7人のメイド物語

モモん

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第四章 婚約者候補

純愛

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「ねえ、タウは私のことどう思ってるの?」

「素敵な方だと思いますよ」

「そういう社交辞令的なことじゃなくって」

「そうですね。僕はソフィア王女の具合の悪い時も見ていますし、元気なところも見ています。
最初のころなんて、顔もひどかったし、まともに歩くこともできない僕を見て勇者だと言ってくれた。
あれはうれしかったですね」

「それで?」

「具合の悪かった時に、ああこの子はそばにいて支えてあげなくっちゃと思いまっした」

「それで?」

「その……好きですよ」

「やったぁ、私の勝ちよ!」

「えっ?」

「メイドたちと賭けをしてたの。
タウが私のこと好きっていうかどうか」

「ひどいなぁ……」

「私はね、具合が悪かった時に、いきなり胸を触ったでしょ」

「あっ、あれは……」

「あの時にね。ああ、この人は私を一人の人間として見てくれてるんだって思ったの。
王女って意識が強かったら、絶対に触る前に了解をとるもの。
だから、私もタウのこと好きよ」

「あっ……」

 やばい、こういう純愛には免疫が……
多分、顔が真っ赤だったと思う。



「主、王女の気持ちも確認出来てよかったですね。
おめでとうございます」

「あー、恥ずかしかった……」

「でも、こういう一面を見ると、やっぱり年相応の男の子なんだなって思いましたよ」

「じゃあ、普段は年相応じゃないってこと?」

「医療課での活躍にしても、様々な業績にしても、誰も届かない高みにおられますからね。
今回だって、風呂だけじゃなく、大人の女性を虜にする美容マッサージや香料のブレンド。
そこに孤児たちをもってくる発想とお酒にかけた税、どれをとっても卓越したものです」

「孤児なんて、イグリッドの発想だよ」

「それは、マッサージの人手のことだけですよ。
それだけじゃなくて、水車で水をくみ上げて風呂まで持ってきたことといい、水車を動力に使ったことといい、どうしたらあんな発想ができるんですか」

「あれは、頭の中にあった知識を応用しただけだよ」

「以前にもその言い回しをされましたよね」

「うん、僕の頭の中に、僕とは違う誰かの知識があるんだ」

「それは?」

「よくわからないけど、考えていると時々知識が浮かんでくるんだ。
こんな話、信じられないよね」

「信じないわけにはいきませんよ。
でも、知識があるだけなんですね。
主が、突然別の人になったりしませんよね」

「それは大丈夫みたい」

 生まれ変わりとか言わないで胡麻化した。
ガラガラポンで次の人生が決まるなんて知ったら、人生リセットできるようなものだからね。
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