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第四章
第47話 ドライとフィアの可愛さ爆増中
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鳥羽水族館を家族3人で楽しむことになった。
ハイジはテンションマックスだ。
様々な魚を見て喜んでいる。
だが、海獣のエリアではそうはいかなかった。
「狭くて嫌だって言ってる……。」
「そうだよな……。でもな、こうやって保護しないと、絶滅する可能性もあるんだ。」
「絶滅?」
「エサが少なくなったり、人間に捕まって食べられちゃうこともあるんだ。」
「えっ、食べるの?」
「ああ。世界中で捕獲は禁止されているんだけど、魚を捕ってたら間違えて網にかかっちゃったとかいって食用にする国があったんだ。この間消滅したけどね。」
「あれっ、この子、お腹痛いって。」
俺はスタッフオンリーと書かれたドアを抜けて飼育員に腹痛のスナメリのことを伝えた。
「でも、普通にエサを食べていますよ。」
「この子は動物と会話できるんだ。きちんと調べてくれ。」
「いや、ドリトルじゃあるまいし、子供のいうことを真に受けないでくださいよ。」
「まさか、調べもしないで否定するのか?」
「お兄ちゃん、苦しいって……。」
「くっ、獣医を呼べ!」
「えっ?」
俺はレビテーションで苦しんでいるスナメリを浮かせた。
「お腹……、血が溜まってる……。」
「くそっ、どうすれば……。」
異変を聞きつけて何人かの飼育員が駆け寄ってくる。
「お腹の中に血が溜まっているみたいだ。どうしたらいい!」
「敗血症ですか、このまま隔離水槽に入れます。……これって、運べるんですか?」
「押していけば運べる。」
「じゃあ、あちらの水槽までお願いします。今、検体を採取しますから。」
飼育員たちは皆手際よく動いていた。
元の水槽内の魚は処分し、検査結果から判明したワクチンを投与していく。
「ご協力ありがとうございます。検査の結果豚丹毒菌が検出されました。今、痛み止めと抗生物質を投与しました。」
「助かるんですか?」
「急性ですから、ふつうは手遅れになる事が多いんですが、おかげさまで発見も早かったですし、何とか助けたいですね。」
ハイジと一緒に少しの間付き添っていたが、痛み止めが効いたのか落ち着いてきた。
俺たちは全身を殺菌消毒して白ゴジのタマゴのところに戻った。
「準備ができたみたいだな。」
「うん。二人とも出てこようとしてる。」
1時間ほど待って、2匹とも無事に殻を破って出てきた。
体高1.5mの白い幼体だったが、刷り込みがあったようだ。
初めて目にした俺たち3人を親として認識している。
「空腹はないみたいだな。」
「うん。水の中でなくても大丈夫みたいだね。」
研究所の所長とも相談し、スナメリの菌がうつるのそ避けるためそのまま竜宮に連れていくことになった。
研究所のスタッフも2名同行する。
竜宮では、最初にアンジーに引き合わせた。
「アンジー。この2匹には親がいないんだ。面倒をみてくれないか?」
アンジーは快く引き受けてくれた。
2匹にとっては初めての水に触れ、おっかなびっくりで浅瀬で戯れることから始めた。
サヤカとハイジも水着になって遊んでいる。
12時間後、最初の食事は豚ひき肉を40度に過熱して与えてみた。
2匹とも喜んで食べてくれた。
アンジーにも食事をしてもらう。
そこから先は、アンジーに任せるしかない。
アンジーも浅瀬で気長につきあってくれている。
ヨーゼフとネロもやってきたので、兄弟だと説明して二匹を引き合わせた。
「驚いたよ。本当に白ゴジを手なづけているんだね。」
「僕の力じゃなくて、ハイジのおかげなんですよ。」
「豚を食べさせる前に何かやっているけど、あれは?」
「60度に過熱してるんですよ。その温度が彼らにとって一番美味しいっていうんです。」
「羨ましいな。そこまでのコミュニケーションがとれるなんて、我々みたいな獣医師にとっては夢みたいな能力だよね。」
「これだけですよ。僕たちには木村さんみたいな知識の積み重ねはないですからね。」
「とんでもない。昨日のスナメリがいい例だよ。僕たちは症状が出ないと動物の異常に気づくことができない。」
「ああ、そこが人間の医師と獣医さんの違いなんですね。」
「うん。人間は調子が悪ければ自分で病院にいくけど、動物は検査しないと分からないからね。」
獣医師の木村さんは鳥羽の研究所から派遣されてきた獣医師だ。
白ゴジの幼体を竜宮に連れて来たのは急な決定だったが、率先して来てくれたようだ。
元々は名古屋の研究所で白ゴジを育てる予定だったのが、伝染病の発生で急遽予定変更になってしまったのだ。
豚丹毒菌が白ゴジに感染するのかは不明だが、かけがえのない機会を棒に振るわけにはいかなかったのだろう。
まあ、白ゴジを施設で育てるといっても、せいぜい数か月の予定だった。
3mとかになったら、さすがに施設では育てられないだろう。
シャチとかの大型海獣も飼育されているが、白ゴジは話が違う。
陸上も歩き回るし、なによりパワーが未知数なのである。
一般公開などできるはずがないのだ。
考えてみてほしい。白ゴジの飼育エリアでギャーギャーと騒ぎ立てるお子ちゃまに苛立った白ゴジが、いきなりブレスをはくシーンを……。
それだけで間違いなく環境大臣の首が飛ぶ。
なにより、数か月の展示のためにそこまでの施設など作れるはずがない。
昨日の孵化シーンは、鳥羽水族館の公式サイトで公開されたのだが、展示してくれとの書き込みが後をたたない。
名前を公募しろという声も多くあがっていたが、鳥羽に関係する名前なんかつけられても今後鳥羽で育てる予定などないのだ。
それに名前はすでにハイジがつけてある。
ドライとフィアだ。
ハイジの国の言葉で、ドライは3でフィアは4だ。
フィアは鼻のあたまが少し茶色っぽい。
この名前も、同行した飼育員の一ノ瀬弥生さんにより動画で公開された。
一ノ瀬さんは黒髪ショートカットで小柄な28才の女性だ。
そばかす笑顔の可愛い女性で、ウエットスーツで2匹とじゃれる姿が動画で公開された。
少し泳げるようになった2匹と一緒に泳ぐ動画は、あっという間に300万回再生された。
鳥羽水族館にとって、白ゴジの動画は人気コンテンツになっているようだ。
ドライとフィアは比較的砂浜にいる事が多い。
立ち上がると人間と同じくらいの身長だが、体重は100kgを超えている。
動きもそれほど早くないのだが、腕の力や咬む力はとんでもなく強い。
だから、水族館のスタッフが対応する時は、必ずシールドの魔道具でシールドを張ってから対応してもらっている。
定期的に採血して糞を回収。心拍数や血圧を計測したり、口の中から細胞を採取したりしている。
「こんなに安定した計測ができるのは君たちのおかげだよ。本当にありがとう。」
「この結果は彼らの生活に繁栄されるんですからお互い様ですよ。」
「それにしてもドライとフィアは可愛いな。」
「ネロやヨーゼフだって可愛いですよ。いうこともきいてくれるし。」
「大和で孵化したことで、みんな親近感を感じているんだよ。」
「でも、野生の猛獣ですからね。気は抜けませんよ。」
「そうだよなぁ。大臣は気楽に一般にお披露目してくれとか言ってくるけど、そんなことができるわけない。」
「あはは、大変ですね。」
「防衛庁は何も言ってこないのかい?」
「どうだろう。僕がヘソを曲げたらどうなるか分かっているから、何も言えないと思いますよ。」
だが、そうとばかりも言ってられなかった。
【あとがき】
一ノ瀬弥生の登場シーンは。スク水にしようか考えたんですけどね。
ハイジはテンションマックスだ。
様々な魚を見て喜んでいる。
だが、海獣のエリアではそうはいかなかった。
「狭くて嫌だって言ってる……。」
「そうだよな……。でもな、こうやって保護しないと、絶滅する可能性もあるんだ。」
「絶滅?」
「エサが少なくなったり、人間に捕まって食べられちゃうこともあるんだ。」
「えっ、食べるの?」
「ああ。世界中で捕獲は禁止されているんだけど、魚を捕ってたら間違えて網にかかっちゃったとかいって食用にする国があったんだ。この間消滅したけどね。」
「あれっ、この子、お腹痛いって。」
俺はスタッフオンリーと書かれたドアを抜けて飼育員に腹痛のスナメリのことを伝えた。
「でも、普通にエサを食べていますよ。」
「この子は動物と会話できるんだ。きちんと調べてくれ。」
「いや、ドリトルじゃあるまいし、子供のいうことを真に受けないでくださいよ。」
「まさか、調べもしないで否定するのか?」
「お兄ちゃん、苦しいって……。」
「くっ、獣医を呼べ!」
「えっ?」
俺はレビテーションで苦しんでいるスナメリを浮かせた。
「お腹……、血が溜まってる……。」
「くそっ、どうすれば……。」
異変を聞きつけて何人かの飼育員が駆け寄ってくる。
「お腹の中に血が溜まっているみたいだ。どうしたらいい!」
「敗血症ですか、このまま隔離水槽に入れます。……これって、運べるんですか?」
「押していけば運べる。」
「じゃあ、あちらの水槽までお願いします。今、検体を採取しますから。」
飼育員たちは皆手際よく動いていた。
元の水槽内の魚は処分し、検査結果から判明したワクチンを投与していく。
「ご協力ありがとうございます。検査の結果豚丹毒菌が検出されました。今、痛み止めと抗生物質を投与しました。」
「助かるんですか?」
「急性ですから、ふつうは手遅れになる事が多いんですが、おかげさまで発見も早かったですし、何とか助けたいですね。」
ハイジと一緒に少しの間付き添っていたが、痛み止めが効いたのか落ち着いてきた。
俺たちは全身を殺菌消毒して白ゴジのタマゴのところに戻った。
「準備ができたみたいだな。」
「うん。二人とも出てこようとしてる。」
1時間ほど待って、2匹とも無事に殻を破って出てきた。
体高1.5mの白い幼体だったが、刷り込みがあったようだ。
初めて目にした俺たち3人を親として認識している。
「空腹はないみたいだな。」
「うん。水の中でなくても大丈夫みたいだね。」
研究所の所長とも相談し、スナメリの菌がうつるのそ避けるためそのまま竜宮に連れていくことになった。
研究所のスタッフも2名同行する。
竜宮では、最初にアンジーに引き合わせた。
「アンジー。この2匹には親がいないんだ。面倒をみてくれないか?」
アンジーは快く引き受けてくれた。
2匹にとっては初めての水に触れ、おっかなびっくりで浅瀬で戯れることから始めた。
サヤカとハイジも水着になって遊んでいる。
12時間後、最初の食事は豚ひき肉を40度に過熱して与えてみた。
2匹とも喜んで食べてくれた。
アンジーにも食事をしてもらう。
そこから先は、アンジーに任せるしかない。
アンジーも浅瀬で気長につきあってくれている。
ヨーゼフとネロもやってきたので、兄弟だと説明して二匹を引き合わせた。
「驚いたよ。本当に白ゴジを手なづけているんだね。」
「僕の力じゃなくて、ハイジのおかげなんですよ。」
「豚を食べさせる前に何かやっているけど、あれは?」
「60度に過熱してるんですよ。その温度が彼らにとって一番美味しいっていうんです。」
「羨ましいな。そこまでのコミュニケーションがとれるなんて、我々みたいな獣医師にとっては夢みたいな能力だよね。」
「これだけですよ。僕たちには木村さんみたいな知識の積み重ねはないですからね。」
「とんでもない。昨日のスナメリがいい例だよ。僕たちは症状が出ないと動物の異常に気づくことができない。」
「ああ、そこが人間の医師と獣医さんの違いなんですね。」
「うん。人間は調子が悪ければ自分で病院にいくけど、動物は検査しないと分からないからね。」
獣医師の木村さんは鳥羽の研究所から派遣されてきた獣医師だ。
白ゴジの幼体を竜宮に連れて来たのは急な決定だったが、率先して来てくれたようだ。
元々は名古屋の研究所で白ゴジを育てる予定だったのが、伝染病の発生で急遽予定変更になってしまったのだ。
豚丹毒菌が白ゴジに感染するのかは不明だが、かけがえのない機会を棒に振るわけにはいかなかったのだろう。
まあ、白ゴジを施設で育てるといっても、せいぜい数か月の予定だった。
3mとかになったら、さすがに施設では育てられないだろう。
シャチとかの大型海獣も飼育されているが、白ゴジは話が違う。
陸上も歩き回るし、なによりパワーが未知数なのである。
一般公開などできるはずがないのだ。
考えてみてほしい。白ゴジの飼育エリアでギャーギャーと騒ぎ立てるお子ちゃまに苛立った白ゴジが、いきなりブレスをはくシーンを……。
それだけで間違いなく環境大臣の首が飛ぶ。
なにより、数か月の展示のためにそこまでの施設など作れるはずがない。
昨日の孵化シーンは、鳥羽水族館の公式サイトで公開されたのだが、展示してくれとの書き込みが後をたたない。
名前を公募しろという声も多くあがっていたが、鳥羽に関係する名前なんかつけられても今後鳥羽で育てる予定などないのだ。
それに名前はすでにハイジがつけてある。
ドライとフィアだ。
ハイジの国の言葉で、ドライは3でフィアは4だ。
フィアは鼻のあたまが少し茶色っぽい。
この名前も、同行した飼育員の一ノ瀬弥生さんにより動画で公開された。
一ノ瀬さんは黒髪ショートカットで小柄な28才の女性だ。
そばかす笑顔の可愛い女性で、ウエットスーツで2匹とじゃれる姿が動画で公開された。
少し泳げるようになった2匹と一緒に泳ぐ動画は、あっという間に300万回再生された。
鳥羽水族館にとって、白ゴジの動画は人気コンテンツになっているようだ。
ドライとフィアは比較的砂浜にいる事が多い。
立ち上がると人間と同じくらいの身長だが、体重は100kgを超えている。
動きもそれほど早くないのだが、腕の力や咬む力はとんでもなく強い。
だから、水族館のスタッフが対応する時は、必ずシールドの魔道具でシールドを張ってから対応してもらっている。
定期的に採血して糞を回収。心拍数や血圧を計測したり、口の中から細胞を採取したりしている。
「こんなに安定した計測ができるのは君たちのおかげだよ。本当にありがとう。」
「この結果は彼らの生活に繁栄されるんですからお互い様ですよ。」
「それにしてもドライとフィアは可愛いな。」
「ネロやヨーゼフだって可愛いですよ。いうこともきいてくれるし。」
「大和で孵化したことで、みんな親近感を感じているんだよ。」
「でも、野生の猛獣ですからね。気は抜けませんよ。」
「そうだよなぁ。大臣は気楽に一般にお披露目してくれとか言ってくるけど、そんなことができるわけない。」
「あはは、大変ですね。」
「防衛庁は何も言ってこないのかい?」
「どうだろう。僕がヘソを曲げたらどうなるか分かっているから、何も言えないと思いますよ。」
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