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第二章 国交
鉄道
しおりを挟む同時刻、洋上のクルーザー船では…
「こんなところまで来て、スナップ写真一枚撮れないんじゃあ、デスクに何言われるかわかんねえぞ」
「やはり、ゴムボートで上陸するしか……」
「誰だよ、排他的経済水域なんて決めた奴は!
世界中のセレブの、更にトップしかアクセスできない島なんだぞ。
例のPVに出てきた人魚は何なのか!クジラの餌付けは事実なのか!
取材拒否、入島不可。ドローンも操縦不能。船も入れない」
「先輩、船が故障したとSOSを入れてはどうでしょう」
「おお、ナイスアイデアだ!」
『S.O.S、船故障、自力走行できず。応援を請う……』
『遠隔で誘導します。最寄りの港まで……』
「せんぱい、船が勝手に動いてます……」
「本当に、外部から監視されない環境を作るとはな」
「ええ、そこは自信を持っております。
ですが、軍部を動かして確認されるとは思いませんでしたわ」
「残っているのは5軒だったか……」
「ええ、あっ、こことここは決定しました。残り3軒です」
「分かった!ここにする。
メイドゴーレムとやらを2人つけてくれ」
「ありがとうございます」
「そんな孤島で、生活に不便はないのかね」
「ネットで購入できるものは全て対応しておりますし、アラソンと提携しておりますので、ご不便は無いと思います。
ただ、クラブとかシアターのようなものはございませんので、娯楽目的にはふむきでございます。
その代わり、釣りでもなんでも、マリンスポーツは充実しております」
「まあ、残り少ない時間を、婆さんと二人で過ごすだけだよ。読書ができて、世界の喧騒から開場された場所なら最高だね」
「でしたら、最適でございます。
私ども、メイドゴーレムには余計な気遣いは必要ありませんし、喋るなと言われれば許可のあるまで黙っております」
「それで、料理や洗濯など、すべて賄ってくれるというのか」
「付き添いが必要であれば、何がありましてもお守りいたします。
必要な家事は夜中にいたしますので、ご満足いただけると思いますよ」
「ああ、契約させてもらおうかな」
「はい、ありがとうございます」
「なんだよこれ!相続以外で転売不可って!
それで10億ってボッタクリじゃねえか」
「どうしてもという事で、ご案内に伺いましたが、やはりお客様には不向きの物件ですよね」
「なに!」
「滑走路や島の購入。プライバシーの確保など条件の整備にどれだけの資金が必要かお判りになっていないですよね。
現代社会で、ここまでプライベートな空間はございませんし、このサービスはそれを必要とされる方に向けたものでございます。
投機目的や他の方のプライバシーを侵害しそうなお客さまにはご遠慮いただいておりますので」
「こんな条件で10憶も払う人間がそういるもんかよ」
「あっ、今79棟目が契約されました。
では、これで失礼させていただきます」
「待てよ。滞在型なら、誰でも宿泊できるんだろ」
「いえ、マスコミ系の方はご遠慮いただいておりますし、現地の情報をリークしそうな方はお断りしております。
ではこれにて」
「俺は映画を撮りたいだけだ」
「当方には必要ございませんので」
「ねえ、私みたいに独り身で、残りの人生をゆっくり過ごしたいって場合も同じ条件なの?」
「例えば、滞在型で30年過ごされますと同じ金額になります。
どちらを選ぶかは、お客様次第です」
「完全な空間を求めるなら買えってことよね。
ねえ、メイドゴーレムって話し相手になってくれるのかしら」
「私と同じ性能でございますから、ご自身で判断してくださいね」
「不備があった場合には全額返却ね。だけど、こんな契約をする人ってのも興味あるわよね」
「契約者の個人情報は、一切他言いたしません」
「いいわ、契約する。メイドさんは一人お願いよ」
「ありがとうございます」
こうして、チロル島リゾートは完売した。
世間の喧騒を逃れたい人や、余生をゆっくり過ごしたい人。
理由はさまざまである。
約半分の屋敷には人が住み、ガーデニングや散歩に出る人。マリーンスポーツを楽しむ人など、思い思いの生活を楽しんでいる。
庭でご近所さん同士バーベキューを楽しんだり、自分で釣ってきた魚を料理したりする。
俺も、時々は城の最上階でリズたちと食事したりしているし、世界的に有名な小説家のおっちゃんとエロ話をしながら酒を飲むこともある。
こんなところの生活が、人生の最終目標ってのもいいんじゃないかと思っている。
完結です。
お付き合いいただきありがとうございました。
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