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第四章 婚約者候補
風呂上がりのエール
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「……それで、なぜ陛下が?」
「すまん。
外出のことを伝えにいったら、興味を示されて同行いただくことになった」
「はあ、突然のことなので、十分なおもてなしはできないと思いますが……」
「かまわんよ。それは、俺のほうからも伝えてある」
総務局長はそういってニッと笑った。
心配するなという笑みだった。
陛下が合流されたので、馬車は2台になった。
総務局長は王族用の馬車に陛下と乗ってもらう。
馬車に揺られて30分、一行は無事屋敷に到着した。
「では、早速風呂に入っていただきます」
「おいおい、外なのか?」
「川の水を引き込んでありますので外の景色を眺めながらお楽しみください。
まず、さっと湯をかけて体の汚れを落としてくださいね」
「お、おう」
ザザーッ
「少し熱めなので、ゆっくりと入ってください」
俺も裸になって先導する。
「おっ、おっ、おっ」
この国には沐浴という習慣はない。
全員が、このように湯に浸かるなど初めての経験だった。
「おっ、じわりと体が温まっていくのがわかるな」
「なんだか、体の緊張感が解けていく感じがしますな」
「ああ、確かに疲れが抜けていくようだ」
「この川の水を、魔道具で温めているんですな。
ふむ、興味深い」
「十分に温まったら、髪と体を洗いますのでお一人ずつ風呂から出てくださいね」
「じゃあ、俺から洗おうか」
「総務局長、今日だけは特別にメイドに洗わせますので、そこの椅子に腰かけてください」
「こ、こうか」
「はい、これは石鹸と言って、体の余分な油を落とす効果があります」
こうして、一人ずつ体と髪を洗っていく。
「体を洗うというのは、さっぱりするもんだな」
「魔法では、体の脂までは落とせませんから、違うと思いますよ」
「ああ、本当に気持ちいいもんだな」
「この感じを国民にも味わってもらいたいんです」
「確かに、一度味わってしまえば、毎日でも入りたくなるのう」
「もう一つ、風呂の中では王様も職人も同じ裸です。
身分が違っていても、風呂の中では差別がありません」
「国王も民も、風呂の中では同じというわけか」
「そこから、民との一体感が生まれるわけだな」
風呂から出た後は、メイドに体を拭かせて、事前に用意したバスローブを着てもらう。
下着はふんどしだ。
「では、食堂に行きましょう。
風呂上がりに冷えたエールは最高ですよ」
一行を案内して食堂に入る。
席に着くと、メイドたちがキンキンに冷えたエールを持ってくる。
「くっ、確かに喉が乾いている」
「では、我が国初の風呂を味わっていただいたことに乾杯!」
「「「乾杯!」」」
グビグビグビッ
「くー、冷えたエールがうまい!」
「いや、風呂もエールも最高ですな」
「これは?」
「大豆をサヤのまま塩ゆでしたものです」
「この肉は」
「鳥の唐揚げです」
「待て、タウはいつもこんなものを食っておるのか」
「食事はこの後でお持ちしますけど、こうした軽食もいいでしょ」
「この薄いのは?」
「陛下は初めてですか。イモをスライスして揚げたポテトチップスです。
エールにはやっぱりポテトチップスですな」
「すまん。
外出のことを伝えにいったら、興味を示されて同行いただくことになった」
「はあ、突然のことなので、十分なおもてなしはできないと思いますが……」
「かまわんよ。それは、俺のほうからも伝えてある」
総務局長はそういってニッと笑った。
心配するなという笑みだった。
陛下が合流されたので、馬車は2台になった。
総務局長は王族用の馬車に陛下と乗ってもらう。
馬車に揺られて30分、一行は無事屋敷に到着した。
「では、早速風呂に入っていただきます」
「おいおい、外なのか?」
「川の水を引き込んでありますので外の景色を眺めながらお楽しみください。
まず、さっと湯をかけて体の汚れを落としてくださいね」
「お、おう」
ザザーッ
「少し熱めなので、ゆっくりと入ってください」
俺も裸になって先導する。
「おっ、おっ、おっ」
この国には沐浴という習慣はない。
全員が、このように湯に浸かるなど初めての経験だった。
「おっ、じわりと体が温まっていくのがわかるな」
「なんだか、体の緊張感が解けていく感じがしますな」
「ああ、確かに疲れが抜けていくようだ」
「この川の水を、魔道具で温めているんですな。
ふむ、興味深い」
「十分に温まったら、髪と体を洗いますのでお一人ずつ風呂から出てくださいね」
「じゃあ、俺から洗おうか」
「総務局長、今日だけは特別にメイドに洗わせますので、そこの椅子に腰かけてください」
「こ、こうか」
「はい、これは石鹸と言って、体の余分な油を落とす効果があります」
こうして、一人ずつ体と髪を洗っていく。
「体を洗うというのは、さっぱりするもんだな」
「魔法では、体の脂までは落とせませんから、違うと思いますよ」
「ああ、本当に気持ちいいもんだな」
「この感じを国民にも味わってもらいたいんです」
「確かに、一度味わってしまえば、毎日でも入りたくなるのう」
「もう一つ、風呂の中では王様も職人も同じ裸です。
身分が違っていても、風呂の中では差別がありません」
「国王も民も、風呂の中では同じというわけか」
「そこから、民との一体感が生まれるわけだな」
風呂から出た後は、メイドに体を拭かせて、事前に用意したバスローブを着てもらう。
下着はふんどしだ。
「では、食堂に行きましょう。
風呂上がりに冷えたエールは最高ですよ」
一行を案内して食堂に入る。
席に着くと、メイドたちがキンキンに冷えたエールを持ってくる。
「くっ、確かに喉が乾いている」
「では、我が国初の風呂を味わっていただいたことに乾杯!」
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グビグビグビッ
「くー、冷えたエールがうまい!」
「いや、風呂もエールも最高ですな」
「これは?」
「大豆をサヤのまま塩ゆでしたものです」
「この肉は」
「鳥の唐揚げです」
「待て、タウはいつもこんなものを食っておるのか」
「食事はこの後でお持ちしますけど、こうした軽食もいいでしょ」
「この薄いのは?」
「陛下は初めてですか。イモをスライスして揚げたポテトチップスです。
エールにはやっぱりポテトチップスですな」
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