7人のメイド物語

モモん

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第四章 婚約者候補

黒い水

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「これは、シビレキノコを乾燥させて粉末にしたものよ。
持続性はないけど、一時的に動けなくなるの。
だから、風上にまわってこれを撒ければ効果的よ。
でもね、自分で吸って麻痺したら笑い話になっちゃうから、毎日これをなめて耐性をつけること。
いいわね」

「分かった。なめた時の、持続時間はどれくらい?」

「30分くらいよ。
一か月も続ければある程度平気になるわよ」

「一か月……」


「タウ殿の場合、いつでも収納から取り出せるので、自分の投げやすいものを練習した方がよいでござるよ」

「隠器って、相手の死角から攻撃するんじゃないの?」

「今回は決闘でござるから、そのようなものは不要でござるよ。
相手の意表をつく方向で考えるほうがよろしいでしょう」

 シノブの持ち帰った情報では、まだ態度を検討中だという。
いきなりの宣戦布告だって可能性としてはあるのだ。

「もし、戦争になったらどうする?」

「こちらをご覧ください」

「これは?」

「シノブが確認してきた情報を元に作った地図でございます。
アルジャバとの中間にあるこの谷、ここなら有利に戦うことが可能でございます」

「谷を塞いじゃう?」

「それは、主にしかできないことでございます」

「そうか、アルミか鉄で城壁を作って上から攻撃すれば相当有利に戦えるね。
待てよ……、石油か火薬があれば……」

「石油と火薬とは何でしょう?」

「燃える水って聞いたことない?」

「はて、そのようなものが存在するのでしょうか」

「それなら火薬か……、北に煙の出ている山があったよね」

「はい」

「これで硫黄は確保できるから、あとは硝石か……
洞窟かトイレで採取できるといいんだけど、まあ、やってみる価値はありそうだな」

「それも、頭の中の知識なのですか?」

「そういうこと」

 俺は決闘の訓練を中断して北の火山に向かった。

「ねえ、ミーシャは黒い水が出ているところなんて知らないよね?」

「黒い水……どこかで聞いた覚えが……黒い水……あっ、思い出しました。
東の洞窟の奥に、黒い水が湧き出ているそうですよ」

「やった!それがあれば、戦は勝ったも同然だよ」

「そんなもので勝てるんですか?」

「まあ、見ててよ」

 北の火山で硫黄を抽出し、そのまま東の洞窟に向かった俺たちは硝石と石油を入手できた。
ついでに鉄とアルミも大量に確保する。

「そんなに大量の鉄をどうするんですか?」

「これで、谷を塞いでやるんだ」

 目的のものを収穫した俺たちは帰路についた。
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