7人のメイド物語

モモん

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第四章 婚約者候補

シミが消えた

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「ねえ、タウ。マッサージでシミが消えたって本当なのかしら」

「シミや色素の濃いところは、ブレンドオイルじゃなくて、ローズヒップオイルを直接塗りこむように言ってありますから可能性はありますね」

「本当なのね。
やっぱり、金貨一枚は安すぎよね」

「あはは、予約は三か月先まで埋まってますからね」

「もっと、マッサージの人数を増やせないの?」

「オイルの生産が追いつかないんですよ。
収穫できる実にも限りがありますからね」

「えっ、まさか冬はオイルがないとか……
ダメよ、そんなことになったら暴動が起きるわよ」

「そうならないように、蓄えてるんですよ。
ですから、人数を増やしたら、先の季節の分がなくなっちゃいますよ」

「そうなのね。
最近では、貴族だけでなく、商人の奥方や娘も増えているって言ってたけど……」

「そうなんですよ。ですから、ギルドにも収集の依頼をかけてるくらいなんですけどね」

「はあ、オイルだけ分けてもらおうと思っていたけど、とても無理ね」

「はい、こんな状況ですから……」

 そして、恐れていた事態が起こってしまった。
オイルの販売を行う商人が出てきたのだ。
当然、実の獲得は競争になり、ギルドへの依頼も高額になっていく。

「困ったことになったわね」

「本当に……」

「何かうまい方法はないかしら」

「一般での販売を禁止するとかですね」

「どういうこと?」

「販売は国が行うようにして、個人での販売を禁止するんです。
実の買い上げも、すべて国が行えば、価格は落ち着きますよ」

「そんなことが可能なのかしら?」

「オイルを医薬品に指定して、販売は医療課にするんです。
やるなら取り扱いの少ないこの機会しかないと思いますよ」

 王妃は即決した。
うちは、国からの依頼を受けて、オイルの精製を行っている形にする。
当然、採取した実は、一度国が買い取る形にする。

 後発の事業者は単に無許可で真似しただけなので、文句は言ってこなかった。
そして、ギルドへの依頼も、国が一手に行うようになり、医療課での販売は、医師が必要と認めた場合だけになる。
かなり強引だったが、こうして美容オイルはひと段落した。

 浴場の利用者はうなぎ上りに増えて、男性側のエール販売も好調である。
浴場の周辺には酒場が立ち並び、客の呼び込みも増えて今日も賑わっている。
これに対しては、酒税を課して国庫が潤うように提案し、これも即決されたのだ。
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