7人のメイド物語

モモん

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第四章 婚約者候補

プリン・ア・ラ・モード

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 門の横を土魔法で強化し、そこに小屋を建てていく。
調理は屋敷で行うため、売り場だけの簡単な作りだ。
簡単ではあるが、ガラスでショーケースを作り、魔道具師に冷蔵の魔道具を作ってもらう。

「プリンをガラスの器にするのってどうかな」

「でも、それってもったいなくありませんか?」

「そのまま、家で食器として使えるようにデザインするんだ。
5種類くらいから選べるようにすれば、何度買いに来てもいいだろう」

「それって、貴族のお屋敷がプリンの食器でお揃いになりそう」

「買戻しのシステムも作ってやれば、いくらでも買ってくれると思うけどね」

「いいですね。問題はアイラが計算できるかどうか……」

「じゃあ、そろばんでも作ってやるか」

「そろばん?」

「計算する道具だよ」

「そんなものが作れるんですか」

「まあ、任せてよ。
あとは品数だな。
プリンとシュークリーム、チーズケーキにミルクレープくらいでいいかな」

「キャラメルもいいんじゃないですか。
メイドたちがポケットに忍ばせておいて、手の空いた時にパクっと」

「じゃあ、その5種類を30個くらい作って様子を見ようか」

「はい」

 そしてオープン当日を迎えた。
べつに宣伝もしていないのに、開店前に20台ほどの馬車が並んでいた。

「全種類、5個ずつください」

「えっ?」

「お城でご主人様が召し上がられたって、帰ってから奥様に話されるんです。
なんで持ち帰ってくれないんだって、毎回喧嘩されていたんですよ」

「では、奥様の仕返し……」

「私たちメイドもご一緒させていただきますわ」

「アイラ、厨房へ行って在庫全部もってきてくれ」

「はいよ」

 かろうじて、開店前から並んでいた20人分は対応できたが、それもすぐに底をついた。
開店30分で、各100個が売れてしまった。
店の前に、完売御礼の看板を出して、アイラを謝罪要員として立たせ、俺たちは追加生産に入る。
断れないお客が、白い馬車でやってこないとも限らない……

 そして、それは予想通り2台連なってやってきた。
アイラが慌てて厨房に駆け込んでくる。

「やっぱりお見えになりました!」

「な、なんとか間に合ったぞ……
特製プリン・ア・ラ・モードだ」

 王妃と王女には事情を説明してプリン・ア・ラ・モードを5個持ち帰ってもらった。

「明日からは、全部300個用意しよう……」
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