることで空気の流れの時差を作って上向きの浮力を得ます。」
 俺は黒板を使って説明していく。
「ただし、高速で飛行する半面、事故が起きた時のダメージも増大します。
事故が起きた時の生存率はほぼ0%だと思ってください。」
 会場がどよめく。
「上下左右の方向を調整するために、舵をつけてやる必要もありますね。
設備も必要ですから、特定の2点間を行き来するには便利な方法です。
もう一つは、上向きの推進力作ることで上昇する方法で、例えばこういった箱を作って4箇所から風を吹き出せば上に上がります。
この方法の難しいところは、吹き出す力を調整しないとバランスが取れないところにあります。そして横方向にも吹き出す装置をつけることで、平行移動が可能となります。
移動速度はそれほど速くできませんが、どこでも離着陸できるのと安全性を確保できるのはこちらだと思います。
横方向の出力を2系統作ってやれば、左右に曲がることも可能です。
僕が考えているのはこっちですね。馬車のような乗り物をイメージして、夜間でも飛行可能なライトをつける。暑さ寒さを調整できる空調をつけてみようと考えています。
素材については、軽い金属が理想的で、このジュラルミンが最適だと思っています。
ただし、塩水に弱いので、海は不向きですけどね。
以上です。」
 水平の測り方などいくつかの質問に答えて講演は終わった。
「確かに、教育局長はご自分で考えてこられたようだ。」
「それだけじゃありません。私たちはこれから箱を浮かせようとしていただけなのに、教育局長は具体的な方策まで考え、すぐにでも実現可能なレベルにおられます。」
「そうです。できれば、我々をご指導いただけないでしょうか!」
「どうじゃな、局長。やってくれぬか。」
「そうおっしゃるのであれば、一緒にやらせていただきます。若輩者ですがよろしくお願いします。」

 その後で、エマさんのレクチャーを聞いて魔法式の概略と魔石への書き込み方法、制御の仕方を教わった。そのついでに、外装を特定の温度にする魔法式も教わり、俺は家に帰った。
「エリスおいで。」
「はい、ご主人様。」
「服を脱いで、そこに横になってくれ。」
「はい。」
「一度魔石を取り外してバックアップをとるからね。」
「はい。」
 エリスのお腹を開けてパネルから魔石を取り出すとエリスは停止した。魔石のバックアップは元になる魔石のデータを読み取って書き写すだけの簡単な作業だ。エリスに使われていた魔石は真正ドラゴンのもので、希少なものだった。今回、ドラゴンを討伐したことで入手できたためバックアップをとっておくことにしたのだ。
 数分でコピーを終えた俺は、元の魔石に外装の温度を一定にする魔法式を書き加えてエリスにセットした。魔力を注入することでエリスは再起動する。
「魔法式を追加したんだけど、具合はどうだい。」
「問題ございません。」
 すぐにエリスの表面は人肌になってきた。次はシリコーンゴムの塗布だ。肌の色は色白のジャニスと同色にしてある。
「目を閉じて。」
「はい。」
 俺は物質制御の能力をフルにあげて前面にシリコーンゴムを塗布した。胸は少し厚めに塗ってある。髪の毛やまつ毛・爪は避けてある。
「うつぶせになってくれ。」
「はい。」
 背中側にも均質に塗布していく。
「もう一度仰向けに。」
「はい。」
 乳首をピンクに塗って定着させる。同じ色を唇にも使った。
「ジャニス、どうかな。」
「驚きました。お腹の切れ目も見えなくなりましたし、普通の女の子にしか見えません。」
「くっ、俺よりも色白じゃねえか……」
「触ってもほかの人と変わりませんわ。暖かいし……」
「ジャニス、歩いて鏡のところに行ってごらん。」
「はい。」
 起き上がる時に胸がプルンと揺れた。
「これが……わたし……」
「そうだよ。胸が少し大きくなったから、ブラは調整したほうがいいかもね。」
「胸は俺の勝ちだな。」
「肌の表面は柔らかくなったから、剥がれたら言ってね。すぐに直すから。」
「はい。ありがとうございます。」
 エリスの目に涙が浮かんでいた。そんな機能があったのか?

「主、エリスの感情が伝わってきます。本心から喜んでいるようです。」
「えっ、俺には何も……」
「エルフの同調だと思います。普段は閉じているんですよ。怒りや妬みの感情は嫌いですからね。」
「うん。そのほうがいいだろうね。」

 翌日、俺は城に登った。最初はソフィアのところだ。入り口でメイドさんからおめでとうございますと声をかけられた。
「ご主人さまがお見えです。」
「えっ、ちょっと待って……」
 なんだかバタバタとしている。
「どうぞ。」
「汗をかいてますよお姫様。」
 俺はハンカチで額に浮いた汗を拭ってやる。
「バカッ!もう……」
 一日空いたことで気恥ずかしさが……
「ハリで入手したメロンを持ってきました。皆さんでどうぞ。」
 テーブルを出してメロンの乗った皿を並べる。
「また後で来ますから。」
 そういって部屋を後にした。王様と王妃様のところへもメロンを献上した。
「お披露目はどうするかのう。」
「ソフィア様の誕生日は如何でしょうか。」
「わたくしもそれでよろしいかと……ああ、このメロンの芳醇なこと。」
「まったくだ。ハリにこのようなものがあったとはな。」
「種をとりましたので、栽培できないか試してみますよ。農林局長にも話をして協力してもらいます。」
「タウ。」
「はい。」
「無理はするなよ。ここまで来た以上、お前の体はお前だけのものではなくなったのだからな。」
「肝に命じておきます。」
「そう。タウのからだは、私とソフィアのものよ。」
「なんじゃそりゃ!」

「さて、次は農林局にするか。」
 農林部長に試食してもらい、栽培をお願いする。
「どうも、育て方がむつかしいみたいで、多分手を入れないと際限なく枝分かれして美味しい実がとれないみたいなんですよ。できればエルフに協力をお願いした方が良いかもしれません。」
「エルフか……」
「なにかあったんですか?」
「ああ。ちょっとトラブルがな。」
「局長!」
「どうしたんだ騒がしい。」
「これ、召し上がられました?」
「いや、まだだが。」
「何もいわず、一口お召し上がりください。」
「うん?どれ……」
 パクッと一口でほおばる。
「なんじゃこりゃ!」


【あとがき】
 ああ、また伏線が……。
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