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第二章 新しい町

クリーンの魔法と収納

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急いで家に帰って、荷物をまとめます。
明日の朝出発する定期馬車を予約し、食料を買い込みます。
荷物は、収納に入れられるので楽ちんです。

「お姉ちゃん、ホントに王都に行くの?」

「そうよ、商業ギルドで働けることになったの」

正面に座ったおじさんが話しかけてきました。
上品そうな身なりですが、目は笑っていません。

「ほう、失礼な言い方ですが、目がお悪いようですが、よく商業ギルドで雇ってもらえましたね」

「ええ、魔法である程度は分かるようになりましたので」

「引っ越しにしては、荷物がないようですが、別便で送られたのかな?」

「……、向こうで全部揃えますから、処分してきました」

「いやあ、私も王都で商いをしておりますので、これからお世話になりそうだ。よろしくお願いしますよ」

「そうだったんですか。こちらこそよろしくお願いいたします」



「すっげー、人がいっぱいいる!」

「お兄ちゃん、恥ずかしいから大声出さないで……」

「そうよ、アキトもアリアも、これからはここに住むんだからね。
さあ、家にいくわよ」



最初に商業ギルドによります。

「アキラさん、弟と妹を連れてきました。
今日から住みますので、よろしくお願いします」

「あら、来たのね。
じゃあ、出勤までに字の特訓よ。頑張って……
でも、荷物は?」

「あの、……内緒にしてくださいね」

「何を?」

「実は、収納があるんです」

「収納?」

「はい。この道具袋が特殊な袋で、なんでも入っちゃうんです」

「えっ?それ……」

「はい」

「ちょっと待って、これから部屋に行くのよね」

「はい」

「どんな感じなのか、見せてもらっていいかな」

『信頼できそうな人間には、知っておいてもらったほうがいいだろう』

「はい、大丈夫です」



部屋のカギを開けて中に入ります。

「ちょっと待ってくださいね『クリーン!』」

キラキラキラーン☆彡♪

「えっ?」

「これくらいの広さなら私でもできますから」

「えっ、き、きれいになってる」

「隣の部屋もやっちゃいますから」

「ま、待って……、クリーンって、自分の体とか、着ている服には使うけど、普通は部屋をきれいにするなんて……聞いたことないわ……」

「えっ、そうなんですか?」

『俺は知らないぞ……』

「でも、姉ちゃんは毎日やってた」

「わかった。所長に相談してみるけど、この魔法だけで本採用の価値はありそうね。
汚れがひどくてもできる?」

「今までは、見えていなかったんです。
だから、やってみないと……」

「わかった。で、収納って……」

「じゃあ、テーブルから出します」

ドン

「エッ?
えっ、なんで……、どこから……」

「ボロで恥ずかしいんですけど、衣類です」

ドサッ

「食器です」

ガチャッ ガチャッ ガチャッ ガチャッ

「パンです」

カサッ

「ミルクです」

ドン

「こ、これって、どれくらい入るの?」

『まだ、限界まで試したことはないが、この3倍くらいかな』

「試してないんですけど、この3倍くらいは……」

「重たくならないの?」

「普通に持てますから……」

「その袋があれば、馬車なんて要らないじゃない。
とんでもない重量物だって運べるわ」

「公になっちゃうと、トラブルの元ですから、内緒でお願いします」

「そうね。でも所長には言っておいた方がいいわね。
秘密にするから、ギルドが困ったときには力を貸してくれると助かる」

「じゃあ、二人で秘密にしてくださいね」



「いったい、どうしたってんだよ。
こんな空き部屋に連れてきて」

「ええ、一週間ぶりですから、多少ホコリとか蜘蛛の巣とか虫の死骸とかありますよね。
見えますよね、所長」

「ああ、何がいいたい。これを掃除するんだから人を増やせとかいうつもりか」

「アミ、全部屋を一気にできる?」

「やってみます『クリーン!』」

キラキラキラーン☆彡♪

「なにっ!どういう事だ!」

「今までは、世間の標準的なクリーンを知らないでいたらしいんですが、掃除専門の仕事としても食べていけるんじゃないでしょうか」

「どれくらいの汚れまで対応できる?馬車とか立体的なものでもできるのか?」

「それは、これから検証ですね。
本採用でいいですよね」

「当たり前だろうが!他所にとられる前に確保だ。
今のところ、給料は金貨5枚だ。汚れの程度や状況で増額する」
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