7人のメイド物語

モモん

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第四章 婚約者候補

学長エレーヌ

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 翌日、城に出ると、総務局長からお呼びがかかった。

「誰のアイデアだ?」

「僕のです。これ以上の適任者は見当たりません」

「……俺も、同意見だ。
エレーヌから注文がある。王妃と同じ服装を用意してやってくれ」

「ありがとうございます」

 こうして学長は決まった。
建物は、城の裏手に俺が立てた。
机と椅子は、アルミの枠を作って、木を充ててもらう。
副学長には、前総務局長のライズリ・ラピス氏で了解を得た。
そろばんと、黒板・白墨も全員分を用意し、希望者の受付が始まった。

 最初は、口コミの数名だったのが、5日目になると一気に申し込みが加速した。
一週間で予定の100人が埋まり、これ以降は来年の入学生として受付だけ済ませておく。

 そして、入学式を迎える。

「みなさん、こんにちわ」

「「「こんにちわ!」」」

 エレーヌ学長の挨拶でスタートした学び舎は、順調に滑りだした。

「すごいです。本当にこんな少人数で……」

「副局長が優秀だからね」

「やめてください。私なんか、各局をまわって候補者を選んできただけですから」

「そこがポイントなんだよ。
この企画がうまくいくかどうかは教師で決まるんだ」

「それよりも学長ですよ。
みんなの意見を聞いて、きっちりと方向性を出してくださる。
適任ですよね」

「ああ、僕の母親だからな」

 それだけでは治まらなかった。
教師が各局のOB・OGであるから、出来のよい子はそのまま局に情報が伝わり、今後の採用計画に盛り込まれていくのだ。
たとえ貧しくても、文書の得意な子、計算の得意な子は、この時点で将来への道が開けた。
そして、人当たりのよさや、几帳面な性格も城の文官として重要な要素だ。
何より、2年目で予定している職場実習では、逆指名を可能にしておいたのだ。


「どうですか学び舎の方は」

「もう、生徒の名前を覚えるのが大変よ。
ほら、学長って直接教える訳じゃないから、接点が少ないでしょ。
あっ、そうだ!給食の時に、一度くらいはタウのお店のお菓子を出してあげたいんだけど、どうかしら」

「いいアイデアですね。裕福ではない子供は、食べたことないでしょうから。
じゃ、アルミの器に木のスプーンで、プリンでも御馳走しましょうか」

「それ、きっと喜ぶわ。お願いしていい」

「承知しました、お母さん」

「まあ。ウフフ」
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