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第一章 一人と7人のメイド
収納
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俺は暗い空間の中にいた。
目が慣れてくると、小さな瓶が目についた。
あれは、母さんに分けてもらった漢方薬だ。
素材の金属にも見覚えがあった。
ここは……、収納の中なのか!
頭上の隙間から覗くと、母さんが倒れていた。
「はあはん!」
俺は、収納から飛び出した。
母さんは、背中を大きく切られてこと切れていた。
一縷の望みを託して、母さんを抱えて収納の中に入る。
傷は少しふさがり、服も元に戻ったが母さんが目を開けることはなかった。
屋敷の中はひどい有様だった。
メイドは全員惨殺され、中には犯された痕跡さえあった。
それほど資産があった訳ではないが、金目のものは全て持ち去られていた。
朝になり、通いのメイドがやってきたので、城へ連絡してもらうと、ほどなくして城兵がやってきた。
「ああ、盗賊の仕業ですな。残念なことです」
こいつの目、声……、間違いない、昨日の男だ。
睨みつける俺に気が付いた男は言った。
「おや、私に何か?」
「……」
残念だが今できることはなかった。
いつか、母さんのかたきはとる……
母さん達を埋葬し、収納を使いこなそうと四苦八苦する俺に王から呼び出しがかかった。
「タウ……だよな」
「あい。はあはんが、あいごに、少しだけうごく ないまひた」
「そうか、残念な人を亡くしたな」
「あい」
「お前の処遇だが、ワイルズ名誉男爵逝去によりワイルズ家は改易となる。
申し訳ないが、ワシの一存ではどうにもならん」
改易っていうのは平民になることだったよな。
屋敷からも出て行けってことか。まあ、問題ない。
「だが、養子縁組の申し出は相当あるようだ。総務大臣もその一人だがどうする」
俺は首を横に振った。
「ひおひで生ひていけます あいじょうぶ です」
「そういえば、王家用の馬車と兵士用の装甲馬車の支払いがまだでしたな。
2台で金貨500枚。総務部に預けておきますから、必要な時に必要なだけ取りにおいでなさい」
「あかりまいた」
「当面の金には困らないと思うが、これからどうする」
「あけペン と いはバネの 収入 あいますから、何とかなる 思ひまふ」
「そうだな。妃と王女を虜にした装飾品の腕前もあったか」
「王女 はまは……」
「ああ、熱を出して寝込んで居る。
魔法で一時的には楽になるようだが、すぐに熱がぶり返してくる」
「看まひょう……か」
「いや、医師団が良い顔をしないだろう」
「えは 失礼ひたひます」
さて、天涯孤独の9才かよ。
できれば家を買って、拠点を作っておきたいな。
金はあるけど、9才のガキに家なんか売ってもらえるのかね……
幸いなことに、前の家はそのままだった。
母さんの所有だと確認できたため、人を雇って荷物を運んでもらった。
どうやら、収納には回復の効果も追加されているようで、俺の火傷が少し治ったのはその影響だったようだ。
ほどなくして、収納はLv.5になった。
1.6mの立方体が収納できる。
新たに倍速という効果が増えていた。
確認したことろ、収納の中にいても移動できるのだが、その速度が普通に歩く時の倍になっていることが分かった。
収納の中は快適だった。
トレーニングしても、すぐに回復するため、延々と続けることができるし、鉱山まで倍の速度で行って、必要な鉱石を確保することもできる。
そんな日々を過ごしていたら、家の周りに不審な男たちが出没するようになった。
厳密にいえば、総務部から金貨500枚を受け取ってからだ。
金目のものは収納に入れてあるため、問題はないのだが、対策は必要だろう。
俺は、家の内側に要塞を作った。厳密には3っつのジュラルミン製の部屋を作った。
迎撃用の仕掛けも施してある。
それと並行して、あるものを揃えていった。
目が慣れてくると、小さな瓶が目についた。
あれは、母さんに分けてもらった漢方薬だ。
素材の金属にも見覚えがあった。
ここは……、収納の中なのか!
頭上の隙間から覗くと、母さんが倒れていた。
「はあはん!」
俺は、収納から飛び出した。
母さんは、背中を大きく切られてこと切れていた。
一縷の望みを託して、母さんを抱えて収納の中に入る。
傷は少しふさがり、服も元に戻ったが母さんが目を開けることはなかった。
屋敷の中はひどい有様だった。
メイドは全員惨殺され、中には犯された痕跡さえあった。
それほど資産があった訳ではないが、金目のものは全て持ち去られていた。
朝になり、通いのメイドがやってきたので、城へ連絡してもらうと、ほどなくして城兵がやってきた。
「ああ、盗賊の仕業ですな。残念なことです」
こいつの目、声……、間違いない、昨日の男だ。
睨みつける俺に気が付いた男は言った。
「おや、私に何か?」
「……」
残念だが今できることはなかった。
いつか、母さんのかたきはとる……
母さん達を埋葬し、収納を使いこなそうと四苦八苦する俺に王から呼び出しがかかった。
「タウ……だよな」
「あい。はあはんが、あいごに、少しだけうごく ないまひた」
「そうか、残念な人を亡くしたな」
「あい」
「お前の処遇だが、ワイルズ名誉男爵逝去によりワイルズ家は改易となる。
申し訳ないが、ワシの一存ではどうにもならん」
改易っていうのは平民になることだったよな。
屋敷からも出て行けってことか。まあ、問題ない。
「だが、養子縁組の申し出は相当あるようだ。総務大臣もその一人だがどうする」
俺は首を横に振った。
「ひおひで生ひていけます あいじょうぶ です」
「そういえば、王家用の馬車と兵士用の装甲馬車の支払いがまだでしたな。
2台で金貨500枚。総務部に預けておきますから、必要な時に必要なだけ取りにおいでなさい」
「あかりまいた」
「当面の金には困らないと思うが、これからどうする」
「あけペン と いはバネの 収入 あいますから、何とかなる 思ひまふ」
「そうだな。妃と王女を虜にした装飾品の腕前もあったか」
「王女 はまは……」
「ああ、熱を出して寝込んで居る。
魔法で一時的には楽になるようだが、すぐに熱がぶり返してくる」
「看まひょう……か」
「いや、医師団が良い顔をしないだろう」
「えは 失礼ひたひます」
さて、天涯孤独の9才かよ。
できれば家を買って、拠点を作っておきたいな。
金はあるけど、9才のガキに家なんか売ってもらえるのかね……
幸いなことに、前の家はそのままだった。
母さんの所有だと確認できたため、人を雇って荷物を運んでもらった。
どうやら、収納には回復の効果も追加されているようで、俺の火傷が少し治ったのはその影響だったようだ。
ほどなくして、収納はLv.5になった。
1.6mの立方体が収納できる。
新たに倍速という効果が増えていた。
確認したことろ、収納の中にいても移動できるのだが、その速度が普通に歩く時の倍になっていることが分かった。
収納の中は快適だった。
トレーニングしても、すぐに回復するため、延々と続けることができるし、鉱山まで倍の速度で行って、必要な鉱石を確保することもできる。
そんな日々を過ごしていたら、家の周りに不審な男たちが出没するようになった。
厳密にいえば、総務部から金貨500枚を受け取ってからだ。
金目のものは収納に入れてあるため、問題はないのだが、対策は必要だろう。
俺は、家の内側に要塞を作った。厳密には3っつのジュラルミン製の部屋を作った。
迎撃用の仕掛けも施してある。
それと並行して、あるものを揃えていった。
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