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ランのアプリ
悪い顔
しおりを挟むヘルプには、秘守についての項目はない。
そこらへんをランちゃんに問い合わせたところ、各自の裁量に任せるとの回答。
問題が起きた場合は、全員の関連記憶消去だといわれた。
ただし、授業免除はない。
夕方まで、部屋でも使えるアプリをチェックした。
『変身』 『ミラーアイ』 『クリーン』の3アプリだ。
『変身』は、指定した対象に変身可能なアプリだ。
標準で一般的な動物や鳥に変身できる。
しかも、スマホで写真を撮れば任意の人物に変身可能な優れものなのだが、起動コマンドが音声式になっており「テクマクマヤトン○○さんになぁれ」は改善希望だ。
派手なエフェクトも要らないし、一旦下着姿にされるのはご容赦願いたい。女子限定の機能とする事が望ましい。
『ミラーアイ』は、鏡越しに任意の鏡の映像を見る事ができるアプリだ。
夢のようなアプリだが、音声は聞こえず使い道の難しいアプリと言える。
鏡のある場所というと、浴室やプライベート空間が多く、欲望を抑えるのに苦労しそうだ。
起動には、音声コマンドで「鏡よ鏡よ鏡さん~……」長い……。
ドンペリルームとかの子供向け番組で、ケロヨンとか言うオバさんがやっていたらしいが。
『クリーン』は素晴らしい。
身体や衣類だけでなく、カメラを起動すればタップだけで綺麗になる。風呂要らずで、キャンプなどに便利かな。
ただ、身体をキレイにするにはやはり音声コマンドで「マハリク・マハリタ・ヤンバルクイナ~ ♪」と一小節を歌う必要がある。
○門裂男先輩の歌った替え歌メドレイのだ。
余談だが、クイナという鳥は、何であんなに顔色が悪いのだろうか……あれは、ゾンビの顔色だ。
18時にモモがやってきて全員集合だ。
「ごめんちょ。
生徒会の打ち合わせが長引いちゃって」
”ごめんちょ”とは、ごめん委員長の省略形だ。
委員長とは俺の事で、まあ、今回の事でお役ご免だろう。
「いや、急な事だったし……
っていうか、俺 呼んでねえよ。
集合かけたのは犬養だよな」
「僕は音頭をとっただけで、直接の原因はサルなんだから進行よろ」
「まあ、しょうがねえか……
最初に言っておくが、授業免除は俺だけだ。
そこは確認してある。
その理由については、俺の責任において話しても構わないとの言質はとった」
「私の授業免除が……」
「ここ重要なポイントだから、茶化さないでくれ。
話を聞いてしまったら後戻りはできない。
最悪、問題になれば記憶操作を受けて関連事項は全て忘れる。
当然、記憶操作なんてどんな弊害があるかわかんないよ。
そのリスクを承知するなら話す。
イヤなら、聞かずに帰ってくれ。
どうする?」
「メリットは?」
「退屈な人生とはお別れできる。
先がどうなるかは分からないが、俺は半日でこれまでの常識ってやつが覆った」
「一つだけ教えて。
例のアプリ関連なの?」
「モモが他に思いつかなければそういう事だ」
「乗った。
あのランキングアプリって半端ないもん。
あの情報を元に株で……
お年玉が100倍になったわ」
「俺もだ。
あのアプリを解析したが、文字通りクラウド……雲の中だよ。
全然追えない。
あの先を見せてくれるなら、リスクなんて問題ない」
「僕は……」 チャラリラリーン♪
鳥居が何か言おうとしたところで、スマホの呼び出し音がなり、ランちゃんの姿が立体投影された。
『フィー! サル君にイエローカードよ』
「なんで?」
『スマホが警戒の赤点滅を示しているのに気付かなかったでしょ。
鳥居君は何らかの精神的束縛を受けているわ。
それに気付かず、ここまで接近を許してしまった事。
イエローカード3枚でスマホ没収よ』
「うーん……
スマホのアラームには気付いていた。
鳥居の異常にも気付いていて、実は泳がせていたって信じてもらえませんか?」
『なっ……』
「そうだね。
鳥居君の左手にある五芒星がそのままだったから、また何か悪だくみしてるなって思っていたわ」
「はあ、もう少しで逆探知できそうだったんだけど……
『六根清浄 急急如律令』
悪しき心はヒト型に留まれ」
『こっ……、この世界に魔法は存在しないはず……』
「そうですね。
魔力が存在しないので、代わりに神様の力や地脈を使う方法がごく一部で研鑽されてきました。
それが陰陽師や僕たち呪禁師です」
「という訳で、ランちゃんさんにイエローカードですわね」
勝ち誇ったようにモモが宣言した。
モモ……悪い顔になってるぞ……
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