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第四章
第45話 これは大和の陰謀だと騒ぎ出すコークリ
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コークリの発した3発の中距離弾道ミサイルに対し、シベリアは予想外の進行方向が確認された時点で大混乱となった。
特に混乱の酷かったのは、コークリのミサイル基地から500kmの位置にあるウラジオであり、その混乱ぶりが通信記録からも確認できた。
発射後1分以内にレーダーシステムと連動したミサイル防衛システムがアラートを発した。
俺の元に届いたウラジオの記録では、到達予想時間が6分後となっており、ミサイル防衛システムは迎撃ミサイル6発を発射すると司令部のモニターには表示されていた。
だが、ミサイル発射の指示は、伝達系統の途中で消滅してしまった。
おそらく、最初に異変に気づいたのはレーダー手だったのだろう。
その音声記録も残っている。
そしてオペレータによるミサイル発射の手動操作によるリクエストは到達予想時間が3分を切った頃に行われている。
だが、その命令も途中で消滅している。
質が悪いのは、システム上はそのリクエストが実行されているように見えたことで、ここでも大きなタイムロスが発生してしまった。
結局、住民への避難指示が出されないまま、ウラジオの海軍基地を中心とした半径5kmは炎に包まれた。
この時点で、両国の最大の関心事は、コークリの艦隊がシベリアの艦隊を攻撃していた事であり、ミサイルに対する意識は低かったようだ。
大和の対策本部でも、ウラジオの焼失はモニターされていた。
大和が宣戦布告を受けたことは、両国と大和双方で公表していた。
これにより、各国の衛星もウラジオの艦隊に注目していたのだが、同時に海軍基地にも注目が集まっていた。
そんな中での、コークリによるシベリア艦隊攻撃と核爆発だった。
大和が核弾頭を保有していないのは公表されていたし、それではウラジオで起きた核爆発はどういう事なのかと、各国のメディアが追及し、監視衛星からの情報でコークリで発射されたものだと断定されてしまった。
全世界が危惧する核の使用という、禁忌を犯したコークリに対する非難は全国の声となった。。
そして、6000km離れたカザソとモスクアに向かう弾道ミサイルの存在が確認された。
最新の迎撃ミサイルは射程距離2000kmと言われているが、モスクアはともかくカザソに配備されている迎撃ミサイルは射程500kmが最長だった。
そして、モスクアに向かう弾道ミサイルは、極超音速滑空ミサイルであるため、到達予想時間は早い。
モスクアへの着弾予想は発射後約2時間だった。
ウラジオと違って、十分に対応する時間がある。
音声通信記録によれば、シベリアからコークリに対してミサイルの自爆や目標変更を指示していたが、コークリの回答は制御不能というものだった。
艦隊の攻撃に関しても連絡不能のため詳細不明としか回答されていない。
そう、コークリ艦隊の通信装置は全て無効にしてある。
一部、衛星携帯電話による連絡は行われていたようだが、断片的なものであり問題ない。
このタイミングで、シベリアのレーダー基地がダウンした。いや、ダウンさせた。
高出力のレーダーがなければ、感知エリアは最大でも350kmに落ちてしまう。
例えばマッハ3で飛来する極超音速滑空ミサイルならば、5分で到達できる距離になる。
そこからターゲットを設定して迎撃ミサイル発射。
超高速のミサイルを破壊できる可能性は低いが、それでも数を撃てばという発想で、モスクアから100発超の迎撃ミサイルが発射された。
モスクアではかろうじて極超音速滑空ミサイルの迎撃に成功したのだが、カザソにはそれだけの設備がなく、核が着弾してしまった。
カザソ基地も半径5kmにわたって焼き尽くされたのだ。
桜の推計では、死者35万人だという。
ここに至って、シベリアはコークリとの同盟を解除し、開戦を宣言した。
もともと、大和に対して敵意を抱いていたのはコークリなので、シベリアにとって大和侵攻はそこまで重要ではなかった。
そして、ウラジオへ放たれた巡航ミサイル50発のうち、半分も迎撃できなかったウラジオの市街地は更に深刻な被害を被ってしまった。
この時点で、ウラジオから侵攻中だったコークリの艦隊は60%が損壊し、先手をとられたシベリアの艦隊の戦力も50%ダウンしている。
シベリア艦隊は、初撃で空母を攻撃されており、航空機は無力化されている。
そのため、ウラジオの空軍基地から爆撃機を中心とした戦闘機が出撃し、少し遅れてコークリからも航空機が出撃していた。
本気になったシベリアは、各ミサイル基地や車載型超長距離地対空ミサイルシステムから1000発を超えるミサイルが発射された。
シベリアから発射されたミサイルは、全て通常弾頭であったのだが、コークリは核弾頭の準備を始めていた。
「特務班から報告!コークリはシベリアに向けて核弾頭の準備を始めました。」
「B-01作戦発動せよ。」
B-01は、コークリの核弾頭無力化だ。
核弾頭自体の起爆システムを書き換え、核分裂と核融合が起こらないようにしてしまうのだ。
もう一つ、発射システム自体をロックしてしまうのを同時に行っていく。
基地だけでなく、潜水艦に搭載された核弾頭にも同じ処理を施していく。
「B-01完了!」
「B-03発動!」
B-03は、コークリに全部で20展開するレーダー基地のシャットダウンだ。
「B-03完了!」
この間、大和の防衛軍は待機状態だった。
事前に太平洋側の艦隊を部分的に日本海側に移動し、航空戦力も移し終わっている。
竜宮のサヤカ達にいたっては、通常運転だ。
普段と同じように朝食を与え、散歩もしている。
しいて言えば、潜水艦に対する警戒を強め、、散歩のコースもそれに応じたものに変更してある。
そしてコークリは、一連の出来事が大和の陰謀だという声明を発表したが、どこからも相手にされなかった。
例えば、核ミサイルの1機が、目標を書き換えられていた程度であれば信憑性もあっただろう。
だが、50隻にも及ぶ艦隊を一斉に誤動作させたり、3か所の基地に分散されたミサイルシステムに手を加えることなどできるはずがない。
仮に、セキュリティー皆無の状態であったとしてもである。
こうして、コークリとシベリアは全面戦争に突入していった。
大和はどさくさに紛れてコークリのチェジュ島とシベリアのサハリンおよび千島列島を制圧下においた。
これは武力制圧ではなく、自治組織を取り込んでの制圧だった。
チェジュ島はともかく、サハリンと千島列島については、白ゴジの出現が影響していた。
最初にサハリンのオホーツク海側で白ゴジが目撃されたのは、大和・コークリ・シベリア戦争勃発の1か月前だった。
それまでにも、定置網や底引き網の破壊報告はあったのだが、原因ははっきりしていなかった。
それが、白ゴジによる影響だと判明したのは、開戦の3日前だという。
漁師たちの見ている前で、定置網のブイが海中に引き込まれていき、100mほど先に白ゴジが浮き上がってきたという。
人的被害はなかったものの、定置網はズタズタに引き裂かれ、被害総額は1億円以上だと報告された。
そこ以外に複数個所で定置網の破壊が起きており、漁業関係者から国に討伐依頼が出されたものの、政府は対応できずに開戦へと進んでしまった。
サハリン自治区から蝦夷の自治体に相談があったのは開戦から2日後の事だった。
そもそも、戦争中の両国であるにもかかわらず、蝦夷に連絡が入るのもおかしな話だが、蝦夷の知事から防衛庁に相談が入り防衛大臣経由で俺に話がきた。
【あとがき】
戦争は大和そっちのけで進んでいきました。
特に混乱の酷かったのは、コークリのミサイル基地から500kmの位置にあるウラジオであり、その混乱ぶりが通信記録からも確認できた。
発射後1分以内にレーダーシステムと連動したミサイル防衛システムがアラートを発した。
俺の元に届いたウラジオの記録では、到達予想時間が6分後となっており、ミサイル防衛システムは迎撃ミサイル6発を発射すると司令部のモニターには表示されていた。
だが、ミサイル発射の指示は、伝達系統の途中で消滅してしまった。
おそらく、最初に異変に気づいたのはレーダー手だったのだろう。
その音声記録も残っている。
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だが、その命令も途中で消滅している。
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この時点で、両国の最大の関心事は、コークリの艦隊がシベリアの艦隊を攻撃していた事であり、ミサイルに対する意識は低かったようだ。
大和の対策本部でも、ウラジオの焼失はモニターされていた。
大和が宣戦布告を受けたことは、両国と大和双方で公表していた。
これにより、各国の衛星もウラジオの艦隊に注目していたのだが、同時に海軍基地にも注目が集まっていた。
そんな中での、コークリによるシベリア艦隊攻撃と核爆発だった。
大和が核弾頭を保有していないのは公表されていたし、それではウラジオで起きた核爆発はどういう事なのかと、各国のメディアが追及し、監視衛星からの情報でコークリで発射されたものだと断定されてしまった。
全世界が危惧する核の使用という、禁忌を犯したコークリに対する非難は全国の声となった。。
そして、6000km離れたカザソとモスクアに向かう弾道ミサイルの存在が確認された。
最新の迎撃ミサイルは射程距離2000kmと言われているが、モスクアはともかくカザソに配備されている迎撃ミサイルは射程500kmが最長だった。
そして、モスクアに向かう弾道ミサイルは、極超音速滑空ミサイルであるため、到達予想時間は早い。
モスクアへの着弾予想は発射後約2時間だった。
ウラジオと違って、十分に対応する時間がある。
音声通信記録によれば、シベリアからコークリに対してミサイルの自爆や目標変更を指示していたが、コークリの回答は制御不能というものだった。
艦隊の攻撃に関しても連絡不能のため詳細不明としか回答されていない。
そう、コークリ艦隊の通信装置は全て無効にしてある。
一部、衛星携帯電話による連絡は行われていたようだが、断片的なものであり問題ない。
このタイミングで、シベリアのレーダー基地がダウンした。いや、ダウンさせた。
高出力のレーダーがなければ、感知エリアは最大でも350kmに落ちてしまう。
例えばマッハ3で飛来する極超音速滑空ミサイルならば、5分で到達できる距離になる。
そこからターゲットを設定して迎撃ミサイル発射。
超高速のミサイルを破壊できる可能性は低いが、それでも数を撃てばという発想で、モスクアから100発超の迎撃ミサイルが発射された。
モスクアではかろうじて極超音速滑空ミサイルの迎撃に成功したのだが、カザソにはそれだけの設備がなく、核が着弾してしまった。
カザソ基地も半径5kmにわたって焼き尽くされたのだ。
桜の推計では、死者35万人だという。
ここに至って、シベリアはコークリとの同盟を解除し、開戦を宣言した。
もともと、大和に対して敵意を抱いていたのはコークリなので、シベリアにとって大和侵攻はそこまで重要ではなかった。
そして、ウラジオへ放たれた巡航ミサイル50発のうち、半分も迎撃できなかったウラジオの市街地は更に深刻な被害を被ってしまった。
この時点で、ウラジオから侵攻中だったコークリの艦隊は60%が損壊し、先手をとられたシベリアの艦隊の戦力も50%ダウンしている。
シベリア艦隊は、初撃で空母を攻撃されており、航空機は無力化されている。
そのため、ウラジオの空軍基地から爆撃機を中心とした戦闘機が出撃し、少し遅れてコークリからも航空機が出撃していた。
本気になったシベリアは、各ミサイル基地や車載型超長距離地対空ミサイルシステムから1000発を超えるミサイルが発射された。
シベリアから発射されたミサイルは、全て通常弾頭であったのだが、コークリは核弾頭の準備を始めていた。
「特務班から報告!コークリはシベリアに向けて核弾頭の準備を始めました。」
「B-01作戦発動せよ。」
B-01は、コークリの核弾頭無力化だ。
核弾頭自体の起爆システムを書き換え、核分裂と核融合が起こらないようにしてしまうのだ。
もう一つ、発射システム自体をロックしてしまうのを同時に行っていく。
基地だけでなく、潜水艦に搭載された核弾頭にも同じ処理を施していく。
「B-01完了!」
「B-03発動!」
B-03は、コークリに全部で20展開するレーダー基地のシャットダウンだ。
「B-03完了!」
この間、大和の防衛軍は待機状態だった。
事前に太平洋側の艦隊を部分的に日本海側に移動し、航空戦力も移し終わっている。
竜宮のサヤカ達にいたっては、通常運転だ。
普段と同じように朝食を与え、散歩もしている。
しいて言えば、潜水艦に対する警戒を強め、、散歩のコースもそれに応じたものに変更してある。
そしてコークリは、一連の出来事が大和の陰謀だという声明を発表したが、どこからも相手にされなかった。
例えば、核ミサイルの1機が、目標を書き換えられていた程度であれば信憑性もあっただろう。
だが、50隻にも及ぶ艦隊を一斉に誤動作させたり、3か所の基地に分散されたミサイルシステムに手を加えることなどできるはずがない。
仮に、セキュリティー皆無の状態であったとしてもである。
こうして、コークリとシベリアは全面戦争に突入していった。
大和はどさくさに紛れてコークリのチェジュ島とシベリアのサハリンおよび千島列島を制圧下においた。
これは武力制圧ではなく、自治組織を取り込んでの制圧だった。
チェジュ島はともかく、サハリンと千島列島については、白ゴジの出現が影響していた。
最初にサハリンのオホーツク海側で白ゴジが目撃されたのは、大和・コークリ・シベリア戦争勃発の1か月前だった。
それまでにも、定置網や底引き網の破壊報告はあったのだが、原因ははっきりしていなかった。
それが、白ゴジによる影響だと判明したのは、開戦の3日前だという。
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サハリン自治区から蝦夷の自治体に相談があったのは開戦から2日後の事だった。
そもそも、戦争中の両国であるにもかかわらず、蝦夷に連絡が入るのもおかしな話だが、蝦夷の知事から防衛庁に相談が入り防衛大臣経由で俺に話がきた。
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