7人のメイド物語

モモん

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第一章 一人と7人のメイド

メイドゴーレム

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その夜、襲撃があった。
外壁を壊されても、内側から鍵をかけたジュラルミンの部屋に入ることはできない。
逆に言えば、これを破壊するような騒ぎを起こせば町の人が駆けつけてくる。

俺は、収納に潜んで賊のアキレス腱を切って回った。

「貴様ら、何をしているのか!」

アイラさんだった……

アイラさんは身動きのできない賊を叩きのめし、やってきた警備兵に引き渡していた。

ドンドンドン 「タウ、無事か!」

ガチャ 「あい、 へいき」

「この家を襲撃している奴らがいたんでな、全員叩きのめしてやったぞ」

アイラさんは竹ぼうきを自慢げにかざしてそういった。

「はあ、ほうき?」

「メイドが装備できる武器って、ホウキくらいでしょ」

「いや……ほうちょ う」

「うーん、料理は苦手?」

いや、あなたの料理の腕前なんて知りませんよ。



翌朝、マリアンヌさんがやってきた。

「ああ、遅かったみたいですね。
でも、引っ越し先が見つかりましたよ。
築30年ですが、閑静な林の中に立つ貴族の別荘で……」



「えー、お化け やひき……」

「いや、幽霊屋敷だろう」

「いま、2階の窓に誰かいたような……」

「何馬鹿なことを言ってるんですか。
今時、これだけのお屋敷が金貨150枚で買えるなんて、夢のようですわ」

「そ、それにしては、長年人が住んでいた気配が感じられないけど……」

「さあ、中に入ってお掃除しますよ」

ギイッ

「お帰りなさいませ、ご主人様」

「「「ぎゃあ、で、でた!」」」

「何言ってるんですか、これはメイドゴーレムですよ」

「だ、だけど、足が」

「あれ、どうしたのかしら。確かに零体のようですわね」

「……、本体は居間にございます。魔力切れ寸前なものですから、魔法でとうえ……い……」

全員で居間に移動する。

俺が倒れているメイドを抱きかかえると、魔力を吸い取られていくのが分かった。

本体も、メイド服は破れ、塗装も剥げかかっている。
俺は収納に一度保管してからもう一度出現させる。

「「「今のは!」」」

「収納 の 魔法。
壊れた もの 復元する」

「そ、それって、壊れているアリアも直せるんじゃ」

「あたしは壊れてなんかいないぞ!」

「ご主人様、ありがとうございます。
わたくしはエリス。当家専属のメイドゴーレムでございます」

「タウえす」

「でも、あなたのようなゴーレムは見たことがありません。いったいどなたがお造りになったのですか」

「先代のご主人様、カルロ・ワイルズ様です。
カルロ様は優れた魔法技師でしたが、その後継者には魔法の素養がなく、次第にこの屋敷にもお見えにならなくなりました」

「へえ、不思議な縁だな。
ワイルズ家は血筋が絶えて、タウの母がワイルズ家を継いだんだよな。
今回、改易ということになったけど……、あれ?改易ということは、タウはまだワイルズの姓なのかな」

「さあ」

「ワイルズ家に関係されたタウ様がご主人様。それだけで十分でございます。
さあ、住めるようにお掃除させていただきますね。
『クリーン!』」

キラキラキラ~ン♪

「すごい!魔法まで使えるんだ」

「この屋敷は、私の魔法をベースに稼働します。
でも、魔石が心もとないですね。
これではお風呂を沸かすこともできませんので、近いうちに採取にいかないといけませんね」

「魔石?」

「魔石は、ドラゴン系のモンスターが飲み込んだ石が、長い年月をかけて魔力をため込んだものですわ。
とてつもなく高価な宝石ですの」

ドラゴンと聞いただけで体が強張ってくる。
これは俺の記憶ではない。
身体が覚えている感覚だ。

ミーシャが俺の手を握りささやいてきた。

「大丈夫。ここにはドラゴンはいませんから」

だが、身体の覚えている圧倒的な恐怖が払拭される事はなかった。
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