7人のメイド物語

モモん

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第二章 医師タウ

叙爵

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俺の体も、すっかり人並みになったころ、突然大広間に来るようにいわれた。

「何かあるんですか?」

呼びに来た総務局の人に聞いてみた。

「行ってみればわかりますよ」

クスクスと笑っている。
これは、ひょっとしてまずいやつじゃねえか。
俺は普段の白衣だったので、着替えに戻ると主張したが時間がないと断られてしまった。

大広間に入ると、案の定正装した貴族たちがあふれている。

だが、いつもと違ってクスクスという笑い声は聞こえなかった。
そのかわり、「えっ、あれが……」 とか 「ずいぶん元気に……」といった声が聞こえる。

案内されるままについていくと、王様の前に出た。

「すまんな仕事中に」

「いえ、ちょうど一区切りついたところです」

ダメだ!局長まで正装してるじゃねえか……

「それでは、ただいまより叙勲式を始める」

おいおい、局長……なんのつもりだよ……

「医師タウについて、名誉男爵への推挙がございました。
推薦人は王妃カトリーヌ・フォンダン殿、並びに土木局長ドラン・デシャン殿、そして元御典医ジャライ・シャライ殿、総務局長である私シーザ・フォンダンの4名になります。
また、後見人として私が推挙されております。
当申請につきまして、厳正に審査した結果、リバーシ大会成功の実績。
また、現在の医療課における治療実績。
過去には馬車の板バネおよびタイヤ、竹ペン・黒板の開発による社会貢献。
そのどれもが国民の生活向上に役立っていることから十分な資格を有していると認められました。
よって本日ここに、タウ・ワイルズ名誉男爵として叙爵するものといたします」

パチパチパチ

「タウよ、陛下の前にすすみ、膝まづくように」

「はい……」

「これからも、民のため活躍することを誓うな」

「はい」

「では、これよりタウ・ワイルズを名誉男爵に任ずる」

「謹んでお受けいたします」

パチパチパチ

「タウ、やっとお主の功績に報いることができるな」

「こんな格好で……」

「この姿こそ、民のために働くという意思表示だ。
恥じることはない。胸を張れ」

「はい」



正直なところ、やられた感が強い。
だが待てよ……王妃と局長フォンダンだと……
どういうことだ。
そんな思いを抱えたまま屋敷に戻りました。

「「「おめでとうございます!」」」

「これで俺っちも貴族付きのメイドだぜ」

「しかもワイルズ家を復興されるなんて」

「主、黙っていて申し訳ございません。
実はシノブから情報は得ておりましたので、このように準備万端です」

屋敷には祝宴の準備がされていた。

「それで、総務局長がなぜ王妃と同じフォンダンの名を……」

「申し訳ございません。
ご存じだと思っておりました。
総務局長は国王の弟君にあたられます」

「えっ、早く言ってよ……」
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