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第三章
第32話 うん、意外と魔力量は少なかったんだね
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「大和の防衛大臣に言われて来ました真藤です。あなたが艦長さんですか?」
「艦長のヘルナンデスだ。よく来た、適当に待機しててくれ。」
「折原氏に要望しましたが、休憩したり着替えたりできる部屋を確保してください。」
「そんなものは契約に入っていない。」
「契約?何のことですか?」
「空港でサインしただろう。」
「いえ。手荷物を受け取った直後、直接ヘリに案内されましたけど。」
「なにぃ!」
「あっ、艦長。空港に待機していた本部スタッフから連絡が入りました。真藤氏とは会えなかったと。」
「ぐぬぬ。まあいい。この艦に乗った以上、俺の指示に従ってもらう。」
「ふう。こちらの要望はまったく逆だ。白ゴジが現れた際には、俺の指示に従ってもらう。正確な情報がほしい。それまでは時差ぼけを解消するために休養できる部屋を用意してくれ。以上だ。」
「そんな要求、聞けるわけないだろう。」
「勘違いするな。俺に出動を頼んできたのは大統領だ。この程度の要求を聞けないというのなら、白ゴジ討伐の要求も拒否する。どちらにするかお前に選ばせてやる。」
「バカか。この海でお前の自由になるものなどあるわけがないだろう。指示に従わなければ海に放り出すぞ。」
「面白い。やってみろよ。」
「艦長、白ゴジがロングビーチの沖合250kmに現れました!」
「くそっ、休養もできねえのかよ。おい、折原。現在地と白ゴジの位置が分かるマップを表示させろ。」
折原がスタッフに指示をだしていると、艦長が割り込んできた。
「勝手なことをするんじゃねえ。お前は指示するまで引っ込んでいろ。」
「イージス艦「サンタフェ」が5kmの距離で攻撃を開始しました。空軍も戦闘機と攻撃用ヘリを向かわせているとのこと。」
「海軍本部から入電。空母「ライガー」よりF-35Bを向かわせたとのこと。作戦参加中の部隊は、至急サンタフェに合流せよ。以上です。」
「総舵手、ポイントBに全速力で向かえ。」
ポイントBは、戦闘予定区域だと聞いた。
「ポイントBまでの距離は?」
「距離125km」
「ヘリを待機させてください。俺が現地へ飛びます。」
「指示は俺が出す!お前は引っ込んでろ!」
「サンタフェ白ゴジと接触。機関部をやられたようです。」
「くそ、ダメか……。ヘリの準備は?」
「準備できています。」
「折原同行しろ。」
「うっす。」
「勝手なことすんじゃねえ……。」
俺に掴みかかってきた艦長の腕をとって、今度は綺麗な一本背負いが決まった。
「通訳は必要ありません。行きましょう。」
サヤカに手を引かれて俺は艦橋を出た。
ドアを出たところでスタッフが追いかけてきた。
「これ、お願いできませんか?」
「カメラとマイク、大和語だけどいいの?」
「あとで字幕入れますから。」
その場で動作確認し相談した結果、俺がカメラでサヤカがマイクを装着することになった。
アメリア海軍のライブ放送が開始された。
「英語、話せたんだ。」
「日常会話程度ですけどね。」
俺は大和語だけど、サヤカは英語で話している。
俺には視界に字幕が表示されるので問題ない。
俺たちはヘリに乗り込んで白ゴジの元へ向かう。
時速300kmで20分あれば着く。
「じゃあ、シールドを起動しようか。」
「はい。”シールド”起動しました。」
お互いに相手の腕を叩いて効果が出ていることを確認する。
「やっぱり、万一ということもありますから、こういうチェックは相互でやった方が確実ですね。」
「そうだね。僕たちはアラビア半島から16時間フライとしてきて、少し前にアメリアに着いたばかり。時差ボケもあるから、慎重にいかないとね。」
「次はナビの魔方式を修正して、ファイヤの温度設定を5000度に変更。これは、さっき済ませてあるので確認だけしておきます。」
「今回の討伐はサヤカが行い、僕はサポートにまわります。緊張してる?」
「……やっぱり、ちょっと怖いかな。」
「じゃあ、皆さんのリクエストにお応えして、サービスショット!」
「ど、どこ見てるんですか!」
「待て、グーパンはやめろ。」
「どうせシールドで防御されるので効果ないんですよね。家に帰ったら報復します。3食抜きですね。」
「いや、ほら緊張を解すためじゃない。リラックスできたでしょ。」
「言い訳はききません。」
「前方に白ゴジです。」
「じゃ、僕たちは出るから、これくらいの距離を保って周回しててよ。ブレスにやられるといけないからさ。」
「了解!」
俺たちはヘリから飛び出して白ゴジに向かう。
ヤツは2隻目の艦を航行不能にして、船底に穴をあけたところのようだ。
海上へ浮上しても、航行不能の艦が横にいるため、強力な火器は使えない。
横へ回り込んでの機銃か小型のミサイルになる。
「ダメです!白ゴジに向かって直線的に突っ込むとブレスの的になってしまいます!
忠告が効いたのか、側面からの攻撃はそれきりだった。
「私たちが倒しますから、皆さんは離れていてください。」
俺たちの声が聞こえている訳ではない。
マイクを通してミニターしている司令部が無線で伝えているだけだ。
「じゃあ、いきますか。」
「はい。」
「最初にやることは、注意を俺たちにひきつけて、艦から引き離すこと。」
「はい。」
「目と鼻の穴と口は魔法耐性がないので、ヤツの正面に回って、大げさなアクションで凍らせてこちらを認識させる。」
「はい。やってみます。」
サヤカは白ゴジの鼻先に移動し、右手を振り上げて大声を出した。
「”ロック”そして”フリーズ”!」
凍った右目から泡が吹き出してしゅうふくしていく。
「少し、距離をとって!」
「はい。」
襲い掛かってきた右前足の攻撃を宙返りで回避するサヤカ。
「おお、後方伸身宙返りってやつ……。桜、俺ってフライトであんな動きできないよね?」
『ご主人さま。私たちAIはご主人さまの能力や行動によって学習していきます。』
「……AIの問題じゃなく、俺とサヤカの違いってことかな?」
『サヤカ様は、武芸の達人ですから。』
ブレスも瞬間的な移動で躱していく。
反応速度が、俺とは段違いなのだ。
移動のたびに、後ろで束ねた髪がフワッと浮いて揺れる。
なんか、カッコいい。
「これくらい離れればいいだろう。始末しよう。」
「はい” ”ロック””ファイヤー”!」
伸ばした右手と顔が、反射熱で赤く染まる。
「続けて。」
ロックとファイヤーを5回繰り返して頭が焼失した。
サヤカの息が荒い。
多分、魔力切れが近いのだろう。
俺は白ゴジを凍らせてからサヤカを抱いてヘリを呼んだ。
「冷凍倉庫の場所まで先導してくれるかな。俺はヤツを運ぶから。それから、彼女はただの魔力切れだから気にしなくていい。横になっていれば回復するから。」
サヤカの装着したマイクを通して伝わったのだろう。
パイロットはサムズアップして笑ってくれた。
LAの港まで白ゴジを押しながら飛ぶ俺の周りを、戦闘機やヘリが追い越しながら挨拶していく。
俺も笑顔で手を振ってやった。
ビーチと港には、とんでもない数のギャラリーが集まっていた。
そいつらにも手を振って応えてやる。
港の冷凍倉庫に白ゴジを収めたところで、一気に疲れが来た。
「頼む、どこでもいいから、眠れる場所へ連れて行ってくれ。」
サヤカは既に熟睡している。
上空で待機していたヘリに戻った俺はパイロットにもそう告げた。
ヘリの細かな振動が心地いい。
俺は、あっという間に眠りに落ちてしまった。
【あとがき】
サヤカさんの公開討伐。どうなるんでしょう。
「艦長のヘルナンデスだ。よく来た、適当に待機しててくれ。」
「折原氏に要望しましたが、休憩したり着替えたりできる部屋を確保してください。」
「そんなものは契約に入っていない。」
「契約?何のことですか?」
「空港でサインしただろう。」
「いえ。手荷物を受け取った直後、直接ヘリに案内されましたけど。」
「なにぃ!」
「あっ、艦長。空港に待機していた本部スタッフから連絡が入りました。真藤氏とは会えなかったと。」
「ぐぬぬ。まあいい。この艦に乗った以上、俺の指示に従ってもらう。」
「ふう。こちらの要望はまったく逆だ。白ゴジが現れた際には、俺の指示に従ってもらう。正確な情報がほしい。それまでは時差ぼけを解消するために休養できる部屋を用意してくれ。以上だ。」
「そんな要求、聞けるわけないだろう。」
「勘違いするな。俺に出動を頼んできたのは大統領だ。この程度の要求を聞けないというのなら、白ゴジ討伐の要求も拒否する。どちらにするかお前に選ばせてやる。」
「バカか。この海でお前の自由になるものなどあるわけがないだろう。指示に従わなければ海に放り出すぞ。」
「面白い。やってみろよ。」
「艦長、白ゴジがロングビーチの沖合250kmに現れました!」
「くそっ、休養もできねえのかよ。おい、折原。現在地と白ゴジの位置が分かるマップを表示させろ。」
折原がスタッフに指示をだしていると、艦長が割り込んできた。
「勝手なことをするんじゃねえ。お前は指示するまで引っ込んでいろ。」
「イージス艦「サンタフェ」が5kmの距離で攻撃を開始しました。空軍も戦闘機と攻撃用ヘリを向かわせているとのこと。」
「海軍本部から入電。空母「ライガー」よりF-35Bを向かわせたとのこと。作戦参加中の部隊は、至急サンタフェに合流せよ。以上です。」
「総舵手、ポイントBに全速力で向かえ。」
ポイントBは、戦闘予定区域だと聞いた。
「ポイントBまでの距離は?」
「距離125km」
「ヘリを待機させてください。俺が現地へ飛びます。」
「指示は俺が出す!お前は引っ込んでろ!」
「サンタフェ白ゴジと接触。機関部をやられたようです。」
「くそ、ダメか……。ヘリの準備は?」
「準備できています。」
「折原同行しろ。」
「うっす。」
「勝手なことすんじゃねえ……。」
俺に掴みかかってきた艦長の腕をとって、今度は綺麗な一本背負いが決まった。
「通訳は必要ありません。行きましょう。」
サヤカに手を引かれて俺は艦橋を出た。
ドアを出たところでスタッフが追いかけてきた。
「これ、お願いできませんか?」
「カメラとマイク、大和語だけどいいの?」
「あとで字幕入れますから。」
その場で動作確認し相談した結果、俺がカメラでサヤカがマイクを装着することになった。
アメリア海軍のライブ放送が開始された。
「英語、話せたんだ。」
「日常会話程度ですけどね。」
俺は大和語だけど、サヤカは英語で話している。
俺には視界に字幕が表示されるので問題ない。
俺たちはヘリに乗り込んで白ゴジの元へ向かう。
時速300kmで20分あれば着く。
「じゃあ、シールドを起動しようか。」
「はい。”シールド”起動しました。」
お互いに相手の腕を叩いて効果が出ていることを確認する。
「やっぱり、万一ということもありますから、こういうチェックは相互でやった方が確実ですね。」
「そうだね。僕たちはアラビア半島から16時間フライとしてきて、少し前にアメリアに着いたばかり。時差ボケもあるから、慎重にいかないとね。」
「次はナビの魔方式を修正して、ファイヤの温度設定を5000度に変更。これは、さっき済ませてあるので確認だけしておきます。」
「今回の討伐はサヤカが行い、僕はサポートにまわります。緊張してる?」
「……やっぱり、ちょっと怖いかな。」
「じゃあ、皆さんのリクエストにお応えして、サービスショット!」
「ど、どこ見てるんですか!」
「待て、グーパンはやめろ。」
「どうせシールドで防御されるので効果ないんですよね。家に帰ったら報復します。3食抜きですね。」
「いや、ほら緊張を解すためじゃない。リラックスできたでしょ。」
「言い訳はききません。」
「前方に白ゴジです。」
「じゃ、僕たちは出るから、これくらいの距離を保って周回しててよ。ブレスにやられるといけないからさ。」
「了解!」
俺たちはヘリから飛び出して白ゴジに向かう。
ヤツは2隻目の艦を航行不能にして、船底に穴をあけたところのようだ。
海上へ浮上しても、航行不能の艦が横にいるため、強力な火器は使えない。
横へ回り込んでの機銃か小型のミサイルになる。
「ダメです!白ゴジに向かって直線的に突っ込むとブレスの的になってしまいます!
忠告が効いたのか、側面からの攻撃はそれきりだった。
「私たちが倒しますから、皆さんは離れていてください。」
俺たちの声が聞こえている訳ではない。
マイクを通してミニターしている司令部が無線で伝えているだけだ。
「じゃあ、いきますか。」
「はい。」
「最初にやることは、注意を俺たちにひきつけて、艦から引き離すこと。」
「はい。」
「目と鼻の穴と口は魔法耐性がないので、ヤツの正面に回って、大げさなアクションで凍らせてこちらを認識させる。」
「はい。やってみます。」
サヤカは白ゴジの鼻先に移動し、右手を振り上げて大声を出した。
「”ロック”そして”フリーズ”!」
凍った右目から泡が吹き出してしゅうふくしていく。
「少し、距離をとって!」
「はい。」
襲い掛かってきた右前足の攻撃を宙返りで回避するサヤカ。
「おお、後方伸身宙返りってやつ……。桜、俺ってフライトであんな動きできないよね?」
『ご主人さま。私たちAIはご主人さまの能力や行動によって学習していきます。』
「……AIの問題じゃなく、俺とサヤカの違いってことかな?」
『サヤカ様は、武芸の達人ですから。』
ブレスも瞬間的な移動で躱していく。
反応速度が、俺とは段違いなのだ。
移動のたびに、後ろで束ねた髪がフワッと浮いて揺れる。
なんか、カッコいい。
「これくらい離れればいいだろう。始末しよう。」
「はい” ”ロック””ファイヤー”!」
伸ばした右手と顔が、反射熱で赤く染まる。
「続けて。」
ロックとファイヤーを5回繰り返して頭が焼失した。
サヤカの息が荒い。
多分、魔力切れが近いのだろう。
俺は白ゴジを凍らせてからサヤカを抱いてヘリを呼んだ。
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サヤカの装着したマイクを通して伝わったのだろう。
パイロットはサムズアップして笑ってくれた。
LAの港まで白ゴジを押しながら飛ぶ俺の周りを、戦闘機やヘリが追い越しながら挨拶していく。
俺も笑顔で手を振ってやった。
ビーチと港には、とんでもない数のギャラリーが集まっていた。
そいつらにも手を振って応えてやる。
港の冷凍倉庫に白ゴジを収めたところで、一気に疲れが来た。
「頼む、どこでもいいから、眠れる場所へ連れて行ってくれ。」
サヤカは既に熟睡している。
上空で待機していたヘリに戻った俺はパイロットにもそう告げた。
ヘリの細かな振動が心地いい。
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