7人のメイド物語

モモん

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第二章 医師タウ

自分で自分を治すことの妙

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サーチを覚えたことで、診察の幅がぐんと広がった。
自己申告がなくとも悪いところを発見できるからだ。
そして、それは自分自身にも応用できたのだ。
俺は根気よく自分の身体を探索して、悪い箇所を修復していった。

「はい、つぎのかた、どうぞ」

「ふむ、タウというのはお前さんかい」

「はい」

「なんと、まだこどもじゃないかい。
いくつになったね」

「14才だとおもいます。
おやがいないので、せいかくなとしは、わかりません」

「ドラゴンのブレスにやられたと聞いたが、もう大丈夫なようだね」

「そだててくれた母さんが、なおしてくれました」

「いやいや、前ワイルズ男爵が他界したときには、まだ不自由な身体だったと聞いたよ。
それからは自分で治療したんだね」

「……はい」

「さて、最近胃の調子が悪くてね」

「では、べっどに、よこになってください」

「胃が悪いのに、寝るのかい。
よいしょっと」

「からだぜんたいをみますからね」

「ほい」

『サーチ!』

「待て!その術を誰に教わった」

「えっ、じぶんでかんがえました。
ことばがきにいらないのなら、べつのいいかたをつかいましょうか」

「なんと!サーチでなくとも診られるというのかい」

「まほうは、つかうイメージがだいじ。
ことばはなんでも、だいじょうぶ」

「まさか、そんな事が……
では、ほかの言葉でやってもらおうか」

「はい」

『たんさ!』

「いにすこしえんしょうあります。
のどもすこしやられてますね。
あとみぎひざね」

「驚いたのう、本当に診ることができるとは。
しかも正確じゃな。
喉は自覚がなかったが炎症かい」

「ハイのおとをきいてみます……
ハイはだいじょうぶね。
のどのえんしょうだけね」

「それで、肺の音が聞こえるのかい」

「こきゅうのおとね」

「ちょっと、わしにも聞かせてくれんか」

「はい、どうぞ」

「おお、確かに呼吸の音じゃ」

「はいにえんしょうあると、ぜーぜーきこえるね」

「なるほどな。
サーチというのは御典医に伝わる魔法で、門外不出じゃった。
だが、お前さんのは真似ではなく自分のオリジナルじゃな。
しかも、御典医よりも精度の高いものじゃ。
で、悪いところが分かったらどうするのじゃ」

「なおします」

『ちゆ!』 『じょうか!』 『ちゆ!』 『ちゆ!』

「ほう、これもオリジナルの治療魔法じゃな」

「これわ、かあさんから、おそわりました」

「いい母親だったようじゃな」

「ありがとうございます。
それから、えんしょうをおさえるくすりと、のどにいいあめね。
これは、かまないでじかんかけてなめるといいです」

「ふむ、これもオリジナルじゃな。
わしは元御典医のジャライという。
御典医に失態があったからといって、撤廃してどうするのかと思っておったが、お主のような者が王族から平民まで分け隔てなく診るのであれば安心じゃな」

「まだまだ、です」

「何を言うか。日々精進は当然のこと。
じゃが、今回の御典医はそれができんかったようじゃて。
何か困ったことがあったらわしを訪ねてこい。
少しは経験があるでな」

「ありがとうございます」

「それにしても、自分で自分を治すかよ、考えてもみなんだ。
あはは、じゃあ、またな」

「はい!」
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