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第二章 国交

賠償

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そのころ、カノンがソートランドの城に到着した。

「何者だ!」

「チロル国王の代理でまいりました。
国王に取り次いでくださいませ」

「そのような知らせは受けていない」

「当然ですわ。奇襲された国が、前触れなど出すと思いますか?」

「少し待て、今総務担当に問い合わせる」

「分かりました、3分待ちます」

「ふん、おい、確認にいけ」

「はっ」

…………

「3分経ちました。回答は?」

「まだ使いが戻っていない」

「では、勝手に通ります」

「なに……」

「眠っていただくだけですからご心配なく。
さあ、みなさんもお休みください」

 バタバタバタ

 メイド服姿のカノンの歩みにあわせて、兵士がパタパタと倒れていく。

「何事だ……」

「国王様ですか?」

「……」

「無言は肯定と受け取ります。
チロル国王の代理でまいりましたカノンと申します」

 チロルがカーテシーで挨拶する。

「……チロルだと」

「はい、此度の侵略に対し賠償を請求にまいりました」

 背後から襲い掛かろうとした騎士が肩を氷で貫かれて悶絶する。

「侵略ではない、正当なる戦だ……」

「第二王子も拘束し、宣戦布告の文書は押さえました。
これは明確な侵略行為です」

「だから何だというのだ……」

「侵略部隊は壊滅。捕虜300数十名。第二王子と婚約者は拘束してあります」

「ま、負けたというのか……、いや虚言だ、まだ戦闘開始から一時間も経っていない」

「こちらが、交戦規程に基づいた反則金の請求です。
捕虜の価値については確認中です」

「き、金貨2万枚だと!」

 収納から証拠品を取り出す。

「こちらが第二王子の佩いていた剣と、婚約者の鎧。および衣類一式になります。
ご確認くださいませ」

 貴族らしいのが一人駆け寄ってくる。

「ああ、間違いなくフランソワーズの鎧、家紋入りの下履きも……
おのれ、貴族を辱めるなど交戦規程違反ではないか!」

「奇襲である以上、交戦規程は適用されません」

「うっ……、それで、娘は無事なのか」

「それは、そちらの回答次第です」

「だが、金貨2万枚など……」

「拒否された場合、捕虜の皆さんは奴隷ですね。
そのうえで、城だけを攻め落とし、貴族王族は処刑。
チロル国の属国になっていただきます」

「バカな、そのような事が許されるはずもない」

「誰が許さないのでしょうか?
本日の模擬戦で周辺国はチロルの実力を知ってくださいましたし、わが主地竜様のほかサワタリ様もご照覧いただいております」

「ち、地竜……」

「サ、サワタリ様まで顕現しておられるのか……」

「わ、わかった、金貨2万枚を支払う」

「ありがとうございます。では、捕虜解放の交渉に移りましょう。
第二王子と婚約者解放に金貨1000枚。捕虜1名につき金貨50枚。合計で金貨1万6千枚になります」

「む、無理だ、国の予算ではとても……」

「王家と貴族の資産を合わせれば、十分支払い可能ですよね」

「ううっ……」

「そこまでだ!国王に対する狼藉は許さん!」

「あらあら、時間稼ぎしてたんですね」

「当然だ!チロルに払う金などないわ!」

「こ、国王、それでは娘が!」

「お前の娘に金貨3万6千枚の価値があると思うのか!
兵団長、やれ!」

 ジャキン!

「あらあら、騎士30名と魔法師10名ですか、その程度で何をされるつもりでしょう」

「問答無用!」
カン!カン!カン!

「物理障壁か!魔法師!」

ファイア! フローズン! スリープ!  エアカッター!

ギャン! ギャン! ギャン!

「おのれ、魔法障壁まで、ひるむな続けるんだ!」
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