7人のメイド物語

モモん

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第三章 冒険者タウ

大弓

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もう一匹はシノブが仕留めていた。

一通り見回ったが、ほかにサイクロプスはいなかった。



「さすがアイラさん。
今回も早いですね」

「いや、一匹はシノブだし、二匹はタウが仕留めたようなもんだ」

「タ、タウさんがですか、いったいどうやって」

「でけえ弓を作ってきやがったんだ」

「弓ですか」

「ええ、これです」

俺は収納から大弓を取り出して見せた。

「こ、こんな弓を弾けるんですか」

「ああ、タコの原理ってやつだ」

「てこです。見せましょうか」

「あっ、マスターを呼んできますのでお待ちください」

こうして、裏の訓練所で試射して見せることになった。

「おいおい、こんな弓、弾けるわけねえだろ」

弦の部分は鋼寄り線を使っている。
俺はレバーを回して矢をセットした。

「いきます」

バシュ! ドシャッ!

矢である杭は立ち木に深く食い込んだ。

ギャラリーからスゲエと声が飛ぶ。

「こ、こりゃあスゲエわ。
持ち運びには不便だが、城の防衛とかに使えるな」

「戦とかあるんですか?」

「戦ってのは滅多にねえんだが、ほれ10年前にドラゴンの襲撃があっただろ」

一瞬体がこわばる。

「タウ君、大丈夫、今はいないから」

ミーシャが優しく抱きしめてくれた。
幼児体系だが、出るところは出てる。

「そういう時の備えに、3台ほど作ってくれないか」

「はい」

それならば、城へも配備した方がよさそうだ。

屋敷に帰った俺は、ドワーフのイグリッドの助けを借りて、局長に贈る馬車を作っていく。
基本は王族用と同じだが、奥様が花を好きなので、内装にも外装にも花をあしらっていく。
そういえばと思いついて、もう一台。
こちらは救急馬車だ。外装は白地に赤でアクセントを入れる。
後部ハッチを作り、けが人を担架のまま収容できるようにした。

それと、ギルドに依頼された大弓だ。
これも、追加で城用に5台作る。

次の休日、アポをとって局長の自宅にお邪魔する。


「おいおい、馬車3台とは……」

「一台は奥様にプレゼントです」

「いや、お前、これってまさか」

「王族用と同じ作りです」

「こんな花をあしらった馬車には乗れねえよ」

「ですから、奥様用です」

「まあ、私に!」

「おい、俺だって王族の一員だぞ」

「こっちは、局長にプレゼントです」

「なんで白いんだ」

「これは救急馬車です」
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