7人のメイド物語

モモん

文字の大きさ
上 下
85 / 142
第四章 婚約者候補

学長エレーヌ

しおりを挟む
 翌日、城に出ると、総務局長からお呼びがかかった。

「誰のアイデアだ?」

「僕のです。これ以上の適任者は見当たりません」

「……俺も、同意見だ。
エレーヌから注文がある。王妃と同じ服装を用意してやってくれ」

「ありがとうございます」

 こうして学長は決まった。
建物は、城の裏手に俺が立てた。
机と椅子は、アルミの枠を作って、木を充ててもらう。
副学長には、前総務局長のライズリ・ラピス氏で了解を得た。
そろばんと、黒板・白墨も全員分を用意し、希望者の受付が始まった。

 最初は、口コミの数名だったのが、5日目になると一気に申し込みが加速した。
一週間で予定の100人が埋まり、これ以降は来年の入学生として受付だけ済ませておく。

 そして、入学式を迎える。

「みなさん、こんにちわ」

「「「こんにちわ!」」」

 エレーヌ学長の挨拶でスタートした学び舎は、順調に滑りだした。

「すごいです。本当にこんな少人数で……」

「副局長が優秀だからね」

「やめてください。私なんか、各局をまわって候補者を選んできただけですから」

「そこがポイントなんだよ。
この企画がうまくいくかどうかは教師で決まるんだ」

「それよりも学長ですよ。
みんなの意見を聞いて、きっちりと方向性を出してくださる。
適任ですよね」

「ああ、僕の母親だからな」

 それだけでは治まらなかった。
教師が各局のOB・OGであるから、出来のよい子はそのまま局に情報が伝わり、今後の採用計画に盛り込まれていくのだ。
たとえ貧しくても、文書の得意な子、計算の得意な子は、この時点で将来への道が開けた。
そして、人当たりのよさや、几帳面な性格も城の文官として重要な要素だ。
何より、2年目で予定している職場実習では、逆指名を可能にしておいたのだ。


「どうですか学び舎の方は」

「もう、生徒の名前を覚えるのが大変よ。
ほら、学長って直接教える訳じゃないから、接点が少ないでしょ。
あっ、そうだ!給食の時に、一度くらいはタウのお店のお菓子を出してあげたいんだけど、どうかしら」

「いいアイデアですね。裕福ではない子供は、食べたことないでしょうから。
じゃ、アルミの器に木のスプーンで、プリンでも御馳走しましょうか」

「それ、きっと喜ぶわ。お願いしていい」

「承知しました、お母さん」

「まあ。ウフフ」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

無敵少女の意のままに2

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:0

さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:1,206

親父が超絶美人なせいで俺は恋愛ができない

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:112

鳴花

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:895pt お気に入り:5

黒の捜査線 ~猟奇テロと白のコード~

ミステリー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:42

病弱な私はVRMMOの世界で生きていく。

SF / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:528

初恋の思い出はペリドットのブローチと共に

恋愛 / 完結 24h.ポイント:99pt お気に入り:44

わざとおねしょする少年の話

BL / 連載中 24h.ポイント:71pt お気に入り:111

処理中です...