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第五章 結婚
第91話 魔法局
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残り二つの町をまわり、一行は王都に帰り着いた。早速兵者でドラゴンをお披露目し、料理長にシーサーペントを一匹渡したその夜、俺は父と母を訪ね報告をした。
「これ、冷蔵庫とハリで仕入れた異国の果実で作ったジュースです。」
「あら、学長室にもほしいわね……。」
「次に行ったときにお持ちします。」
学び舎の寮について来年度から導入することが決まったとか概の報告をし、最後に言った。
「ソフィアにプロポーズしました。」
二人とも無言でうなづいている。
「ソフィアは了解してくれました。」
お母さんはその瞬間口元を覆い、涙を浮かべてくれた。
「陛下はなんと?」
「うむと、一言だけ。」
「そうか。めでたいことだな。よくやった。」
視界の端にとらえていたメイドさんが小さくガッツポーズしてくれた。
「でも、あのソフィアがそんなに成長していたなんて……」
もう、涙がポロポロこぼれている。
「ああ。我が家にとっては二倍にめでたい事だな。だがな……、宰相なんて冗談じゃないぞ!」
「オホホッ、観念なさいな。学長の職がどんどん重くなっていくのに、あなただけノホホンと局長でいる事に不満を感じていましたもの。謹んでお受けくださいな。」
「くっ、理不尽だ……。いや、タウに副宰相とかまだ早すぎる。二人で反対しよう、なっ!」
「それが、財務局長までその場で賛同すると……」
「現時点で3対2か……、他の局長は……、俺の不幸せを願うやつらばかりだよなぁ……。」
自宅に帰った俺は、みんなの祝福を受けた。翌日、俺は学び舎の寮を作って魔法局に出向いた。
「おお、教育局長、お疲れでしたな。」
俺は今回のあらましを説明して、魔法技師の紹介を頼んだ。
「ふむ。となると水魔法の得意な技師、エマが適任でしょう。」
エマは魔法局のスタッフで、身長150cmくらい。小柄でそばかすの可愛い女性だった。年齢は30才くらいだろうか、三つ編みに丸メガネが似合っている。
「えーっ、私、お風呂システムの量産を頼まれていて忙しいんですけど……。」
「お風呂システムですか?」
「そう。誰かさんのせいで、個人宅の希望者が増えて大変なんですよぉ。」
「それは申し訳ございません。」
「まあまあ、そういわずに協力してくれよ。学び舎の方が軌道にのれば、我々も助かるんだから。」
「何か、美味しいモノでも食べればやる気も出てくるんだけどなぁ……。」
さっき局長に渡した手土産をチラッと見ている。
「新作のスイーツに興味ありませんか?」
メガネの中の瞳がキラッと輝いた。
「新作……。」
「ハリの町で仕入れた外国産のフルーツを使って試作品をいくつか作ったんです。まだ、王女様にもお出ししていないんだけど、そんなにお忙しいんじゃ仕方ないですね。民間の魔法技師を尋ねてみますよ。」
俺はわざと椅子から立ち上がった。
「くっ……、ホントなんでしょうね……。」
「はいっ?」
「ホントに新作なんでしょうね……。」
俺はマンゴーを使ったプリンをテーブルに出した。
「た、ただのプリンじゃない……。」
「こっちは、メロンというフルーツです。」
「メ、メロン……?何、この芳醇な香りは……。」
「ピーチというフルーツのシャーベットもいけますよ。」
「くっ……、私の負けよ。プリン……いただいてもいいのね?
「どうぞ。」
「他のはあとでいただくからしまっておいて。ここの冷蔵庫じゃ、絶対他の子に食べられちゃうから。」
「はい。」
「クーッ、普通のプリントは一味違った微かな酸味!食感も少し硬めなのね。何よりこの香りよね……。ああ、至福のひと時。」
よし、魔法技師GETだぜ!
「いいこと、魔石を使って魔道具を作るには、魔石のほかにこの魔導線という金属が必要なの。これがないと魔力の伝導ができないからとても貴重なのよ。」
「ちょっと見せてもらっていいですか?」
「どうぞ。」
ここは彼女のラボ。俺は魔導線を収納に取り込んで成分を確認する。銅30%・錫15%・金10%・鉛5%・チタン25%・炭素5%他の細かい成分も確認できた。借りた魔導線を返却して収納にある素材で魔導線を合成した。
「噂に聞いてるわ。収納ってやつね。」
「とりあえず、10kgあれば足りますかね。」
「なっ、何よこの塊は!」
「魔導線の組成を確認して合成してみました。」
「な、何言ってるのよ。」
「素材自体に珍しいものはありませんでした。いくらでも合成できますよ。」
「ま、まさか、そんな……」
エマは魔導線の塊に手を伸ばして何か確認している。
「間違いないわ。自然界では繊維状のものが発見されるだけで、こんな塊は見たことがないわ。これだけの量があれば局で十年は使えるわよ……」
「ちょ、ちょっと待ってて、局長に報告してくるわ。」
「あっ、じゃあこっちの小さいほうをどうぞ。」
流石に10kgの塊は重いだろう。エマは1kgの塊を持って走ったいった。そうか、繊維状のものしかなかったから、魔導線という呼び名がついたんだな。塊なら魔導石とか魔導鋼とか呼ばれているはずだもんな。
ほどなくして10人くらいが走ってきた。
「こ、これが魔導線だというのかね。」
「はい。魔導鋼というか……」
「ジョシュア君確認を!」
「はい。」
ジョシュアと呼ばれた青年は魔導鋼に手をあてた。
「ま、間違いありません。魔導線です。」
「も、もっと必要なら作りますけど……」
「ど、どれくらい作れるのかね。」
「今ある手持ちの素材だとこれの10倍くらいですね。チタンと金が足りないから、王家の鉱山で掘ってくればいくらでも。」
「いくらでも……、今までどれほど苦労してきたと……。」
エマより年長の女性がポロポロと涙を流している。
「魔導線が足りないからと、断念してきた魔道具がどれ程あったと……。」
「これなら、魔石があればいくらでも魔道具が……」
「魔石ですか?この程度ならいくらでも……」
俺はシーサーペントから取り出した魔石を二つ取り出した。
「こ、これは?」
「ヤップの町で船に大弓を取り付けてあげたら、シーサーペントが簡単に倒せるようになったって。お礼に貰ったんです。」
「シーサーペントが簡単に……」
「このサイズなら、飛空艇開発も夢じゃないですよ。」
「へえ、飛空艇ですか。いいですね。」
「あっ……。」
「バカ、機密事項だろ!」
「いや、教育局長の口ぶりからすると、飛空艇が何なのか知っておるようじゃぞ。」
「ええ。僕もいつかは作りたいと思っていますから。」
【あとがき】
海・外国、そして空へ……。まあ、自然の流れですね。……って、広げるの早すぎだろ。伏線回収してからにしようよ……。
「これ、冷蔵庫とハリで仕入れた異国の果実で作ったジュースです。」
「あら、学長室にもほしいわね……。」
「次に行ったときにお持ちします。」
学び舎の寮について来年度から導入することが決まったとか概の報告をし、最後に言った。
「ソフィアにプロポーズしました。」
二人とも無言でうなづいている。
「ソフィアは了解してくれました。」
お母さんはその瞬間口元を覆い、涙を浮かべてくれた。
「陛下はなんと?」
「うむと、一言だけ。」
「そうか。めでたいことだな。よくやった。」
視界の端にとらえていたメイドさんが小さくガッツポーズしてくれた。
「でも、あのソフィアがそんなに成長していたなんて……」
もう、涙がポロポロこぼれている。
「ああ。我が家にとっては二倍にめでたい事だな。だがな……、宰相なんて冗談じゃないぞ!」
「オホホッ、観念なさいな。学長の職がどんどん重くなっていくのに、あなただけノホホンと局長でいる事に不満を感じていましたもの。謹んでお受けくださいな。」
「くっ、理不尽だ……。いや、タウに副宰相とかまだ早すぎる。二人で反対しよう、なっ!」
「それが、財務局長までその場で賛同すると……」
「現時点で3対2か……、他の局長は……、俺の不幸せを願うやつらばかりだよなぁ……。」
自宅に帰った俺は、みんなの祝福を受けた。翌日、俺は学び舎の寮を作って魔法局に出向いた。
「おお、教育局長、お疲れでしたな。」
俺は今回のあらましを説明して、魔法技師の紹介を頼んだ。
「ふむ。となると水魔法の得意な技師、エマが適任でしょう。」
エマは魔法局のスタッフで、身長150cmくらい。小柄でそばかすの可愛い女性だった。年齢は30才くらいだろうか、三つ編みに丸メガネが似合っている。
「えーっ、私、お風呂システムの量産を頼まれていて忙しいんですけど……。」
「お風呂システムですか?」
「そう。誰かさんのせいで、個人宅の希望者が増えて大変なんですよぉ。」
「それは申し訳ございません。」
「まあまあ、そういわずに協力してくれよ。学び舎の方が軌道にのれば、我々も助かるんだから。」
「何か、美味しいモノでも食べればやる気も出てくるんだけどなぁ……。」
さっき局長に渡した手土産をチラッと見ている。
「新作のスイーツに興味ありませんか?」
メガネの中の瞳がキラッと輝いた。
「新作……。」
「ハリの町で仕入れた外国産のフルーツを使って試作品をいくつか作ったんです。まだ、王女様にもお出ししていないんだけど、そんなにお忙しいんじゃ仕方ないですね。民間の魔法技師を尋ねてみますよ。」
俺はわざと椅子から立ち上がった。
「くっ……、ホントなんでしょうね……。」
「はいっ?」
「ホントに新作なんでしょうね……。」
俺はマンゴーを使ったプリンをテーブルに出した。
「た、ただのプリンじゃない……。」
「こっちは、メロンというフルーツです。」
「メ、メロン……?何、この芳醇な香りは……。」
「ピーチというフルーツのシャーベットもいけますよ。」
「くっ……、私の負けよ。プリン……いただいてもいいのね?
「どうぞ。」
「他のはあとでいただくからしまっておいて。ここの冷蔵庫じゃ、絶対他の子に食べられちゃうから。」
「はい。」
「クーッ、普通のプリントは一味違った微かな酸味!食感も少し硬めなのね。何よりこの香りよね……。ああ、至福のひと時。」
よし、魔法技師GETだぜ!
「いいこと、魔石を使って魔道具を作るには、魔石のほかにこの魔導線という金属が必要なの。これがないと魔力の伝導ができないからとても貴重なのよ。」
「ちょっと見せてもらっていいですか?」
「どうぞ。」
ここは彼女のラボ。俺は魔導線を収納に取り込んで成分を確認する。銅30%・錫15%・金10%・鉛5%・チタン25%・炭素5%他の細かい成分も確認できた。借りた魔導線を返却して収納にある素材で魔導線を合成した。
「噂に聞いてるわ。収納ってやつね。」
「とりあえず、10kgあれば足りますかね。」
「なっ、何よこの塊は!」
「魔導線の組成を確認して合成してみました。」
「な、何言ってるのよ。」
「素材自体に珍しいものはありませんでした。いくらでも合成できますよ。」
「ま、まさか、そんな……」
エマは魔導線の塊に手を伸ばして何か確認している。
「間違いないわ。自然界では繊維状のものが発見されるだけで、こんな塊は見たことがないわ。これだけの量があれば局で十年は使えるわよ……」
「ちょ、ちょっと待ってて、局長に報告してくるわ。」
「あっ、じゃあこっちの小さいほうをどうぞ。」
流石に10kgの塊は重いだろう。エマは1kgの塊を持って走ったいった。そうか、繊維状のものしかなかったから、魔導線という呼び名がついたんだな。塊なら魔導石とか魔導鋼とか呼ばれているはずだもんな。
ほどなくして10人くらいが走ってきた。
「こ、これが魔導線だというのかね。」
「はい。魔導鋼というか……」
「ジョシュア君確認を!」
「はい。」
ジョシュアと呼ばれた青年は魔導鋼に手をあてた。
「ま、間違いありません。魔導線です。」
「も、もっと必要なら作りますけど……」
「ど、どれくらい作れるのかね。」
「今ある手持ちの素材だとこれの10倍くらいですね。チタンと金が足りないから、王家の鉱山で掘ってくればいくらでも。」
「いくらでも……、今までどれほど苦労してきたと……。」
エマより年長の女性がポロポロと涙を流している。
「魔導線が足りないからと、断念してきた魔道具がどれ程あったと……。」
「これなら、魔石があればいくらでも魔道具が……」
「魔石ですか?この程度ならいくらでも……」
俺はシーサーペントから取り出した魔石を二つ取り出した。
「こ、これは?」
「ヤップの町で船に大弓を取り付けてあげたら、シーサーペントが簡単に倒せるようになったって。お礼に貰ったんです。」
「シーサーペントが簡単に……」
「このサイズなら、飛空艇開発も夢じゃないですよ。」
「へえ、飛空艇ですか。いいですね。」
「あっ……。」
「バカ、機密事項だろ!」
「いや、教育局長の口ぶりからすると、飛空艇が何なのか知っておるようじゃぞ。」
「ええ。僕もいつかは作りたいと思っていますから。」
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