7人のメイド物語

モモん

文字の大きさ
上 下
55 / 142
第三章 冒険者タウ

本番は禁止だ!

しおりを挟む
 翌朝、俺は数日ぶりに医療課を訪れた。

「お土産でーす。
北のダンジョンでとれた毒と解毒薬一式」

「えー、食べ物じゃないんですか」

「これって、多分毒の種類はもっと少ないと思うので、解毒薬も少なくなるはずなんですよ」

「それを確認して、毒消しを冒険者に与えられればいいんですよね」

「そう、ネズミで生体実験しましょう」

「はい」

「それから、ブルーベリージャムをサンドしたクッキーです」

「やった!」

「局長は?」

「陛下のところにいかれてます」

「ちょうどいいですね。私たちもまいりましょう」


 側近の人に確認して、陛下の私室に入らせてもらう。

「失礼します」

「おお、タウか。北のダンジョンはどうだった?」

 局長が聞いてくる。

「毒と毒消しをいっぱい確保してきました」

「おお、今度は毒の研究なんだな。
いつも民のためにすまんの」

「それで、思いついたことがあって、相談にきました」

「今度はなんだね」

「避妊具……その、男女の営みの時に、子供ができないようにする道具なんですが」

「メイドと関係をもったのか」

「いえ局長、その……、関係はもってませんが、してもらいました」

「あはは、正直でよろしい。で?」

「これなんですが、ゴムで作った膜を男性器にかぶせるんです」

 俺は、男性器の張型を使って実演して見せる。

「子供を作らないようにしている方もおられると思いますし、メイドさんのように立場上断り切れないケースもあると思います」

「うむうむ」

「これを格安で販売すれば、僕のように捨てられる子供も減ると思うんです」

「そうか……お前は孤児だったんだな」

「僕は、母さんや局長にめぐり合うことができた幸せな人間です。
でも、そうでない子供も大勢いると思うんです」

「確かに、総務局で管理する施設で収容しきれない孤児も多いからな……」

「そうなのか」

「よし、俺が試しに使ってみればいいんだな」

「やっぱり局長は……」

「わしとシーザの間で取り決めたことだ。
国が分裂するような事態は避けねばならん」

「タウは気づいていたのか」

「いえ、ひょっとしたらとは思っていましたけど」

「そうか、まあそういうことだ。
それでな、これにも関係するのだが……タウ、俺の養子になれ。
名目上だけだ。生活を変える必要はない」

「光栄ですが、いったいどうして」

「そうだな、腹を割って話したほうがいいだろう、ちょっと近くに寄れ」

 局長の話は、ソフィア王女の婿候補にするというものだった。
あくまでも候補で、2年のうちには決定するという。
いや、俺、身元の分からない孤児だよ。
それを女王の婿にしようなんて耳を疑ったが、どうやらマジらしい。
2年の間、メイドとは関係を持たないよう釘を刺されたのだ。

「まあ、してもらう程度はいいだろうが、避妊具をつけていたとしても本番は禁止だ」

 勅命だった……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...