4 / 142
序章 転生
竹ペンを作った
しおりを挟む昼の、患者さんがいる間は、外出するようになった。
最初のうちは、みんなが気味悪がった。
すれ違う子供は泣くし、悪ガキに石を投げられたこともあった。
自分の姿は、鏡を見せてもらって分かっている。
右半分は髪もなく、焦げ茶色に変色している。右目は瞼が腫れ上がり、耳と頬と口は引きつっている。
夜中に出会ったら、俺でも逃げ出す。
でも、母さんは顔を隠さず、すれ違う人に挨拶しろといった。
「お、おは・おうおあひまふ」
「ああ、タウ、おはようさん」
「おはよう」
みんな挨拶を返してくれるようになった。
今日は、細い竹をとりにきた。
小さめのノコギリでゆっくり、確実に切っていく。
意外と簡単に5本とれた。
家に帰り、節のところで一本づつ丁寧に切っていく。
ざっくりと形を整えてペン先1cmほどのところにキリで穴をあける。
節のところをペン先にすると、硬くて持ちがいいと言っていたな。
穴からペン先にかけて、慎重に切っていき、ペン先だけは少し厚く残して小刀でペン策を削っていく。
黒板に塗ったものを全体に薄く塗り『定着!』
定着の魔法は母さんに教えてもらった。
言葉にできなくても、魔法は発動できる。
ノリだけを塗ったものや、何も塗らなかったもの。いろいろと作って乾燥させる。
当然陰干しだ。
一本だけ、少し太めの竹を切ってきて墨用の容器も二つ作った。
ノリを定着させて、節の部分でフタもできるようになっている。
「かあはん」
「どうしたタウ」
「ふへのかはひ」
「ふへ……ふでかい?」
「う・ん」
「ほう、墨入れと、その竹が筆なのかい?」
「う・ん」
カリカリ
「ああ、私が書き損じた紙だね……えっ、その細い線は……
えっ、濃いめの墨で、にじまないように工夫した……
筆よりも、細いから、細かい字が書ける……
色々と変えて作ったから……、母さんも書きやすいの見つけて……
竹だから、力を入れすぎると折れる……
なるほどねえ。ああ、ここにインクが少したまって、この切れ目に沿って流れていくんだね」
カリカリ
「うん、この先っぽには強化をかけてみようか『強化!』」
カリカリ
「ああ、いいよ。強く書いても滲まない…」
カリカリ
「紙をもっと効果的に使うにはどうしたらいいか考えた……
ああ、そうだね字を小さくすればいいんだよ。
タウ、お前って天才じゃないかい」
カリカリ
「体が自由に動かないけど、頭は人と同じように使えるから……
ああ、そうだね。だけど、タウと同じように頭を使える奴なんかいやしないよ。
ああ、自慢の息子だよ」
どうも母さんは涙もろいらしい。
タウの黒板に続いて、タウの竹ペンも墨入れと共に大ヒットとなった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。


[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。


【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる