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第二章 国交
人間の間ではでしょ
しおりを挟む「今、この筒には安全機構がありませんので、今の魔法は全部消しておきます」
「「「えー! 」」」
「魔法を使った三人は、魔力の消費はどうですか?」
「風を出した時と同じくらい……かな」
「ああ、でも爽快感みたいなのがあって、消費した感じはねえよ」
「同じです」
「魔法が得意ではない三人が、ノルンさんと同じだけの効果をあげました。
これが魔道具の基本です。
カベオさん、氷を作ったことはありますか?」
「いや、初めて……」
「ジュリさん、火魔法は得意ですか?」
「使えないことはないけど、指先に灯す程度なら」
「このように、得意とか苦手とかに関係なく、魔力さえあれば魔法が使えてしまうのも魔道具の特徴ですね。
逆に言えば、書き込んである事しかできません。ノルンさんのように、状況に応じて魔法を使い分けることはできないんです。
如何でしょう、魔道具というものがどういうものなのかご理解いただけたでしょうか」
パチパチパチと拍手で肯定されます。
「先生!質問があります」
「はい、トルーさんでしたね。何でしょう」
「先ほど、先生はミスリルの筒を指で撫でていましたが、あの一瞬で魔法の書き込みを行ったんですか?」
「えーと、あれは分かり易くイメージしていただくためにやりました。
別に触れていなくても書き込みは可能です」
そういうと、ミクルはミスリルを板状に戻し、少し離して床に並べた。
「硬化、床から20cm上昇して静止」 ミクルは左足をミスリルの板に載せます。
「硬化、床から40cm上昇して静止」 ミクルは右足をミスリルの板に載せます。
「硬化、床から60cm上昇して静止」 ミクルは左足をミスリルの板に載せます。
「えっと、下にはドロワーズを履いていますので、覗いても無駄ですよ。カベオさん」
「いや、お約束っしょ!」 爆笑
「ですから、実際に魔道具として使うときには、第三者から書き換えされないようにガードをかける必要があります。
そして、静止を解除して移動」
ミクルは20cmの板に片足で立ち、ドアまで往復する。
「例えば、足の悪い人に、移動可能な椅子の魔道具を作ったり、外壁工事の職人さんの足場を作るなんていう魔道具も作ることができます」
「先生、私たちでも、本当にそんなことができるようになるんですか?」
「だって、みなさん、魔法技師になりたくて集まったんでしょ」
「だが、そんな空中を浮遊する魔法なんぞ存在しておらんぞ」
「ニ・ン・ゲ・ンの間では、でしょ。ドラゴンはあの巨体で空を飛びますし、地竜であられるラン様は、大地を自由に操り、水竜であられるシズク様は水を自在に操ります。
十分な魔力量があって、理屈さえ分かっていれば世界の事象は再現可能だとお考え下さい」
「そんな事ができるなら、この世界を征服することすら可能ではないのか。
さっきのミスリルの武器が1000本いや、100本あれば戦争で負けることすらないだろう」
「えっと、勘違いされているようですが……、人間は魔力を享受する立場としては最下層の存在です」
「最下層だと」
「ええ、魔力とはサワタり様とマオ様によって世界に散布されています。
五竜の皆様はそのサポート役で、私はそのお手伝いにすぎません。
今、この世界はサワタり様が留まっておられるために、魔力に溢れておりますが、その幸運に感謝すべきところ。
戦争のような無益なことで魔力を無駄に消費しようなどというのは、看過できるものではありません」
「だ、だが、攻められれば応戦しない訳にはいくまい」
「この国は、サワタリ様と縁を持つことができました。
サワタリ様の意に添わぬことが起こった場合、指示があれば私達が全力で阻止いたします。
でも、今は五竜のお姉さま方が揃っておられますから、私の出番があるとは思えませんけどね」
「ご、五竜が揃っているなど、聞いたこともないぞ」
「確かに、久しぶりの事だと言われていましたわね」
「お前達はそれほどの存在だというのか」
「私はただのお手伝いですって。
とりあえず、この国を発展させるために、魔道具を普及させるだけ。
やっと、本題に戻りましたね。
さて、前置きが長くなりましたが、魔道具を製作できる人間を育てるために、試験を開始いたします」
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