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第二章
第27話 鍛冶はトラブルを招く
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「そうですか、二人が元気に過ごしているとわかって安心いたしました。」
「アリスって、そういうキャラじゃないと思っていたんだけどな。」
「何ということを!次期王女たる私に向かってそうのような無礼は許しません!って、そう言うキャラに見えるんですよね。それというのも、お母様譲りの目つきの悪さからですよね……はあ。」
「い、いや、そういう……。」
「あの二人は、生まれた時から知っておりますもの。現王妃が子供嫌いなために、いつも寂しそうにしていましたの。……何ですの、その目は!」
「いや、アリスの方が……いや。」
「私が結婚しないのは、子供嫌いとかそういうことが原因ではありませんわ。むしろ、子供は好きなほうですわ。」
「へえ、そうなんだ。」
「アリスさんとお話ししていると、お優しいのがわかります。このお茶も、とても優しいお味がしますから。」
「うん。確かにアリスの煎れてくれるお茶はおいしいね。」
「ジェームズだって、昔は可愛かったのですよ。目もクリっとして。」
「ジェームズが可愛かったのは信じられない。盛ってるよね。」
「ホ・ン・ト・ウです。でも、母親がそんなんで、父親も帰属意識の強いひとでしたから、少しずつ歪みが出て、私とも疎遠に……。」
アリスはお茶を一口飲んでから続けた。
「私がこの町で独り立ちできるようになりましたら、シェリーを引き取ろうかと思っていましたの。」
「何故?」
「少なくとも王族の一員ですから、政略結婚の道具には使えますのよ。」
「えっ?」
「彼女の母親は多分王都に残っていますし、少しでも自分に有利な状況を求めるなら、シェリーをどこかの王族か上流貴族に嫁がせますわよね。」
「そこで自分の面倒も見させる……と。」
「貴族ならそう考えるのが自然ですわ。」
「じゃあ、ジェームズ王子が、俺にシェリーを押し付けようとしたのは冗談じゃ……。」
「それはいいアイデアですわね。第二夫人であっても、このヤマト国の代表ですよ。誰も手が出せなくなりますわ。」
「はぁ……。」
「他人事じゃありませんわよ。うちの父だって、それくらいは当然考えていますから、そうですね、私の姉の娘が二人いますからね。」
「冗談じゃないよ。」
「これだけ力のある国の王というのは、そういうものなんですよ。」
俺は、埋もれた名剣を探す楽しさにハマってしまったかもしれない。
その日から、暇があれば各国の武器屋を巡り、掘り出し物を見つけては鍛えなおして収納へ貯めていった。
錬金ハンマーで打ち直した剣は、例外なく綺麗な波紋が浮かびあがり、最低でもSクラスの名剣になった。
俺の鍛えなおした剣を武器屋に持ち込んだことがある。
その店は王家御用達との看板を掲げていたが、店内にはめぼしい剣はなく、高価なものは全て偽物だった。
そこへ本物を持ち込んだのである。
「ああ、見栄えはよいのだが、名のある刀工の剣ではありませんね。」
「ヤマト国という国で、一番の刀工なんですけどね。切れ味も耐久性も抜群なんですよ。」
「聞いたことのない国ですし、せいぜい銀貨5枚というところですね。」
「そうですか。」
俺は、店内で剣を探していた客に向かって言った。
「買取を頼みにきたら、これ銀貨5枚だといわれたんだけど、どう思いますか?」
俺のメガネには”近衛兵団副団長”という肩書が見えている。
「ほう。抜いてもよいですか?」
「はい、どうぞ。」
「うっ、こんな美しい波紋は見たことがない……、外で振ってみても良いだろうか。」
「どうぞ。納得のいくまで見てください。」
副団長は外へ剣を持ち出して軽く素振りをした。
「こ、これほどバランスの良い剣は初めてだ!」
「そうですね。中央よりもやや手元寄りにしてあります。魔物などを切り伏せるのではなく、誰かを守るような姿勢を続けても疲れにくい剣で、振ってから元の姿勢に戻る時も動きやすいと思います。」
「なぜ、そこまで分かるのだ……。まさか、この剣は……。」
「ご想像にお任せいたします。」
「造りも見事だし、刀身も惚れ惚れする綺麗さ。歪みも全くなく、まさに国宝級の剣だと思う。それこそ、陛下が帯刀されても遜色ないと思う。」
「銀貨5枚で如何ですか?少なくとも近衛兵団副団長のお供に相応しい一振りだと思いますが。」
「おぬし、何故それを……。いや、それよりもこの剣だ。団の皆に見せれば、最低でも金貨100枚の値が付く。そういう剣だ。」
「ふ、副団長さまで……。金貨100枚……。」
店主が絶句している。
「剣の価値というのは使う人が決めるもの。まあ、私が鍛えた剣の中では一番未熟なものです。一度値付けされた以上、その金額で結構ですよ。」
「これで、一番未熟だというのか……。だが、私の体が喜びに震えている。これだけの時間静止していても、まったく重さを感じない……。」
「出会いというものがございますからね。」
「わかった。申し訳ないがその価格で引き取らせてもらおう。だが、名を教えてもらえないだろうか。いずれ機会があれば礼をしたい。」
「ヤマト国のススム・ホリスギと申します。」
「私はアルト王国近衛兵団副団長ラインハルト・フォン・ギルダーといいます。」
俺はラインハルトさんから銀貨5枚を受け取り、その場をあとにした。
地球でいえば、ドイツの辺りだろうか。
まあ、仕入れ価格は銀貨3枚だから損はしていない。
この一件から数週間後、俺はブランドン王国のアイリスから呼び出しを受けた。
「わざわざ来てもらってすまんな。実はアルト王国から問い合わせを受けてな。」
「アルト王国ですか。」
「身に覚えがありそうだが、ヤマト国の刀工ススム・ホリスギを知っていたら紹介してほしいとな。」
「はあ、国内で捜索されているのは連絡が来ていますが、もしかして、アルト王国の王族って、刀剣マニアだったりしますか?」
「ああ、ギルダー国王が大の刀剣マニアだと聞いている。それで、いつ刀工になったのだね?」
「まあ、趣味で少し……。」
「君の少しは、常人のそれを凌駕しているからなぁ。」
「それで、なんと?」
「当然待たせてあるさ。」
俺は応接でアルト王国の使者と面会した。
「ヤマト国のススム・ホリスギです。」
「アルト王国渉外局のハタヒ・ベタルです。面会いただき、ありがとうございます。」
「それで、ご用件は?」
「はい、ギルダー国王が、ススム・ホリスギ様を王宮鍛冶師としてお迎えしたいと申しております。」
ぷっと国王代理が噴き出し、使者は一瞬だが顔を曇らせた。
「条件はススム・ホリスギ様の望むままにと伝えられております。何卒、陛下たっての望みをお汲み取り頂けないでしょうか。」
国王代理は笑いを抑えきれず、肩を震わせている。
「せっかくのお申し出ですが、お断りさせていただきます。」
「それは……、理由を伺ってもよろしいでしょうか。」
「はあ、笑った。無理だよ、ここにいるススム・ホリスギ氏は、ヤマト国のトップ。つまり国王にあたるんだからさ。」
「えっ?」
「なんだか、趣味で鍛冶をやったみたいだけど、本職は国の代表なんだよ。」
「まさか……。」
「すみません。ブランドン代理がおっしゃったとおり、副団長のラインハルトさんにお渡しした剣は確かに私が趣味で鍛えた剣です。でも、鍛冶に専任することはできません。国が一番重要ですから。」
「ススム君、それほどの剣を作っちゃったのかい?」
俺はマジックバッグから別の剣を取り出して国王代理に見せた。
「アルト王国で提供したのは、これよりもワンランク下のレベルなんですけどね。あっ、そういえばジェームズ王子にも二振り渡してあるんですよ。魔物討伐に使っているはずです。」
「こ、これを使って魔物討伐……ですか!」
使者の人が驚いている。
「だって、使うために鍛えた剣ですから、毎日使ってもらえば剣だって喜びますよ。」
【あとがき】
錬金ハンマーを使って、本職の鍛冶師が剣を作ったらどうなるのでしょうか……気になります。
「アリスって、そういうキャラじゃないと思っていたんだけどな。」
「何ということを!次期王女たる私に向かってそうのような無礼は許しません!って、そう言うキャラに見えるんですよね。それというのも、お母様譲りの目つきの悪さからですよね……はあ。」
「い、いや、そういう……。」
「あの二人は、生まれた時から知っておりますもの。現王妃が子供嫌いなために、いつも寂しそうにしていましたの。……何ですの、その目は!」
「いや、アリスの方が……いや。」
「私が結婚しないのは、子供嫌いとかそういうことが原因ではありませんわ。むしろ、子供は好きなほうですわ。」
「へえ、そうなんだ。」
「アリスさんとお話ししていると、お優しいのがわかります。このお茶も、とても優しいお味がしますから。」
「うん。確かにアリスの煎れてくれるお茶はおいしいね。」
「ジェームズだって、昔は可愛かったのですよ。目もクリっとして。」
「ジェームズが可愛かったのは信じられない。盛ってるよね。」
「ホ・ン・ト・ウです。でも、母親がそんなんで、父親も帰属意識の強いひとでしたから、少しずつ歪みが出て、私とも疎遠に……。」
アリスはお茶を一口飲んでから続けた。
「私がこの町で独り立ちできるようになりましたら、シェリーを引き取ろうかと思っていましたの。」
「何故?」
「少なくとも王族の一員ですから、政略結婚の道具には使えますのよ。」
「えっ?」
「彼女の母親は多分王都に残っていますし、少しでも自分に有利な状況を求めるなら、シェリーをどこかの王族か上流貴族に嫁がせますわよね。」
「そこで自分の面倒も見させる……と。」
「貴族ならそう考えるのが自然ですわ。」
「じゃあ、ジェームズ王子が、俺にシェリーを押し付けようとしたのは冗談じゃ……。」
「それはいいアイデアですわね。第二夫人であっても、このヤマト国の代表ですよ。誰も手が出せなくなりますわ。」
「はぁ……。」
「他人事じゃありませんわよ。うちの父だって、それくらいは当然考えていますから、そうですね、私の姉の娘が二人いますからね。」
「冗談じゃないよ。」
「これだけ力のある国の王というのは、そういうものなんですよ。」
俺は、埋もれた名剣を探す楽しさにハマってしまったかもしれない。
その日から、暇があれば各国の武器屋を巡り、掘り出し物を見つけては鍛えなおして収納へ貯めていった。
錬金ハンマーで打ち直した剣は、例外なく綺麗な波紋が浮かびあがり、最低でもSクラスの名剣になった。
俺の鍛えなおした剣を武器屋に持ち込んだことがある。
その店は王家御用達との看板を掲げていたが、店内にはめぼしい剣はなく、高価なものは全て偽物だった。
そこへ本物を持ち込んだのである。
「ああ、見栄えはよいのだが、名のある刀工の剣ではありませんね。」
「ヤマト国という国で、一番の刀工なんですけどね。切れ味も耐久性も抜群なんですよ。」
「聞いたことのない国ですし、せいぜい銀貨5枚というところですね。」
「そうですか。」
俺は、店内で剣を探していた客に向かって言った。
「買取を頼みにきたら、これ銀貨5枚だといわれたんだけど、どう思いますか?」
俺のメガネには”近衛兵団副団長”という肩書が見えている。
「ほう。抜いてもよいですか?」
「はい、どうぞ。」
「うっ、こんな美しい波紋は見たことがない……、外で振ってみても良いだろうか。」
「どうぞ。納得のいくまで見てください。」
副団長は外へ剣を持ち出して軽く素振りをした。
「こ、これほどバランスの良い剣は初めてだ!」
「そうですね。中央よりもやや手元寄りにしてあります。魔物などを切り伏せるのではなく、誰かを守るような姿勢を続けても疲れにくい剣で、振ってから元の姿勢に戻る時も動きやすいと思います。」
「なぜ、そこまで分かるのだ……。まさか、この剣は……。」
「ご想像にお任せいたします。」
「造りも見事だし、刀身も惚れ惚れする綺麗さ。歪みも全くなく、まさに国宝級の剣だと思う。それこそ、陛下が帯刀されても遜色ないと思う。」
「銀貨5枚で如何ですか?少なくとも近衛兵団副団長のお供に相応しい一振りだと思いますが。」
「おぬし、何故それを……。いや、それよりもこの剣だ。団の皆に見せれば、最低でも金貨100枚の値が付く。そういう剣だ。」
「ふ、副団長さまで……。金貨100枚……。」
店主が絶句している。
「剣の価値というのは使う人が決めるもの。まあ、私が鍛えた剣の中では一番未熟なものです。一度値付けされた以上、その金額で結構ですよ。」
「これで、一番未熟だというのか……。だが、私の体が喜びに震えている。これだけの時間静止していても、まったく重さを感じない……。」
「出会いというものがございますからね。」
「わかった。申し訳ないがその価格で引き取らせてもらおう。だが、名を教えてもらえないだろうか。いずれ機会があれば礼をしたい。」
「ヤマト国のススム・ホリスギと申します。」
「私はアルト王国近衛兵団副団長ラインハルト・フォン・ギルダーといいます。」
俺はラインハルトさんから銀貨5枚を受け取り、その場をあとにした。
地球でいえば、ドイツの辺りだろうか。
まあ、仕入れ価格は銀貨3枚だから損はしていない。
この一件から数週間後、俺はブランドン王国のアイリスから呼び出しを受けた。
「わざわざ来てもらってすまんな。実はアルト王国から問い合わせを受けてな。」
「アルト王国ですか。」
「身に覚えがありそうだが、ヤマト国の刀工ススム・ホリスギを知っていたら紹介してほしいとな。」
「はあ、国内で捜索されているのは連絡が来ていますが、もしかして、アルト王国の王族って、刀剣マニアだったりしますか?」
「ああ、ギルダー国王が大の刀剣マニアだと聞いている。それで、いつ刀工になったのだね?」
「まあ、趣味で少し……。」
「君の少しは、常人のそれを凌駕しているからなぁ。」
「それで、なんと?」
「当然待たせてあるさ。」
俺は応接でアルト王国の使者と面会した。
「ヤマト国のススム・ホリスギです。」
「アルト王国渉外局のハタヒ・ベタルです。面会いただき、ありがとうございます。」
「それで、ご用件は?」
「はい、ギルダー国王が、ススム・ホリスギ様を王宮鍛冶師としてお迎えしたいと申しております。」
ぷっと国王代理が噴き出し、使者は一瞬だが顔を曇らせた。
「条件はススム・ホリスギ様の望むままにと伝えられております。何卒、陛下たっての望みをお汲み取り頂けないでしょうか。」
国王代理は笑いを抑えきれず、肩を震わせている。
「せっかくのお申し出ですが、お断りさせていただきます。」
「それは……、理由を伺ってもよろしいでしょうか。」
「はあ、笑った。無理だよ、ここにいるススム・ホリスギ氏は、ヤマト国のトップ。つまり国王にあたるんだからさ。」
「えっ?」
「なんだか、趣味で鍛冶をやったみたいだけど、本職は国の代表なんだよ。」
「まさか……。」
「すみません。ブランドン代理がおっしゃったとおり、副団長のラインハルトさんにお渡しした剣は確かに私が趣味で鍛えた剣です。でも、鍛冶に専任することはできません。国が一番重要ですから。」
「ススム君、それほどの剣を作っちゃったのかい?」
俺はマジックバッグから別の剣を取り出して国王代理に見せた。
「アルト王国で提供したのは、これよりもワンランク下のレベルなんですけどね。あっ、そういえばジェームズ王子にも二振り渡してあるんですよ。魔物討伐に使っているはずです。」
「こ、これを使って魔物討伐……ですか!」
使者の人が驚いている。
「だって、使うために鍛えた剣ですから、毎日使ってもらえば剣だって喜びますよ。」
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