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第二章
第36話 東の町ネグダ
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「ススム様、イナゴさんを100匹ほどお貸しいただけませんか?」
アリスから突然の頼み事だった。
「アルトで何かあったの?」
「先日留学を解除した貴族の息子を覚えていますか?」
「ああ、フランダースのネコとかいう名前の。」
「フランドル家のネロですわ。その父親であるフランドル子爵が不穏な動きを見せており、調べたところヤード王国と内通していることが分かりました。」
「ヤード王国って、ハルが何年か前に戦ったという国だよね。」
「はい。ヤマトと同じような島国なのですが、造船技術に長けており、強力な軍事国家となっております。」
「うん。大砲を搭載した軍艦が50隻くらいあるって、アンズさんから聞いてるよ。」
「そのヤード王国が、アルトの南に隣接するフラン帝国と軍事協定を結んだと、情報が入ってきました。」
「うん。きな臭くなってきたよね。」
「フランドル家は、過去にフラン帝国から王子を迎えており、その王子が隠居しているものの存命なのです。」
「ふーん。フラン帝国とヤード王国。それにフランドル家が繋がったわけだね。」
「はい。しかも両国に戦争の準備を始めたような兆候が見られますので……。」
「メイドさん、イナゴさん100匹に、アリスの指示を聞くよう変更できるかな。」
「はい。マスターであるススム様から命令して、アリス様をサブマスターとして認証させれば大丈夫です。」
バッグからイナゴさん100匹を取り出してアリスを認証させて貸し出した。
ザワザワと蠢くイナゴさんに、腰がひけていたのは黙っておこう。
「増員が必要なら、メイドさんに言ってよね。」
「はい。ありがとうございます。」
「アリスもすっかり王妃様になったね。」
「こんな未来は、想像していませんでしたわ。」
「お互いにね。俺の方でもフランとヤードを調べておくから、何か分かったら連絡するよ。」
「よろしくお願いします。」
さて、諜報活動か。どうするかな。
最初に考えたのは忍者だ。
名前はシノブで聴力と体術に長けた……と思ったのだが、人間サイズが潜入してたら絶対に見つかる。
それならば、集音に長けていて、目がレンズになっている……、そうだ手のひらサイズの黒いスライムがいいな。
情報は全部、親スライムに送る。親スラは30cmくらいの大福型で、目から投影できるプロジェクター機能搭載。
翌日、俺はスライム君セットを掘り出した。
子スラは300体入っている。
早速、アンズさんの元に転送し、そのエリアの最高権力者の監視にあたらせる。
集まった情報をどうするか。
FBI、MI-6、モサド、内閣諜報室、そういった情報収集のほかに、経済戦略や政治について検討してくれる頭脳集団が必要だ。
翌日掘り出した木箱には、スーツ姿の人型ゴーレム、半蔵君が10体入っていた。
眼鏡標準装備の178cm。黒髪・黒瞳の切れ者といったイメージだ。
半蔵君には、俺の代わりに交渉事も担当してもらおう。
数日後、半蔵君から報告があった。
「フランとヤードですが、10日後にアルトへ同時侵攻するようです。」
「10日後か、アリスには?」
「メイドさんを通じて情報提供済みです。」
「戦力は?」
「フランが地上部隊で5万人の軍勢。ヤードは軍艦30隻で約3万人規模となっています。」
「宣戦布告は?」
「2日前に、両国がタイミングを合わせて行う計画です。」
「フランドル家は?」
「東部の町、ネグダの領主と結託し、私兵を使って東部から王都に侵攻予定です。」
「海と南に戦力を集めて、手薄になった東から王都殲滅か。計画通りに進めばアルト壊滅もありうる戦略だな。」
「はい。ネグダの戦力がおよそ5000ですから、普通であれば効果的な戦略と思います。」
俺はアルとハルとアリスを呼んだ。
「誰かに聞かれるといけないからな。ここが一番安心だ。」
「うむ。フランとヤードの件だな。」
「ああ、これが全体図だ。」
「ほう、新しい魔道具か。絵を壁に写せるとは便利だな。」
「ヤードの戦力が軍艦30隻に兵士3万人。」
「おい!何だ、この絵は!」
「ヤードで準備が進んでいるところを、鳥の視点で見たものだ。」
「「「……」」」
「こっちは、フランの軍勢が国境方面に移動している様子だ。戦力はおよそ5万人。」
「絵ではないのか……。」
「ああ。見たものを記録する魔道具を作った。」
「針穴を通して、壁に外の景色を移すアレの応用か……。」
「よく知ってるな。その通りだよ。で、これがネグダの様子だ。」
「ネグダ?」
「何でネグダが戦の準備を?」
「ネグダはフランドル家と組んでフラン側に寝返った。これが、ネグダに滞在中のフランドル家当主と領主の会話だ。」
二人の口から、侵略開始日と、予想される王都の兵力が語られる。
「なあ、これって、誰かが忍び込んでいるんだよな……。」
「安心しろ、お前の寝室なんて覗いてないから。」
「……。でも、やろうと思えば……。」
「まあ、できないことはないな。ほら、これが記録するスライム君だ。」
俺は、掌に乗せたスライム君を見せてやった。
「それを見かけたら、ススムに監視されているって事か。」
「ススム。万一、私の入浴や着替えの時に見かけたら……。」
「しねえよ。」
「話を戻すぞ。ネグダを含めた全体図がこうなる。」
「俺は海岸線でヤードを迎え撃つつもりでいたが……。」
「これじゃあ、私もどこに対応したらいいのか……」
「まあ、最終手段は、メイドさんを配置して、重力魔法で叩き潰す。」
「確かにメイドさんが3人いれば終わりそうね。」
「侵略開始後にイナゴさんを一万匹づつ向かわせてもいいけどな。」
「シールドアクセサリーを装備した兵士が、どれだけ無双できるか見たい気もするが……。」
「言っておくが、単なる殺戮だからな、それ。」
「じゃあ、兵士による、敵の対象捕獲競争ならどうだ。むろん素手だ。」
「向こうの兵士だって命がけで来るんだ。茶化すのはやめとけ。」
「すまん。」
「じゃあ、海岸線には第5中隊に対応させる。軍艦5隻を配置して、敵の砲撃にあわせてイナゴさん一万匹を投入。」
「メイドさんを一人貼り付けて対応させよう。」
「フラン側は、国境線にバリケードを設置して第2中隊を配置。敵の攻撃を受けた後にイナゴさん一万匹を投入。」
「ここにもメイドさん一人配置だな。」
「王都にはアルと隊長が残って、フランドル家人の捕獲だな。」
「王都は勝手にやってくれ。」
「ネグダからの侵攻は第1中隊が対応。何かあったらアルが対応してくれ。俺は第45小隊を連れてネグダに側面から回り込む。」
「そっちにもメイドさんを一人配置しよう。」
「なあ、明後日分隊長会議を開くんだが、メイドさんにも同席してもらえないか?」
「……、盗聴対策か。」
「ああ、頼む。」
宣戦布告の当日、俺はアルト王国の王都で、ネグダの住民を捕えていた。
鑑定メガネがあれば簡単に確認できるし、サーチで洗い出すことも可能だ。
メイドさんも20人投入し、町の中に紛れている兵士をチェック・捕獲して収容所に転送する。
収容所で武装解除したうえで仮設収容所に送るのだ。
「それにしても多いな。」
「ああ、これだけの人数が、街の中で暴れだしたら、手に負えないところだったな。」
外から突撃してくる兵士とは別に、町の中で騒動を起こす計画は事前に分かっていたのだ。
計画では、フランドル家に50人。町中に150人の兵士が潜んでいるのだ。
【あとがき】
開戦前夜です。
アリスから突然の頼み事だった。
「アルトで何かあったの?」
「先日留学を解除した貴族の息子を覚えていますか?」
「ああ、フランダースのネコとかいう名前の。」
「フランドル家のネロですわ。その父親であるフランドル子爵が不穏な動きを見せており、調べたところヤード王国と内通していることが分かりました。」
「ヤード王国って、ハルが何年か前に戦ったという国だよね。」
「はい。ヤマトと同じような島国なのですが、造船技術に長けており、強力な軍事国家となっております。」
「うん。大砲を搭載した軍艦が50隻くらいあるって、アンズさんから聞いてるよ。」
「そのヤード王国が、アルトの南に隣接するフラン帝国と軍事協定を結んだと、情報が入ってきました。」
「うん。きな臭くなってきたよね。」
「フランドル家は、過去にフラン帝国から王子を迎えており、その王子が隠居しているものの存命なのです。」
「ふーん。フラン帝国とヤード王国。それにフランドル家が繋がったわけだね。」
「はい。しかも両国に戦争の準備を始めたような兆候が見られますので……。」
「メイドさん、イナゴさん100匹に、アリスの指示を聞くよう変更できるかな。」
「はい。マスターであるススム様から命令して、アリス様をサブマスターとして認証させれば大丈夫です。」
バッグからイナゴさん100匹を取り出してアリスを認証させて貸し出した。
ザワザワと蠢くイナゴさんに、腰がひけていたのは黙っておこう。
「増員が必要なら、メイドさんに言ってよね。」
「はい。ありがとうございます。」
「アリスもすっかり王妃様になったね。」
「こんな未来は、想像していませんでしたわ。」
「お互いにね。俺の方でもフランとヤードを調べておくから、何か分かったら連絡するよ。」
「よろしくお願いします。」
さて、諜報活動か。どうするかな。
最初に考えたのは忍者だ。
名前はシノブで聴力と体術に長けた……と思ったのだが、人間サイズが潜入してたら絶対に見つかる。
それならば、集音に長けていて、目がレンズになっている……、そうだ手のひらサイズの黒いスライムがいいな。
情報は全部、親スライムに送る。親スラは30cmくらいの大福型で、目から投影できるプロジェクター機能搭載。
翌日、俺はスライム君セットを掘り出した。
子スラは300体入っている。
早速、アンズさんの元に転送し、そのエリアの最高権力者の監視にあたらせる。
集まった情報をどうするか。
FBI、MI-6、モサド、内閣諜報室、そういった情報収集のほかに、経済戦略や政治について検討してくれる頭脳集団が必要だ。
翌日掘り出した木箱には、スーツ姿の人型ゴーレム、半蔵君が10体入っていた。
眼鏡標準装備の178cm。黒髪・黒瞳の切れ者といったイメージだ。
半蔵君には、俺の代わりに交渉事も担当してもらおう。
数日後、半蔵君から報告があった。
「フランとヤードですが、10日後にアルトへ同時侵攻するようです。」
「10日後か、アリスには?」
「メイドさんを通じて情報提供済みです。」
「戦力は?」
「フランが地上部隊で5万人の軍勢。ヤードは軍艦30隻で約3万人規模となっています。」
「宣戦布告は?」
「2日前に、両国がタイミングを合わせて行う計画です。」
「フランドル家は?」
「東部の町、ネグダの領主と結託し、私兵を使って東部から王都に侵攻予定です。」
「海と南に戦力を集めて、手薄になった東から王都殲滅か。計画通りに進めばアルト壊滅もありうる戦略だな。」
「はい。ネグダの戦力がおよそ5000ですから、普通であれば効果的な戦略と思います。」
俺はアルとハルとアリスを呼んだ。
「誰かに聞かれるといけないからな。ここが一番安心だ。」
「うむ。フランとヤードの件だな。」
「ああ、これが全体図だ。」
「ほう、新しい魔道具か。絵を壁に写せるとは便利だな。」
「ヤードの戦力が軍艦30隻に兵士3万人。」
「おい!何だ、この絵は!」
「ヤードで準備が進んでいるところを、鳥の視点で見たものだ。」
「「「……」」」
「こっちは、フランの軍勢が国境方面に移動している様子だ。戦力はおよそ5万人。」
「絵ではないのか……。」
「ああ。見たものを記録する魔道具を作った。」
「針穴を通して、壁に外の景色を移すアレの応用か……。」
「よく知ってるな。その通りだよ。で、これがネグダの様子だ。」
「ネグダ?」
「何でネグダが戦の準備を?」
「ネグダはフランドル家と組んでフラン側に寝返った。これが、ネグダに滞在中のフランドル家当主と領主の会話だ。」
二人の口から、侵略開始日と、予想される王都の兵力が語られる。
「なあ、これって、誰かが忍び込んでいるんだよな……。」
「安心しろ、お前の寝室なんて覗いてないから。」
「……。でも、やろうと思えば……。」
「まあ、できないことはないな。ほら、これが記録するスライム君だ。」
俺は、掌に乗せたスライム君を見せてやった。
「それを見かけたら、ススムに監視されているって事か。」
「ススム。万一、私の入浴や着替えの時に見かけたら……。」
「しねえよ。」
「話を戻すぞ。ネグダを含めた全体図がこうなる。」
「俺は海岸線でヤードを迎え撃つつもりでいたが……。」
「これじゃあ、私もどこに対応したらいいのか……」
「まあ、最終手段は、メイドさんを配置して、重力魔法で叩き潰す。」
「確かにメイドさんが3人いれば終わりそうね。」
「侵略開始後にイナゴさんを一万匹づつ向かわせてもいいけどな。」
「シールドアクセサリーを装備した兵士が、どれだけ無双できるか見たい気もするが……。」
「言っておくが、単なる殺戮だからな、それ。」
「じゃあ、兵士による、敵の対象捕獲競争ならどうだ。むろん素手だ。」
「向こうの兵士だって命がけで来るんだ。茶化すのはやめとけ。」
「すまん。」
「じゃあ、海岸線には第5中隊に対応させる。軍艦5隻を配置して、敵の砲撃にあわせてイナゴさん一万匹を投入。」
「メイドさんを一人貼り付けて対応させよう。」
「フラン側は、国境線にバリケードを設置して第2中隊を配置。敵の攻撃を受けた後にイナゴさん一万匹を投入。」
「ここにもメイドさん一人配置だな。」
「王都にはアルと隊長が残って、フランドル家人の捕獲だな。」
「王都は勝手にやってくれ。」
「ネグダからの侵攻は第1中隊が対応。何かあったらアルが対応してくれ。俺は第45小隊を連れてネグダに側面から回り込む。」
「そっちにもメイドさんを一人配置しよう。」
「なあ、明後日分隊長会議を開くんだが、メイドさんにも同席してもらえないか?」
「……、盗聴対策か。」
「ああ、頼む。」
宣戦布告の当日、俺はアルト王国の王都で、ネグダの住民を捕えていた。
鑑定メガネがあれば簡単に確認できるし、サーチで洗い出すことも可能だ。
メイドさんも20人投入し、町の中に紛れている兵士をチェック・捕獲して収容所に転送する。
収容所で武装解除したうえで仮設収容所に送るのだ。
「それにしても多いな。」
「ああ、これだけの人数が、街の中で暴れだしたら、手に負えないところだったな。」
外から突撃してくる兵士とは別に、町の中で騒動を起こす計画は事前に分かっていたのだ。
計画では、フランドル家に50人。町中に150人の兵士が潜んでいるのだ。
【あとがき】
開戦前夜です。
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