7人のメイド物語

モモん

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第四章 婚約者候補

2号店

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「一つ、銀貨2枚なんて値段をつけたのに、なんでこんなに売れるんだ……」

「言ったじゃないですか。
貴族にとって、その程度はまったく問題にならないんですよ」

 銀貨2枚は日本円で1万円……信じられねえよ。

「こりゃあ、売り子くらいは雇わないとダメかな……
だけど、孤児院から連れてくるのもかわいそうか。
食べたいのを我慢して売らせるのは酷だよね。
しょうがない、城であたってみるか」


「えっ、タウ君のお店の手伝い!」

「それって、優先的に買えたりするの?」

「それくらいの融通はききますよ」

「うちの妹を雇って!15才、計算も得意よ!」

「姪っ子が、仕事を探してるの!」

 あっという間に売り子が決まってしまった。


「じゃあ、三人で交代に休憩しながらお願いします」

「「「はい!」」」

「あのぉ、私たちの分は先に確保してもいいんですか」

「じゃあ、帰りまでに作っておくから、そこの紙に書いてくれるかな」

「「「はい、お願いします!」」」

 一週間経過したが、まだ開店前の行列は続いている。
500個作っても、午前中で売れてしまう……
だが、それも一か月ほどで落ち着いてきた。
一日、各300個ほどのペースになったのだ。

「やっと落ち着いてきたね。みんなご苦労さん」

「売れ残ったお菓子は、孤児院の子供たちに持ち帰らせてます。
みんな大喜びみたいですよ」

「それはよかった。
エリスも大変だったろう、いつもありがとう」

「いえ、ご主人様に喜んでいただけたら私は幸せです」

 エリスの栗色の髪をなでてやる。
こうすると気持ちよさそうにするのだ。

「だけど、完全に貴族だけの菓子になっちゃったな。
何か、誰でも食べられるような商品を考えたいけど」

「砂糖が高価ですからね。庶民には手が届きませんよ」

「だったら、カボチャやサツマイモで作れば……」

「玉子も高価ですよ」

「そっか、せめて玉子だけでも安くなればな……
安い魔物の玉子とかないの?」

「安いのはありませんね」

「じゃあ、マヨソースの量産も難しいな……」

「マヨソースですか、あれも市場に出せば大ヒット間違いなしですね」

「やめよう、これ以上忙しくなったら手が足りなくなるから」

「でしたら、菓子を含めて外注しましょうか」

「うーん、その辺は任せるよ」

 こうして、菓子作りは外注することになった。
そこでは、マヨソースや唐揚げも作らせて、惣菜専門の”タウの店2号店”も開店した。
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