7人のメイド物語

モモん

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第四章 婚約者候補

玉子尽くし

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「砂糖ってどうやって作ってるの?」

「砂糖は砂糖の木の樹液を乾燥させて作っているはずよ」

「ほかに、甘い草とか知らない」

「砂糖草っていうのがあるけど、繊維質が多くて食べられないのよ」

「それって、たくさん生えてる草なの?」

「いくらでもあるわよ」

「それ、絞ればいいんじゃない?」

「絞っても、そこまで甘くないのよね」

「煮詰めて結晶化させれば、多分甘くなると思うよ。
ものは試し、やってみよう」

 砂糖草を大量に刈り込み、絞り機で素掘り汁をとる。
これを煮詰めて結晶化させ、もう一度水に溶かしてろ過する。
この時に炭を使って、余計な成分もろ過してやる。
これを再度煮詰めて結晶化させるとザラメになった。

「甘いです。市販の砂糖よりもなめらかで、甘さも同じくらいです」

 俺は水車を増設して、砂糖専用の絞り器を作った。
こっちは火を使うので、大人を雇い入れ、工程ごとに人を配置。
出来上がった砂糖は菓子作り専用にする。

「あとは、玉子を確保できれば、菓子をもっと格安で提供できるんだけど……」

 そんな俺たちの前を鳥が横切った。

「あ、あれは?」

「ああ、地鶏ですよ。
飛べないので、ああして歩き回っているんです」

 俺は、家の裏側を開墾して、高さ2mの石垣を作り地鶏を手あたり次第捕まえてきた。

「地鶏なんかどうするんですか」

「玉子を産ませるんだ」

「確かに地鶏の玉子も使いますけど、小さいし繁殖期でないと生みませんよ」

「最初はそれでいいんだよ」

 確か、春先の日の出と日没にあわせて明暗を作ってやると玉子を頻繁に産むようになるんだったな。
あとは、疑似卵をおいておくと、産み足す性質もあるんだったか……

 50羽近いメス鳥を集めて、人工の照明で誤解させ、偽物の卵で誘発してやると、毎日ではないが卵を産み始めた。
最初はふ化させて増やすので、そのまま抱卵させておく。
やがて、ピヨピヨとヒヨコが産声をあげる。

 こうして、菓子用の玉子も自家調達可能になってきた。
そして、生存競争に負けそうなオスは、食用にさせていただく。
鳥の世話も、人を雇って対応していく。

 その結果、プリンなどの菓子類は半値で販売が可能となった。

「タウ、新しい事業を興したみたいね」

「はい、砂糖と玉子を自家調達しています」

「まあ、玉子ですか。
あーあ、何か美味しい玉子料理を食べてみたいわね」

「いいですよ、屋敷においでになりませんか」

 こうして、王妃と王女に玉子のフルコースを召し上がっていただいた。
茶碗蒸しに、ベーコンのオムレツ。親子丼に温泉卵だ。
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