7人のメイド物語

モモん

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第四章 婚約者候補

ミルクレープ

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 アルジャバは賠償の請求に同意した。
賠償額は金貨5万枚、日本円にして250億円だ。

「ふっ、再戦が楽しみだ」

「こっちは迷惑だよ」

「そう言うな。やっと本気になれる相手が見つかったんだ」

「だから、迷惑だって言ってるだろ」

 人質と身代金の交換は鉄の要壁で行われた。
擁壁には引き戸を追加して、出入りできるように改造してある。
ああ、やっぱりこんな立ち合いを引き受けるんじゃなかったよ。

 こうして無事金貨5万枚を持ち帰った俺たちは、翌日式典に引っ張り出されて報奨金を受け取った。
兵士一人当たり金貨10枚。
50万円のボーナスだ。
俺にはこれとは別に金貨5000枚が支給された。
王族手当らしい……

 俺は、金貨10枚で砂糖とミルク、玉子を買い込み、大量のミルクレープを作った。
うちのメイドたちや関係する人たちにお礼として手渡すためだ。

「タウ君、これ美味しいです」

「やっぱり、うちの妹を……愛人でいいからお願い」

 もちろん、王女には真っ先に持って行った。

「ダメよ、一人でこんなに食べたら太っちゃうじゃない」

「側近のみんなに分けようとは思わないんですか」

「だって、こんなに美味しいんだもの」

「みんなで分・け・て・ください」

「じゃあ、また作ってよね」

「はしはい、承知いたしました」


「今日は新しいお菓子を持ってきました」

 キャーッとメイドたちから喜びの声が上がる。

「あらあら、うちの子達ったら、もうタウを完全に身内扱いしてるわね」

「嬉しいです」

「タウ」

「はい」

「今回はご苦労様でした。
聞きましたよ。我が国は一人の死者も出さなかったって」

「運がよかっただけです」

「いいえ。備えがあって、初めて運が作用するんです。
それに、ソフィア王女との婚約もおめでとう」

「ありがとうございます」



「みんな今回もありがとう。
特にシノブには苦労をかけたね」

「当然の勤めでござるよ」

「みんな何か欲しいものはないかい?」

「主、それなんですが、みんな主の考案したスイーツを食べたいときに食べられるようにしたいと意見がありまして……
その、ここで販売できるようにしたいと……」

「へえ、いい考えだね」

「よろしいんですか」

「ああ、そんな簡単なことでいいなら、すぐにでも実現しようじゃないか」

「「「やった!」」」

「でも、こんな郊外でお客さん来るかな」

「大丈夫。メイド仲間の口コミで、広まるのなんてあっという間よ」

「それに、みんなの負担にならないの?」

「それは大丈夫。エリスがいれば、家の中のことはほとんどやってくれるから」
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