天と地と空間と海

モモん

文字の大きさ
上 下
35 / 51
第三章

第35話 これって、魔道具なんですか?

しおりを挟む
「大和政府はこの件に関して沈黙していますが、どのように考えていると思いますか?」
「沈黙ではなく、具体的な申し入れがあったわけではないので、現時点では答えることはできないと言っているだけですよね。
僕は、大統領の会見に同席していたから個人的な意見を述べただけで、基本的には大和と同意見です。」

「今現在、魔法の開発でも、魔道具の舞初でも、大和は世界の最先端をいっているわけですが、何か特殊な薬をつかっいるとか、頭に機械を埋め込んでいるんじゃないかという噂が出回っていますが、実施はどうなんですか?」
「うーん、俺の右腕は義手なので、ナビが組み込まれています。だから、機械を埋め込まれていると言われればそうかもしれませんね。」
「そのナビに特殊な機能が組み込まれているのではないですか?」
「まあ、魔法の簡易発動プロセスを公表した時に発表された、オブロン社の視覚同調や視線入力は組み込まれていますね。それに、俺が開発に携わってきたツールやノウハウも入っていますから、市販されているナビとは比較になえあない機能は備えいますよ。」
「わが社の掴んでいる情報では、それを使えば誰でもスーパーマンになって、白ゴジの討伐が可能となるのだろう。なぜ、大和政府はそれを秘匿しているのだ!」
「秘匿しているわけじゃないでしょう。動画を公開しているわけだし、魔法の有効な部分を5000度で過熱してやれば焼くことができるって情報も公開しているんだから。」
「だったら何故、アメリアの軍隊は白ゴジを討伐できなかったんだ!他に隠していることがあるんだろう!」
「そりゃあ、自分たちで開発したり解明したこと全ては公開してないですよ。利権や著作権の問題もありますけど、そこはどの国も同じでしょ。」
「ふざけるな!そのせいで何百人もの兵士が犠牲になり、何億という人間が脅威に晒されているんだぞ!」
「全てを公開して白ゴジの脅威は無くなるかもしれない。だが、その分、危険な思想を持つ国や個人が過分な力を持ってしまうかもしれない。その方が怖くないですか?」
「そんなのは詭弁だ!」
「いやいや、力を持ってしまったら、使ってみたくなりますよね。核の時みたいに。」
「なにぃ!」
「アメリアは使ったじゃないですか、核を。」
「それとこれとは話が違う!」
「違いませんよ。それどころか、強力な魔法の方が手軽に使えるだけ質が悪い。」
「あっ、記者さんの出版社って、私の写真集を出版したところですよね。許可した覚えはありませんけど。」
「うっ……。あ、あれは公開された画像を使っているので、問題はないと……聞いている。」
「へえ、この国には、肖像権とか個人情報に関する法律ってないんですので。驚きましたわ!」

 結局、アメリア政府はこの件に関する発言はなく、俺の報酬も新規開設したアメリアの銀行口座に振り込まれたので、俺たちはまた16時間かけてアラビア海に戻った。
 そして俺たちとタイミングをあわせて高田竜馬さんと高梨雷蔵さんが派遣されてきた。
 二人ともSSクラスのメンバーで、白ゴジを倒せるだけの実力があると思われている。

「隊長、白ゴジが出たら、俺たちにやらせてもらえませんか。」
「そうですね。複数の個体が出現する可能性もありますから、皆で実戦経験を積みましょう。」

 経験のある俺とサヤカは別れ、二人一組のペアとなって船での巡回と本部待機に別れることにした。
 ネットワークを使って、常時解放の音声会議で情報交換をしつつ、白ゴジの出現に備える。

 そんな中、サクラさんからメッセージが入った。
 AIのバージョンアップ用のファイルを送ったので桜に実行させるとの事だった。
 俺が本部待機の時にそれが実行されたのだが特に違いは感じられなかった。
 そして数日後、バージョンアップに伴うパーツが届いた。
 襟につけるタイプのボタン型スピーカーだった。

『これで、外国語をすべて翻訳して、スピーカーから出力することができます。』
「それって?」
『通訳を介さないで会話することが可能になりました。』
「へえ、便利になったんだ。」

 1か月の間パトロールを続けたが白ゴジは現れなかった。
 実害も出ていなかったことから、大和政府は一旦帰還する決定をした。

 その帰りに、ヨーロッパで共同開発中の魔道具を確認するよう指示がきた。

「共同開発中の魔道具なんてあったのね。」
「うん。戦略チームから有川さん、支援チームから塚田さんが派遣されているんだ。それと三ツ星が参加してる。」
「どこの国が参加してるの?」
「ケルト共和国とゲルマン連邦だね。」
「何を作っているの?」
「白ゴジ対策用の魔道具だよ。これが実用化できれば、俺たちの負担は相当減るはずなんだ。こことは別に、アメリアとシンと大和でも開発が進んでいるはずだよ。」

 俺たちは中東からゲルマン連邦のブレーメンまでサウリの輸送機で運んでもらった。
 空港には支援チームの塚田さんが迎えに来てくれていた。
 塚田さんは32才になる支援チームのリーダーだ。
 短髪のマッチョマンで、空手の有段者だと聞いている。

「隊長、お疲れ様。」
「進捗はどうですか?」
「基本的なシステムは三ツ星が作ってくれたので、こっちでボディーに組み込んで動作確認できるレベルまで終わってるよ。」
「すごい。もうそこまでいってるんですか。」
「できれば、少し休んでから試運転してくれるとありがたいんだけどな。」
「当然ですよ。せっかく対策チームのエース級が揃っているんですからね。」

 開発チームの拠点は、ゲルマン連邦のブレーメン海軍基地の中にあった。
 
「こちらが、試作魔導挺1号です。」
「えっ、このバスが魔道具なんですか。」
「そうだよサヤカちゃん。」
「魔道具って聞いてたから、武器みたいなものだと思っていました。」
「ウフフッ。これまでの魔道具とは一味違いましてよ。」
「えっ?」
「ああ、こちらはケルトのリズ。システム部門のチーフだよ。」
「はじめまして。大和防衛軍災害支援特別部隊長のジン・シンドウです。」
「ケルトのマギシステム社から派遣されてきましたエリザベス・マイヤールです。」
「これって、ベースは2階建てバスなんですか?」
「ええ。タイヤはついていますが駆動機関はありません。航空機のタイヤと同じですわ。」
「一階部分は生活空間になっていて、仮眠用のベッドなんかと休憩スペースとトイレがあるんだ。」
「動力源は操縦者の魔力だけなんですか?」
「いや、小型核融合炉を搭載しているから、システム系は電気だよ。それに、非常用として魔石も積んであるから、万一の場合でも墜落の心配は不要だね。」

 動作試験には両国から2名の魔法士と1名のエンジニアが同乗した。

 合計9名がシステム制御用のゴーグル付きヘルメットを装着する。
 俺は同じシステムをインストールしたのでヘルメットは不要だった。

「じゃあ、試験飛行を開始します。高梨さん、高度1mで方角150度に時速5kmで移動してください。」
「了解。高度1m、方位150度、時速5kmで移動を開始します。」
「サヤカさん、シールド展開。」
「シールド展開します。」

 俺の視界には、現在の状況が全てモニターされている。

 ボディーが完全に倉庫から出たことを確認し、高度100mを指示し、速度を徐々にあげていく。
 海上に出たところで、時速1100kmまで加速していった。


【あとがき】
 魔導挺1号発進! 次回第四章スタートです。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ

犬社護
ファンタジー
交通事故で不慮の死を遂げてしまった僕-リョウトは、死後の世界で女神と出会い、異世界へ転生されることになった。事前に転生先の世界観について詳しく教えられ、その場でスキルやギフトを練習しても構わないと言われたので、僕は自分に与えられるギフトだけを極めるまで練習を重ねた。女神の目的は不明だけど、僕は全てを納得した上で、フランベル王国王都ベルンシュナイルに住む貴族の名門ヒライデン伯爵家の次男として転生すると、とある理由で魔法を一つも習得できないせいで、15年間軟禁生活を強いられ、15歳の誕生日に両親から追放処分を受けてしまう。ようやく自由を手に入れたけど、初日から幽霊に憑かれた幼女ルティナ、2日目には幽霊になってしまった幼女リノアと出会い、2人を仲間にしたことで、僕は様々な選択を迫られることになる。そしてその結果、子供たちが意図せず、どんどんチート化してしまう。 僕の夢は、自由気ままに世界中を冒険すること…なんだけど、いつの間にかチートな子供たちが主体となって、冒険が進んでいく。 僕の夢……どこいった?

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...