7人のメイド物語

モモん

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第一章 一人と7人のメイド

投薬と治療

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「すみません、父の具合が悪いんですけど、動くと痛いって……」

総務局の女性だった。

「いく」

「はい。ここの治療が終わったら、家までお邪魔しましょう」

女性の父親とは土木局長だった。
御典医には声をかけていないという。

多分盲腸だろう。炎症を治癒でなおし、膿を浄化で取り除くと速攻で元気になった。
そのまま仕事にいくというのを、一日くらい休めというのが大変だった。

一応薬学班なので、治療には必ず薬を処方する。
ここでも化膿止めを出したのだが、薬は飲まんと駄々を捏ねる。
治療だけだと、御典医の仕事になるためここは譲れない。

「わかった。薬は飲んだことにしておこう。
まあ、お互い立場があるからな。がはは」

ところが土木局長は薬なしで治ってしまったと公言してしまったのだ。

これに対して、御典医は局長に対し強烈に抗議してきた。

「治療は我らの領分。
薬学班程度が真似事をしては困る!」

「おや、そんな決まりごとがありましたかな?」

「何を言っておる。
医師の許可を受けていないものが治療を行ってはならないと国の法で決まっておるわ」

「それは存じておりますが……何か問題でも?」

「薬学班に医師はおらんだろう」

「非常勤で2名おりますが」

「なに?
御典医に届け出は出ておらんぞ」

「はて、御典医に届ける必要などありましたか?
私の記憶では、陛下の決済を受けると認識しておりますが」

「その上申を行うのが我らだ」

「いえ、厚生部でも受けておりますよ。
十分な実績がある者については、指導者に確認を取り陛下に上申しております」

「なに!そのような話、初耳であるぞ」

「ワイルズ名誉男爵就任の折、陛下のご確認を受けておりますが」

「そ、それで、その2名とは誰なのだ」

「ワイルズ名誉男爵の指導を受けたタウ氏とハインツ・ド・シェルテ侯爵の指導を受けたジャニス女子ですが」

「くっ、それが今回の2名だというのか。
タウなど、わずか9才の子供ではないか」

「さようでございます。
子どもなれど、王女様のご病気を完治させた実績もございますので何の問題もないと。
それとも、御典医に治すことのできなかった病気を、資格も持たぬ素人が治療したとお考えですか?
それこそ、世間の笑いものになってしまいますよ」

「くっ……」

「まあ、薬学班ですから、基本は薬で治療しますが、今回のように患者の痛みが激しい場合は順序が逆になるやもしれません。
その場合は私に報告するよう伝えてあります。
治療で何か問題が生じた場合はすべて私の責任です。
いつでも辞任する覚悟はできておりますよ」

「もういい!」
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