29 / 142
第一章 一人と7人のメイド
御典医と兵団
しおりを挟む
「御典医は、兵団の中の一分隊と結託しております」
「まさか、2度の堀への投棄か」
「その通りです」
「うーむ、御典医と兵団かよ」
「不足した兵員の募集も行わず、町のゴロツキを雇い入れたようで、このままでは埒があきません」
「では、タウを総務局の厚生部に入れるか」
「その時も、夜襲がありました」
「そうだったな……」
「ですが、そのアイデアは悪くありません。
厚生部に薬学班を新設して、わたくしと主が非常勤の職員となることは可能ですか」
「それでどうするのだ」
「わたくしも薬学を学んでおりますが、主は王女様を治されたように薬学と治療に精通されています」
「おお、あの時は驚いたぞ。
王女様も、あっという間に回復されたしな」
「薬学班で患者を診ます。御典医に真っ向から勝負を仕掛けて立場をなくすことはできないでしょうか」
「総務局が真っ向から喧嘩を売るのか。
まあ、ワイルズ名誉男爵を部長に取り立てた時も、そのつもりではあったがな。
だが、そうするとタウに危険が及ぶぞ」
「今と同じですよ。
私たちは、主を守るためにその分隊を潰すつもりです。
表からは主と私が真っ向から喧嘩を売り、裏で御典医の手足を潰す」
「本気なんだな。
勝ち目はあるのか」
「攻撃は最大の防御です」
「わかった。俺が矢面にたてばいいんだな」
「主をよろしくお願いいたします」
「おねがい します」
「タウ、いいメイドに巡り合ったようだな」
「はぁい」
「任せろ。
役立たずの御典医なんぞ今度こそ潰してくれるわ」
俺とジャニスはお揃いの白衣をユニフォームにして、薬学班を立ち上げた。
王女の難病を治療した実績があるため、患者はすぐに集まった。
というよりも、御典医の手に負えない患者を、機嫌を損ねても治したい、治りたいという患者を集めたのは総務局だった。
非常勤といいながら、俺とジャニスは毎日城に通って患者を診る。
ジャニスはどちらかといえば通訳だ。
部位によっては、母さんの形見となった聴診器を使うのだが、神経麻痺とかは難しい。
それでも、ヘルニアや橈骨神経麻痺とかの経験をもった俺には、ある程度予想できる。
「えっ、俺は手がしびれてるんだけど」
「しんけい つながって る 」
「神経は頭から首を通って手まで伸びていますから、関係しそうなところを治療していきます。
どうぞ、安心してお任せください」
『ち ゆ!』
「うっ、本当に首を治したら手の痺れが消えたよ。
ありがとう」
こんな感じである。
御典医と違って、貴族以外にも治療をするため、総務局厚生部薬学班にはひっきりなしに患者が訪れるようになった。
ここでは、治療は一律銀貨一枚。
薬を処方してもプラス銀貨一枚である。
原則として薬がメインなのだから、実質銀貨2枚となっている。
「まさか、2度の堀への投棄か」
「その通りです」
「うーむ、御典医と兵団かよ」
「不足した兵員の募集も行わず、町のゴロツキを雇い入れたようで、このままでは埒があきません」
「では、タウを総務局の厚生部に入れるか」
「その時も、夜襲がありました」
「そうだったな……」
「ですが、そのアイデアは悪くありません。
厚生部に薬学班を新設して、わたくしと主が非常勤の職員となることは可能ですか」
「それでどうするのだ」
「わたくしも薬学を学んでおりますが、主は王女様を治されたように薬学と治療に精通されています」
「おお、あの時は驚いたぞ。
王女様も、あっという間に回復されたしな」
「薬学班で患者を診ます。御典医に真っ向から勝負を仕掛けて立場をなくすことはできないでしょうか」
「総務局が真っ向から喧嘩を売るのか。
まあ、ワイルズ名誉男爵を部長に取り立てた時も、そのつもりではあったがな。
だが、そうするとタウに危険が及ぶぞ」
「今と同じですよ。
私たちは、主を守るためにその分隊を潰すつもりです。
表からは主と私が真っ向から喧嘩を売り、裏で御典医の手足を潰す」
「本気なんだな。
勝ち目はあるのか」
「攻撃は最大の防御です」
「わかった。俺が矢面にたてばいいんだな」
「主をよろしくお願いいたします」
「おねがい します」
「タウ、いいメイドに巡り合ったようだな」
「はぁい」
「任せろ。
役立たずの御典医なんぞ今度こそ潰してくれるわ」
俺とジャニスはお揃いの白衣をユニフォームにして、薬学班を立ち上げた。
王女の難病を治療した実績があるため、患者はすぐに集まった。
というよりも、御典医の手に負えない患者を、機嫌を損ねても治したい、治りたいという患者を集めたのは総務局だった。
非常勤といいながら、俺とジャニスは毎日城に通って患者を診る。
ジャニスはどちらかといえば通訳だ。
部位によっては、母さんの形見となった聴診器を使うのだが、神経麻痺とかは難しい。
それでも、ヘルニアや橈骨神経麻痺とかの経験をもった俺には、ある程度予想できる。
「えっ、俺は手がしびれてるんだけど」
「しんけい つながって る 」
「神経は頭から首を通って手まで伸びていますから、関係しそうなところを治療していきます。
どうぞ、安心してお任せください」
『ち ゆ!』
「うっ、本当に首を治したら手の痺れが消えたよ。
ありがとう」
こんな感じである。
御典医と違って、貴族以外にも治療をするため、総務局厚生部薬学班にはひっきりなしに患者が訪れるようになった。
ここでは、治療は一律銀貨一枚。
薬を処方してもプラス銀貨一枚である。
原則として薬がメインなのだから、実質銀貨2枚となっている。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。


少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。


特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる