7人のメイド物語

モモん

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第二章 医師タウ

相談役

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「タウのやつ、本当にやっちまいやがった」

「ええ、これで問題が起きなければ、医療に新しい技術が生まれたことになります」

「それにしても、スタッフがよく訓練されていたな」

「医師が治療に専念できるようにサポートする。これもタウのアイデアです」

「これが成功したら、医療課に特別褒章だな」

「みんな喜びますよ」


少女は夜中に目を覚まし、空腹を訴えた。
スタッフの温めた重湯でしのいでもらい、朝を迎えた。

「成功と考えていいですか」

「うん、みんなのおかげです」

「「「やったー!」」」

総務局は、全員が朝早く出勤しており、医療課のみんなに惜しみない拍手を贈った。

「これを教訓に、全員の血のタイプを記録しておきましょう」

「そうですね。
畜生、涙が出てきた……」

このニュースは口コミで国中に広がり、その技術指導を受けたいと市中の医師から申し込みが殺到した。
それは、同時に輸血用機材一式が必要となる。

「どうしましょうか。
金銭を要求するかどうかですが」

「一式だけは無償で提供しましょう。
注射器5本と、チューブ一本。
追加は有償で」

「主は、本当に欲がないですね」

「それと、今回の経過と処置をまとめましたので、ジャライ先生のご予定を確認してください。
今回は、手土産多めで」

「承知いたしました」

ジャライ先生はすぐにでも会いたいとのことだったので、その日のうちにお邪魔した。

「これ、また、みなさんでお召し上がりください」

「おお、すまんな。
前回のをいただいてから、家内とメイドどもが機嫌よくてな」

「それはよかった。
で、こちらが、今回の経過と処置をまとめたものです。
よろしければお納めください」

「いいのか?」

「先生に背中を押していただいたおかげですから」

「ああ、今回の成功を聞いて、わしも年甲斐もなくワクワクしておったのじゃ」

「でしたら丁度いいです。
じつは先生に医療課の相談役になっていただきたいのですが、如何でしょうか。
もちろん、非常勤です」

「わしでいいのか?」

「先生でないとダメです。
正式には、局長がお邪魔してお願いするつもりです」

「ああ、こんな老いぼれになぁ。
本気なら、喜んで受けさせてもらうよ」


こうして、医療課は頼もしい味方を得たのだった。
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