7人のメイド物語

モモん

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第一章 一人と7人のメイド

御典医と兵団

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「御典医は、兵団の中の一分隊と結託しております」

「まさか、2度の堀への投棄か」

「その通りです」

「うーむ、御典医と兵団かよ」

「不足した兵員の募集も行わず、町のゴロツキを雇い入れたようで、このままでは埒があきません」

「では、タウを総務局の厚生部に入れるか」

「その時も、夜襲がありました」

「そうだったな……」

「ですが、そのアイデアは悪くありません。
厚生部に薬学班を新設して、わたくしと主が非常勤の職員となることは可能ですか」

「それでどうするのだ」

「わたくしも薬学を学んでおりますが、主は王女様を治されたように薬学と治療に精通されています」

「おお、あの時は驚いたぞ。
王女様も、あっという間に回復されたしな」

「薬学班で患者を診ます。御典医に真っ向から勝負を仕掛けて立場をなくすことはできないでしょうか」

「総務局が真っ向から喧嘩を売るのか。
まあ、ワイルズ名誉男爵を部長に取り立てた時も、そのつもりではあったがな。
だが、そうするとタウに危険が及ぶぞ」

「今と同じですよ。
私たちは、主を守るためにその分隊を潰すつもりです。
表からは主と私が真っ向から喧嘩を売り、裏で御典医の手足を潰す」

「本気なんだな。
勝ち目はあるのか」

「攻撃は最大の防御です」

「わかった。俺が矢面にたてばいいんだな」

「主をよろしくお願いいたします」

「おねがい します」

「タウ、いいメイドに巡り合ったようだな」

「はぁい」

「任せろ。
役立たずの御典医なんぞ今度こそ潰してくれるわ」



俺とジャニスはお揃いの白衣をユニフォームにして、薬学班を立ち上げた。
王女の難病を治療した実績があるため、患者はすぐに集まった。
というよりも、御典医の手に負えない患者を、機嫌を損ねても治したい、治りたいという患者を集めたのは総務局だった。

非常勤といいながら、俺とジャニスは毎日城に通って患者を診る。
ジャニスはどちらかといえば通訳だ。
部位によっては、母さんの形見となった聴診器を使うのだが、神経麻痺とかは難しい。
それでも、ヘルニアや橈骨神経麻痺とかの経験をもった俺には、ある程度予想できる。

「えっ、俺は手がしびれてるんだけど」

「しんけい つながって る 」

「神経は頭から首を通って手まで伸びていますから、関係しそうなところを治療していきます。
どうぞ、安心してお任せください」

『ち ゆ!』

「うっ、本当に首を治したら手の痺れが消えたよ。
ありがとう」

こんな感じである。
御典医と違って、貴族以外にも治療をするため、総務局厚生部薬学班にはひっきりなしに患者が訪れるようになった。

ここでは、治療は一律銀貨一枚。
薬を処方してもプラス銀貨一枚である。

原則として薬がメインなのだから、実質銀貨2枚となっている。
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