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第四章 婚約者候補
密偵
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一か月過ぎたころ、アルジャバから宣戦布告の通達があった。
「では、手筈通りに」
「タウ、兵士長、頼んだぞ」
「大丈夫ですよ。この時に備えて、散々訓練してきましたから」
「では、まいりましょう」
爆弾は、何度も試作を重ねて十分な威力となっており、石油の散布も水鉄砲で訓練を積んできた。
擁壁も完成形で収納に収まっている。
俺と1000名の兵士は装甲馬車に揺られて谷に向かった。
今回、メイドたちは出陣していない。
谷に到着した俺は、早速要壁をセットする。
高さ8m、鋼鉄製の要壁にはこちら側に階段がある。
幅30m、厚さ1.5mの擁壁には、向こう側に高さ1.5mの塀があり、矢を防ぐように作ってある。
手前側は落下防止の柵だ。
兵士たちは、手際よく野営の準備を進め、俺は石油入りの樽や投石機を要壁の上にセットする。
「ついにこの日が来てしまいましたな」
「穏便に済ませてくれれば良かったんですけどね」
「いつかはこういう日が来るもの。
今回はタウ殿のおかげで、準備万端」
「これも、兵士長が僕を信用してくれたおかげですよ」
「いやいや、爆弾の威力と燃える水を見せていただきましたからな。
あれを見せられては、信じないわけにはいきませんよ。
というか、王女の婚約者ですからな。がははっ」
その夜のことである、パリンという音に全員が目覚めた。
「慌てるな、点呼をとれ!」
「分隊ごとに点呼!」
「やれやれ、本当に敵方のスパイが紛れ込んでいたとは」
「情報通りでしたね」
「報告します!
第8分隊のサムザ、ナギ。第9分隊のスザキ。以上3名の姿がありません。
被害は、要壁上に置いてあった弓20丁の弦が切られており、燃える水のカメが3個共割られております。
しかしながら、中身を確認したところ、普通の水に入れ替わっている様子で……」
「よいよい、燃える水を要壁の上に放置するはずがなかろう。
弓もカメもおとりだよ」
「おとり……ですか」
「密偵のやつらも、手ぶらじゃ帰れんだろうから、手土産を持たせてやっただけだ」
「なるほど、勉強になります」
「だが、まだ残っているかも知れん。燃える水はすべてこぼれたということにしておけよ」
「かしこまりました」
「それから、密偵であった3名と特に親しかったものを拘束しておけ」
「はっ」
「拘束しないでいいですよ。
檻がありますから」
対象5名のうち、逃げ出そうとしていた1名は拘束し、他は事情を説明して檻に入ってもらった。
カメの中身が水だったと報告されると、敵方も慎重になるだろう。
これで、抜け出す者がいなければ、敵方の密偵は排除できたと考えられる。
「では、手筈通りに」
「タウ、兵士長、頼んだぞ」
「大丈夫ですよ。この時に備えて、散々訓練してきましたから」
「では、まいりましょう」
爆弾は、何度も試作を重ねて十分な威力となっており、石油の散布も水鉄砲で訓練を積んできた。
擁壁も完成形で収納に収まっている。
俺と1000名の兵士は装甲馬車に揺られて谷に向かった。
今回、メイドたちは出陣していない。
谷に到着した俺は、早速要壁をセットする。
高さ8m、鋼鉄製の要壁にはこちら側に階段がある。
幅30m、厚さ1.5mの擁壁には、向こう側に高さ1.5mの塀があり、矢を防ぐように作ってある。
手前側は落下防止の柵だ。
兵士たちは、手際よく野営の準備を進め、俺は石油入りの樽や投石機を要壁の上にセットする。
「ついにこの日が来てしまいましたな」
「穏便に済ませてくれれば良かったんですけどね」
「いつかはこういう日が来るもの。
今回はタウ殿のおかげで、準備万端」
「これも、兵士長が僕を信用してくれたおかげですよ」
「いやいや、爆弾の威力と燃える水を見せていただきましたからな。
あれを見せられては、信じないわけにはいきませんよ。
というか、王女の婚約者ですからな。がははっ」
その夜のことである、パリンという音に全員が目覚めた。
「慌てるな、点呼をとれ!」
「分隊ごとに点呼!」
「やれやれ、本当に敵方のスパイが紛れ込んでいたとは」
「情報通りでしたね」
「報告します!
第8分隊のサムザ、ナギ。第9分隊のスザキ。以上3名の姿がありません。
被害は、要壁上に置いてあった弓20丁の弦が切られており、燃える水のカメが3個共割られております。
しかしながら、中身を確認したところ、普通の水に入れ替わっている様子で……」
「よいよい、燃える水を要壁の上に放置するはずがなかろう。
弓もカメもおとりだよ」
「おとり……ですか」
「密偵のやつらも、手ぶらじゃ帰れんだろうから、手土産を持たせてやっただけだ」
「なるほど、勉強になります」
「だが、まだ残っているかも知れん。燃える水はすべてこぼれたということにしておけよ」
「かしこまりました」
「それから、密偵であった3名と特に親しかったものを拘束しておけ」
「はっ」
「拘束しないでいいですよ。
檻がありますから」
対象5名のうち、逃げ出そうとしていた1名は拘束し、他は事情を説明して檻に入ってもらった。
カメの中身が水だったと報告されると、敵方も慎重になるだろう。
これで、抜け出す者がいなければ、敵方の密偵は排除できたと考えられる。
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