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第二章
第35話 竜島
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竜島ダンジョンの地下2階は飛行タイプのドラゴンエリアで、天井までの高さを50mにしてある。
棲家についても、山を適度に配置した独特のつくりである。
飛行系ドラゴンの中でも、ワイバーンの肉は美味といわれており、期待できるエリアでもある。
そして、地下3階である。ここは中央に湖を配置し、周辺は草原となっている。
ここには、淡水系ドラゴンのタキヒメやミナギ。大型草食タイプのブロンズドラゴンやタイロンなどが生まれるだろう。
最下層の地下4階はジャングルと渓谷の複合エリアだ。
おそらく、ティラノレックスやラプトドラゴンなどが跋扈するエリアになると予測される。
ドラゴンは、肉だけでなく皮や被膜が貴重な革加工品の素材になり、牙や角は魔道具の素材や、工芸品やアクセサリーに活用される。
内臓は薬に使用され、眼球以外は余すところなく活用できるらしい。
当然、ハンターには危険が伴うため、討伐は猟師さんに任せることになる。
そして2か月後、育ったドラゴンの産卵が始まり、増殖のきざしが見えてきた。
「ススム様。猟師さんから報告があり、次の世代として種から孵化した幼体が捕食されてしまい、生存率が3%程度だと判明いたしました。」
「じゃあ、地上部分にふ化施設を作って、大きくなってからダンジョンに送るようにしようか。」
ところが、20cmほどになると、狭いふ化施設では飼育できなくなり、もう少し大きくなるまで屋外で放し飼いにすることにした。
ダンジョンに送る目安は1mだ。
この孵化からダンジョンに送るまでの世話役を新設し、飼育員さんと名付けた。
この幼体の餌には、肉として使えない魔物の腱や内臓、魚などを活用しているため、一石二鳥だった。
2か月も経った頃、地上部で監視から漏れた個体が産卵するケースも出てきた。
まるで、映画で見る世界のようになってきた。
まあ、面白そうだからいいか……。
ちなみに、10cmから50cmくらいまでのドラゴン類は意外とかわいい。
というのも、ドラゴン類の生態を研究したいという希望者が現れ、許可を出したところ、ふ化施設の隣に家を経てて住み始めたのだ。
男性2人に女性1人が、ドラゴンたちの世話をはじめて、本土に帰ってきた時にその可愛さが広まってしまった。
娯楽の少ないこの時代に、新鮮に写ったのだろう。なぜか、見学希望者が続々と現れた。
シールドアクセを装着していれば時に問題はない。
いつしか、竜島はジュラシックパークになってしまった。
そして、予期せぬトラブルというのは、起こるものなのだ。
「ススム様、竜島に野生のワイバーンが出現しました。」
「駆除するかダンジョンに転送すればいいでしょ。」
「ところが、例の研究者たちが野生の生態を確認したいと、飼育員さんの静止を振り切ってキックボードで巣のある火山へ登ってしまい、その巣で卵3個を発見してしまいました。」
「あちゃ。そのまま観察させろって……いうよね。」
「はい。」
「シールドのアクせって、ワイバーンの個体に有効なんだっけ?」
「はい。」
「とはいっても、留学生である以上、これ以上勝手な振る舞いはさせられないってことを理解してもらわないとな。」
「そういうことでございます。」
俺はその場で、研究者という3人のもとに転送してもらった。
「俺が来た理由は、理解できるかな?」
「いいえ。」
「うーん、君たちはランド王国からの留学生で、俺は君たちを受け入れた側だ。」
「はい。」
「君たちがヤマトに来た理由は?」
「魔法や魔道具その他の知識を学ぶためです。」
「今、君たちがやっているのは?」
「ワイバーンがどのようにして飛行しているか知るための研究です。」
「それは、ランド王国にとっても、ヤマトにとっても必要のない研究だ。」
「僕たちはそう思っていません。これは魔法のために必要な研究です。」
「それなら、留学を中止して、自費で研究を続ければいい。」
「なぜ、僕たちの自由を奪うんですか!」
「いや、国に帰って自由に行動すればいいだろ。君たちがここで研究を続けることは、ヤマトにとってリスクしかない。」
「僕たちは、ヤマトに迷惑をかけてないでしょ!」
「今の君たちは、ヤマトの費用を使って食事をし、ヤマトの提供する魔道具と環境を使い、なおかつそのために専属の監視をつけているんだよ。」
「そんなもの必要ありません。」
「ここは活火山だ。いつ噴火するか分からないんだよ。」
「それは僕たちの命であって、ヤマトには関係ありません。」
「残念だけど、君たちが留学生である以上、ヤマトの認める範囲で行動してもらう。それに従えないというのなら、残念だが帰国してもらうしかないね。」
「馬鹿な!こんな貴重な機会を見逃せというんですか!」
「いや、ワイバーンの育児についてなら、もう何度も観察しているので、そこまで貴重とは考えていないんだよ。まあ、野生の個体というのは初めてのケースだけどね。」
「僕たちの発見した卵を横取りするつもりですか!」
「いや、ほらあそこに飛んでいるタカ型ゴーレムによって、君たちよりも前に卵は確認できているんだ。」
「えっ?」
「メイドさん、ちょっと呼んでくれるかな。」
「招致いたしました。」
メイドさんの手にとまったタカに留学生たちは驚いている。
「さて、どうする?」
「こんな理不尽な国にはいられません!」
結局男性2人は留学を解除し、女性は残ることになった。
「なんでキックボードやアクセサリー類が没収されるんだよ!」
「君たちは留学生の資格を失ったんだから当然だろ。ノートも、ヤマトで入手した魔石なんかもすべて回収させてもらうよ。」
「ふざけんなよ。ノートがないとキックボードも作れないだろう!」
「仕方ないだろう。君たちは資格を放棄したんだからね。」
その後、彼らの親である侯爵が文句を言ってきたらしいが、ヤマトには関係のないことである。
高価な魔石を自費で購入してキックボードを自作しようとしたようだが、動作したという報告は入ってこなかった。
これだけ魔法式を目にしてきた俺だって、資料なしでキックボードを作るなんてできないんだ。諦めてほしい。
ちなみに、魔石に魔法式を書き込む場合、フォーマットするたびに劣化してしまうらしい。
何度も魔法式を書き込んでいると、最後にはボロボロになって崩れてしまうと言っていた。
ヤマトに残った女性については、竜島から退去し、魔法の勉強に戻っているらしい。
「なあ、ワイバーンの卵って、そんなに珍しいものなのか?」
「どうだろうな、最初のころは俺も興味があったけど、もう何十匹も生まれてるしな。」
「まあ、シールドのアクセサリーがなかったら、とてもじゃないが人間が見る機会なんてないだろうからね。」
「幼体の頃は、目がキョロっとしてかわいいんだよ。」
「そういえば、ワイバーンを馴らして騎乗する竜騎士なんていうのが記録にあるよな。どうだハル。チャレンジしてみろよ。」
「そうだな。国王の命令なんだから、ヤマトに滞在して訓練してみるかな。」
「ハル、お前イライザのところに入りびたる気満々だろ。」
「まあ、ヤマトにいれば、ドラゴンの肉が食い放題だしな。悪くない。」
「アルトにだってドラゴン肉は提供してるだろう。」
「貴族が独占するわけにもいかないからな。俺もアルも自重してんだよ。」
「いいよな。ヤマトは……。」
【あとがき】
鳥類は孵化するまで抱卵しますが、爬虫類系であるドラゴンは産みっぱなしで抱卵はしません。
棲家についても、山を適度に配置した独特のつくりである。
飛行系ドラゴンの中でも、ワイバーンの肉は美味といわれており、期待できるエリアでもある。
そして、地下3階である。ここは中央に湖を配置し、周辺は草原となっている。
ここには、淡水系ドラゴンのタキヒメやミナギ。大型草食タイプのブロンズドラゴンやタイロンなどが生まれるだろう。
最下層の地下4階はジャングルと渓谷の複合エリアだ。
おそらく、ティラノレックスやラプトドラゴンなどが跋扈するエリアになると予測される。
ドラゴンは、肉だけでなく皮や被膜が貴重な革加工品の素材になり、牙や角は魔道具の素材や、工芸品やアクセサリーに活用される。
内臓は薬に使用され、眼球以外は余すところなく活用できるらしい。
当然、ハンターには危険が伴うため、討伐は猟師さんに任せることになる。
そして2か月後、育ったドラゴンの産卵が始まり、増殖のきざしが見えてきた。
「ススム様。猟師さんから報告があり、次の世代として種から孵化した幼体が捕食されてしまい、生存率が3%程度だと判明いたしました。」
「じゃあ、地上部分にふ化施設を作って、大きくなってからダンジョンに送るようにしようか。」
ところが、20cmほどになると、狭いふ化施設では飼育できなくなり、もう少し大きくなるまで屋外で放し飼いにすることにした。
ダンジョンに送る目安は1mだ。
この孵化からダンジョンに送るまでの世話役を新設し、飼育員さんと名付けた。
この幼体の餌には、肉として使えない魔物の腱や内臓、魚などを活用しているため、一石二鳥だった。
2か月も経った頃、地上部で監視から漏れた個体が産卵するケースも出てきた。
まるで、映画で見る世界のようになってきた。
まあ、面白そうだからいいか……。
ちなみに、10cmから50cmくらいまでのドラゴン類は意外とかわいい。
というのも、ドラゴン類の生態を研究したいという希望者が現れ、許可を出したところ、ふ化施設の隣に家を経てて住み始めたのだ。
男性2人に女性1人が、ドラゴンたちの世話をはじめて、本土に帰ってきた時にその可愛さが広まってしまった。
娯楽の少ないこの時代に、新鮮に写ったのだろう。なぜか、見学希望者が続々と現れた。
シールドアクセを装着していれば時に問題はない。
いつしか、竜島はジュラシックパークになってしまった。
そして、予期せぬトラブルというのは、起こるものなのだ。
「ススム様、竜島に野生のワイバーンが出現しました。」
「駆除するかダンジョンに転送すればいいでしょ。」
「ところが、例の研究者たちが野生の生態を確認したいと、飼育員さんの静止を振り切ってキックボードで巣のある火山へ登ってしまい、その巣で卵3個を発見してしまいました。」
「あちゃ。そのまま観察させろって……いうよね。」
「はい。」
「シールドのアクせって、ワイバーンの個体に有効なんだっけ?」
「はい。」
「とはいっても、留学生である以上、これ以上勝手な振る舞いはさせられないってことを理解してもらわないとな。」
「そういうことでございます。」
俺はその場で、研究者という3人のもとに転送してもらった。
「俺が来た理由は、理解できるかな?」
「いいえ。」
「うーん、君たちはランド王国からの留学生で、俺は君たちを受け入れた側だ。」
「はい。」
「君たちがヤマトに来た理由は?」
「魔法や魔道具その他の知識を学ぶためです。」
「今、君たちがやっているのは?」
「ワイバーンがどのようにして飛行しているか知るための研究です。」
「それは、ランド王国にとっても、ヤマトにとっても必要のない研究だ。」
「僕たちはそう思っていません。これは魔法のために必要な研究です。」
「それなら、留学を中止して、自費で研究を続ければいい。」
「なぜ、僕たちの自由を奪うんですか!」
「いや、国に帰って自由に行動すればいいだろ。君たちがここで研究を続けることは、ヤマトにとってリスクしかない。」
「僕たちは、ヤマトに迷惑をかけてないでしょ!」
「今の君たちは、ヤマトの費用を使って食事をし、ヤマトの提供する魔道具と環境を使い、なおかつそのために専属の監視をつけているんだよ。」
「そんなもの必要ありません。」
「ここは活火山だ。いつ噴火するか分からないんだよ。」
「それは僕たちの命であって、ヤマトには関係ありません。」
「残念だけど、君たちが留学生である以上、ヤマトの認める範囲で行動してもらう。それに従えないというのなら、残念だが帰国してもらうしかないね。」
「馬鹿な!こんな貴重な機会を見逃せというんですか!」
「いや、ワイバーンの育児についてなら、もう何度も観察しているので、そこまで貴重とは考えていないんだよ。まあ、野生の個体というのは初めてのケースだけどね。」
「僕たちの発見した卵を横取りするつもりですか!」
「いや、ほらあそこに飛んでいるタカ型ゴーレムによって、君たちよりも前に卵は確認できているんだ。」
「えっ?」
「メイドさん、ちょっと呼んでくれるかな。」
「招致いたしました。」
メイドさんの手にとまったタカに留学生たちは驚いている。
「さて、どうする?」
「こんな理不尽な国にはいられません!」
結局男性2人は留学を解除し、女性は残ることになった。
「なんでキックボードやアクセサリー類が没収されるんだよ!」
「君たちは留学生の資格を失ったんだから当然だろ。ノートも、ヤマトで入手した魔石なんかもすべて回収させてもらうよ。」
「ふざけんなよ。ノートがないとキックボードも作れないだろう!」
「仕方ないだろう。君たちは資格を放棄したんだからね。」
その後、彼らの親である侯爵が文句を言ってきたらしいが、ヤマトには関係のないことである。
高価な魔石を自費で購入してキックボードを自作しようとしたようだが、動作したという報告は入ってこなかった。
これだけ魔法式を目にしてきた俺だって、資料なしでキックボードを作るなんてできないんだ。諦めてほしい。
ちなみに、魔石に魔法式を書き込む場合、フォーマットするたびに劣化してしまうらしい。
何度も魔法式を書き込んでいると、最後にはボロボロになって崩れてしまうと言っていた。
ヤマトに残った女性については、竜島から退去し、魔法の勉強に戻っているらしい。
「なあ、ワイバーンの卵って、そんなに珍しいものなのか?」
「どうだろうな、最初のころは俺も興味があったけど、もう何十匹も生まれてるしな。」
「まあ、シールドのアクセサリーがなかったら、とてもじゃないが人間が見る機会なんてないだろうからね。」
「幼体の頃は、目がキョロっとしてかわいいんだよ。」
「そういえば、ワイバーンを馴らして騎乗する竜騎士なんていうのが記録にあるよな。どうだハル。チャレンジしてみろよ。」
「そうだな。国王の命令なんだから、ヤマトに滞在して訓練してみるかな。」
「ハル、お前イライザのところに入りびたる気満々だろ。」
「まあ、ヤマトにいれば、ドラゴンの肉が食い放題だしな。悪くない。」
「アルトにだってドラゴン肉は提供してるだろう。」
「貴族が独占するわけにもいかないからな。俺もアルも自重してんだよ。」
「いいよな。ヤマトは……。」
【あとがき】
鳥類は孵化するまで抱卵しますが、爬虫類系であるドラゴンは産みっぱなしで抱卵はしません。
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