7人のメイド物語

モモん

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第四章 婚約者候補

オリジナルの香り

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「ところで、ソフィアなんだけど、最近ご機嫌ナナメなのよ。
何か、思い当たることはないの?」

「……」

「ともかく、顔を見せてあげてね」

「はい」

 まさか、俺が顔を見せなかったから……なんていうことはないよな……


「ソフィア様……」

「……タウなの」

「はい」

「何しに来たのよ」

「やっと、いい香料ができたのでお持ちしました」

 ここで重要なのは、納得のいく香料がなかなか調合できなかったと思わせることだ。

「香料?」

 よし、食いついた……

「ええ。数百の花のエキスを順番に混ぜながら香料を作るんです。
やっとできたのがこれなんですけど、試してみませんか」

 半分は本当のことだ。
やっとできた、ソフィア王女オリジナルの香り。

「どんなの?」

「どうぞ、お試しください」

「……、えっ、この香りは……」

「市販しませんよ。
レシピも秘密にしてあります。
王女オリジナルの香りにいかがですか?」

「これは、バラの香りと……」

「バラをベースに、果実やほかの花のエキスを少しずつ混ぜて作ったんです」

「私だけの香りなの?」

「ええ」

「ありがとうタウ!」

「気に入ってもらえましたか」

「もちろん」

「でしたら、フタを開けたままにしておきましょう。
そうすると、この部屋が香りで満たされますから。
それと、少量を袖口や首筋につけると、部屋から出てもほのかにソフィア様の香りが漂いますよ」

「つけて」

「はい、失礼して」


「お母さまにはまだ渡してないのよね」

「はい、いずれリクエストされると思いますけど」

 本当は、もう完成していたりする。

「お母さまのところに行きましょ」

 部屋を出るとき、メイドさんから女殺しとか囁かれたような気がした。
気のせいだろう。


「お母さま」

「どうしたの、急に元気になって」

「えへへっ」

「あら、この香りは?」

「タウが、私のためだけに調合してくれた香料なの」

「とてもいい香りよね……タウ」

「あ、あう……。
気に入ってもらえてよかったです」

「オリジナルの香りって、これからは淑女の嗜みになりそうな気がするわね、タウ」

「今度作ってきますが、気に入ってもらえるかどうかは……」

「大丈夫よ、気に入るまで、ねっ」

「はい……」

「えへへっ、お父さまにも言ってこよっと」

 王女は速足で陛下の私室に向かった。

「準備してあったのね」

「……はい」

「いい目のつけどころだわね。
しかも、オリジナルブレンドで、他にはない香り。
これも流行るわよ」

「はい。
すでに、何人か鼻とセンスのいい者を選任させています」

「私のもお願いよ。早めに」

「こちらが、試作品1号になりますが、開けるのは明日でお願いします」

「そうね、せっかくソフィアが元気になったんですものね」
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