7人のメイド物語

モモん

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第四章 婚約者候補

視察

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 香料というものはこれまでにも使われていた。
だが、ブレンドという発想がなかった。
俺は50種類のブレンド香料をマッサージ室で販売することにした。
それとは別に、オリジナル香料の注文も受け付ける。
香料一瓶が金貨3枚で、オリジナルの調香は金貨30枚だ。
一度作ってしまえば、次回からは金貨5枚で調合する。

「タウ、私は試作品の3番に決めたわ」

「かしこまりました」

 王妃と王女が広告塔になってくれたおかげで、調香ブームが訪れた。
こればかりはセンスの問題もあり、おいそれと真似はできない。

 既製品のブレンドオイルにしても、日替わりで香りを変える貴族が出てくる。
孤児院の経営は完全に黒字になった。
王女がこのブレンドの現場を見たいというので、俺は孤児院経由の香料ブレンド館の視察を計画した。
考えてみれば、ソフィア王女を単独で連れ出すのは初めてだった。


「最初は孤児院になります。
ここでは、幼児を年長の女の子が面倒見ています」

「以前は、この半分以上が廃屋で生活していたのですね。
それが、このように施設で過ごせていて、必要があれば医師にみせることもできる。
タウ、素晴らしいことですわ」

「ありがとうございます」

この隣の建屋が香料ブレンド館だ。

「こちらで、香料のブレンドを行っております」

「ここで、私の香料も調合されたのね」

「はい。
ここには、香りのセンスに富んだ者を集めました」

「作業の都度、細かく記録をとっているのですね」

「はい。
よい香りができたときに、再現できなければ意味がありません。
本当に微量の香料を組み合わせているのです。
そのブレンドする香料の選択が彼らの真骨頂となります」

「試しに、私も体験させていただけないかしら」

「いいですよ。
ジャニス、手配を」

 残念ながら、王女に調香の才能はなかった……


「どうだった?」

「みんなへの声のかけ方とか、素晴らしいと思いました」

「お父さまが視察された時に見ているもの。
でも、結構緊張したのよ。ほら、手なんか汗でビッショリ」


 今回の視察は、王室としての正式行事だ。
随行がいて、すべて記録にとっている。

「あーあ、これからこういう機会も増えていくんだろうな」

「手の空いているときは、僕も同行しますよ。
はい、冷たいスムージーをどうぞ」

「ありがとう。
でも、無理してでも手は開けてよね。
絶対よ」

「はい、かしこまりました」

「でも、タウってホント便利よね。
もしかして、収納の中に私の衣装とか一式入ってたりして」

「当然入ってますよ。
不慮の事故とかあるといけませんので」

「……」
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