36 / 142
第二章 医師タウ
叙爵
しおりを挟む
俺の体も、すっかり人並みになったころ、突然大広間に来るようにいわれた。
「何かあるんですか?」
呼びに来た総務局の人に聞いてみた。
「行ってみればわかりますよ」
クスクスと笑っている。
これは、ひょっとしてまずいやつじゃねえか。
俺は普段の白衣だったので、着替えに戻ると主張したが時間がないと断られてしまった。
大広間に入ると、案の定正装した貴族たちがあふれている。
だが、いつもと違ってクスクスという笑い声は聞こえなかった。
そのかわり、「えっ、あれが……」 とか 「ずいぶん元気に……」といった声が聞こえる。
案内されるままについていくと、王様の前に出た。
「すまんな仕事中に」
「いえ、ちょうど一区切りついたところです」
ダメだ!局長まで正装してるじゃねえか……
「それでは、ただいまより叙勲式を始める」
おいおい、局長……なんのつもりだよ……
「医師タウについて、名誉男爵への推挙がございました。
推薦人は王妃カトリーヌ・フォンダン殿、並びに土木局長ドラン・デシャン殿、そして元御典医ジャライ・シャライ殿、総務局長である私シーザ・フォンダンの4名になります。
また、後見人として私が推挙されております。
当申請につきまして、厳正に審査した結果、リバーシ大会成功の実績。
また、現在の医療課における治療実績。
過去には馬車の板バネおよびタイヤ、竹ペン・黒板の開発による社会貢献。
そのどれもが国民の生活向上に役立っていることから十分な資格を有していると認められました。
よって本日ここに、タウ・ワイルズ名誉男爵として叙爵するものといたします」
パチパチパチ
「タウよ、陛下の前にすすみ、膝まづくように」
「はい……」
「これからも、民のため活躍することを誓うな」
「はい」
「では、これよりタウ・ワイルズを名誉男爵に任ずる」
「謹んでお受けいたします」
パチパチパチ
「タウ、やっとお主の功績に報いることができるな」
「こんな格好で……」
「この姿こそ、民のために働くという意思表示だ。
恥じることはない。胸を張れ」
「はい」
正直なところ、やられた感が強い。
だが待てよ……王妃と局長フォンダンだと……
どういうことだ。
そんな思いを抱えたまま屋敷に戻りました。
「「「おめでとうございます!」」」
「これで俺っちも貴族付きのメイドだぜ」
「しかもワイルズ家を復興されるなんて」
「主、黙っていて申し訳ございません。
実はシノブから情報は得ておりましたので、このように準備万端です」
屋敷には祝宴の準備がされていた。
「それで、総務局長がなぜ王妃と同じフォンダンの名を……」
「申し訳ございません。
ご存じだと思っておりました。
総務局長は国王の弟君にあたられます」
「えっ、早く言ってよ……」
「何かあるんですか?」
呼びに来た総務局の人に聞いてみた。
「行ってみればわかりますよ」
クスクスと笑っている。
これは、ひょっとしてまずいやつじゃねえか。
俺は普段の白衣だったので、着替えに戻ると主張したが時間がないと断られてしまった。
大広間に入ると、案の定正装した貴族たちがあふれている。
だが、いつもと違ってクスクスという笑い声は聞こえなかった。
そのかわり、「えっ、あれが……」 とか 「ずいぶん元気に……」といった声が聞こえる。
案内されるままについていくと、王様の前に出た。
「すまんな仕事中に」
「いえ、ちょうど一区切りついたところです」
ダメだ!局長まで正装してるじゃねえか……
「それでは、ただいまより叙勲式を始める」
おいおい、局長……なんのつもりだよ……
「医師タウについて、名誉男爵への推挙がございました。
推薦人は王妃カトリーヌ・フォンダン殿、並びに土木局長ドラン・デシャン殿、そして元御典医ジャライ・シャライ殿、総務局長である私シーザ・フォンダンの4名になります。
また、後見人として私が推挙されております。
当申請につきまして、厳正に審査した結果、リバーシ大会成功の実績。
また、現在の医療課における治療実績。
過去には馬車の板バネおよびタイヤ、竹ペン・黒板の開発による社会貢献。
そのどれもが国民の生活向上に役立っていることから十分な資格を有していると認められました。
よって本日ここに、タウ・ワイルズ名誉男爵として叙爵するものといたします」
パチパチパチ
「タウよ、陛下の前にすすみ、膝まづくように」
「はい……」
「これからも、民のため活躍することを誓うな」
「はい」
「では、これよりタウ・ワイルズを名誉男爵に任ずる」
「謹んでお受けいたします」
パチパチパチ
「タウ、やっとお主の功績に報いることができるな」
「こんな格好で……」
「この姿こそ、民のために働くという意思表示だ。
恥じることはない。胸を張れ」
「はい」
正直なところ、やられた感が強い。
だが待てよ……王妃と局長フォンダンだと……
どういうことだ。
そんな思いを抱えたまま屋敷に戻りました。
「「「おめでとうございます!」」」
「これで俺っちも貴族付きのメイドだぜ」
「しかもワイルズ家を復興されるなんて」
「主、黙っていて申し訳ございません。
実はシノブから情報は得ておりましたので、このように準備万端です」
屋敷には祝宴の準備がされていた。
「それで、総務局長がなぜ王妃と同じフォンダンの名を……」
「申し訳ございません。
ご存じだと思っておりました。
総務局長は国王の弟君にあたられます」
「えっ、早く言ってよ……」
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。



[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。


【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる