7人のメイド物語

モモん

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第四章 婚約者候補

凱旋

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 やがて、敵は最後尾の十数騎と、王族らしい馬車を残すだけとなった。
逃げ出した馬車を、隠れていた分隊が包囲し連行してきた。

「やめろ!俺を誰だと思ってる。
第三王子ジャミールだぞ」

 わめく第三王子を武装解除して牢に入れる。
敵の残骸は、土を収納して穴をあけ埋めてしまった。
壁は残し、2分隊を駐留させる。

 こうして、俺たちは凱旋した。
先触れが簡単な報告を行っており、俺たちは国王以下の祝福を受けながら入城する。

「ご苦労であった」

「はっ、敵1000をほぼ無傷で退け、第三王子以下13名の捕虜を捕まえて戻りました」

「褒章は追って通達する故、今日はかえって体を休めるがよかろう」

 兵団長は退出し、俺が取り残された。

「タウ、ご苦労様でした」

「いえ、僕は準備をしただけですから」

「どうだった初陣は?」

「だいたい想定通りの展開だったので楽でした」

「敵1000を屠っておきながら、想定通りだと、まあ頼もしい後継者だな」

「後継者って……」

「ん、どうした」

「あっ……」

 王女と婚約したことをすっかり忘れていた。

「第三王子ですが、どうなりますか」

「賠償金と引き換えだな。
そうだな、金貨2万枚ほどであろうか」

「あんなのが、王族に入らないでよかったわ。
さあ、タウはソフィアに報告してきなさい。
心配していたのよ」

「はい、失礼します」


 王女の私室入口にいるメイドに声をかける。

「ソフィア様、タウ様がおみえです」

「どうぞ」

「失礼します。無事に戻りました」

 部屋に入るなり王女が抱きついてきた。

「心配したんだから……」

「大丈夫だから、安心して」

 少しそうしていたら、王女も落ち着いたのか体を離した。

「国のため、お疲れさまでした」

「兵士も死なせずにすみました。
これで終わってくれれば良いのですが」

「本当はね。タウに危ないところに行ってほしくないの」

「そうはいきませんよ……」

「わかってる。これは私の我がままだって」

 そういって、王女は唇をつきだしてきた。
俺は、その唇に自分のそれを重ねた。
軽いフレンチ・キスだ。

「ただいま」

「おかえりなさい」

 俺は王女の部屋を出る。
みーちゃった……なんかメイドの声が聞こえた気がした。
多分、気のせいだ。

 屋敷に戻ると、全員が整列して迎えてくれた。

「主、おめでとうございます」

「ありがとう。これも、ミーシャが燃える水のことを思い出してくれたからだよ」

「そんな……、燃える夜を過ごしたいだなんて……」

「言ってねーよ!」
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