7人のメイド物語

モモん

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第二章 医師タウ

悪い虫

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若干14才にして爵位持ちというのは前例がなかったらしい。
屋敷には多くの来客が押し寄せたらしい。

商家は取り入るために、多くの貴族は取り込むために。

だが、おれはそのどれともつるむつもりはない。
信頼できるのは局長だけだ。

翌日、俺は朝局長の自宅に立ち寄った。
局長が出かけた直後を見計らってだ。

「おかげさまで、母のあとを継いでワイルズ名誉男爵の称号をいただきました。
これも、ご主人と奥様のご指導のおかげです。
本当にありがとうございます」

「うん、立派になりましたね」

奥様も涙ぐんでくれます。

「これ、お礼の気持ちです」

「まあ、花の髪飾り。
星の形をしてるけど、このお花は?」

「僕の好きな花”彗星蘭(スイセイラン)”といいます。
花に込められた言葉は……”特別な存在”」

「まあ、うれしいわ」

「同じ花を刻んだ小刀です。
局長がお帰りになったら渡してください」

「まあ、直接渡せばいいのに」

「照れくさくて……」

「わかった。ありがとう」


その足で城に向かいます。
城の中でも視線を感じます。

「主、気にせずいきましょう」

「うん」

中身はほとんど治ったのだが、俺の右半身は茶色いままだ。
それでも、ケロイドは治ったし、髪も人並みに生えてきた。

やっぱり、外見に対しては意識してしまう。
この視線は好奇の目ではないかと……

今日は職場へも差し入れを持ってきている。
自家製オーブンで焼いたチーズケーキだ。

いつものように、王室へ1ホール差し入れする。

「余った分は皆さんでどうぞ」

「いつも気にかけていただいて、ありがとうございます」

職場に2ホールと土木部にも2ホール。

「おお、こっちにまですまんな」

「いえ、お口に合えばうれしいです」

「お前の作ったものが口に合わないやつなんて、この職場にはおらんさ。
だから、毎日でも大丈夫だぞ」

「局長ったら。タウ君いつもありがとう」

「おいおい、男爵に対してタウ君はないだろう」

「あっ、そうでした。男爵、ありがとうございます」

「いつものタウでいいです。
そんな呼び方したら、もう持ってきませんよ」

「えーっ、私がみんなに殺されちゃいますよ」

「だから、今までどおりにおねがいします」

「わかりました」


「ねえねえ、これどうやって作るの?
家でも作れる?」

「クッキーや生クリームを使うので、ちょっと手間がかかります」

「えーっ、簡単に作れないの……
そうだ、タウ君うちに婿にきなさい。
下の妹ならちょうどいいわ。
そしたら私は毎日スイーツ三昧よ」

「バカね。
あなたは嫁に出ちゃうじゃないの。
タウ君、お姉さんは嫌いかな?」

「はいはい、お姉さんなら自宅にあふれてますからね。
仕事に戻ってください」

悪い虫はジャニスさんに追い払われた。
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