上 下
17 / 41
第二章

第17話 増援

しおりを挟む
 翌朝、俺はメイドさんを30人追加した。
 移住者のフォローとかで、ともかく人手が足りないのだ。
 ちなみに、ゴーレムたちは魔法を使えるので、重力制御と結界を使って音速以上で飛行することも可能だし、マジックバッグを使って一瞬で自宅などへ送ってもらうこともできる。
 腕力も半端なく、人間の100倍に設定してある。
 多分、ソードドラゴンとも互角に戦えるのではないかと思っている。
 メイドさんは当然であるが黒のメイド服と白いエプロンを着用しており、ピンクのショートボブは活動的な面からの選択である。ホワイトプリムは標準装備であるが、付け替えも可能である。
 今回のメイドさんは、より人間に近い表情にしてあり、喜怒哀楽も表現できるようになっている。

 ちなみにだが、メイドさんはロボットではないため、ロボット三原則に縛られない。
 俺が許可をだせば、平気で殺人もおかすことができるのだ。

「なあ、ススムよ。」
「何ですかお姉さん。」
「魔法書を読んでいて気が付いたのだが、結解などの空間魔法があるだろ。」
「ええ。」
「転送も空間魔法の一種で、指定した座標軸に沿って空間を入れ替えるんだが、あれって自分にも使えそうなんだよな。」
「俺は魔法が使えませんけどね。」
「まあ、ちょっと見ていてくれ。」
 そういうとイライザ姉さんは1m刻みで転移を繰り返していった。
「凄いですね。やっぱり、姉さんは魔王の名にふさわしい存在です。これって、ゴーレム達には?」
「もう教えてある。だから、メイドさんに頼めば、一瞬で移動できるぞ。」
「じゃあ、これからの移住は……」
「ああ、箱舟を使わなくても一瞬だよ。まあ、安全を期するためには、転移先にもゴーレムがいて状況を確認しながら行うのが一番だけどな。」

「ところで、祝福の仕組みはわかったんですか。」
「ああ。治癒系も成長促進もばっちりだ。今は、成長速度を4倍にして育てているところだよ。」
「じゃあ、少ししたらコメや大豆も収穫できますね。」
「ミカンやレモンもな。」
「それなら、次は味噌や醤油の醸造だな。楽しみが止まらないな。」
「あっ、ススム。」
「何?」
「小麦の買い付け終わったよ。」
「ご苦労様。」
「王国のほかの町に行って、収穫の20%くらいを買い占めてきた。」
「こういう交渉事はライラが適任だな。」
「あとね、魚を売って乳牛を買っておいた。」
「そうか、牧場はまだなかったから、牛舎とか作らないといけないな。」
「羊も買ってくるつもりだよ。」
「繊維関係の産業も立ち上げないといけないのか。そういえば、こっちの世界で絹は見たことないな。」
「絹って?」
「蛾の繭からとったとっても柔らかい糸なんだ。それで織った布は最高の手触りだって聞いてるよ。」
「げっ、蛾の繭って……。」
「この世界にはいないのかな、”サーチ:カイコ蛾”……ダメだ。となると、カイコのタマゴからか。」

 翌日の午後、俺たちは連れだって城を訪れた。
「はあ、あなたたちって、本当に堂々と来るわね。」
「だって悪いことはしていないもの。」
「貴族側から見れば、立派な犯罪者なのよね。」
「私たちから見たら、貴族の悪行のほうがよっぽどだわ。」
「それで、そちらのエルフの方は初めてですわね。私、アリス・スカイ・ブランドンと申します。よろしくお願いいたします。」
「ほう、もしかして宰相の娘さんですか。ライラがいつもご面倒をおかけしていたみたいで、私はイライザ。見ての通りエルフなので姓は持たない。」
「私のお姉ちゃんなの。すごい頭がよくて、もともとは薬師だったんだけど、今はヤマトの魔法解析担当だよ。それで、どうなの?」
「随分と悩みましたが、お父様とも相談してヤマトにお世話になることにいたしました。ススム様、よろしくお願いいたします。」
「やった。ほかに希望者はいた?」
「魔法局から3人と、土木局から3人。軍から4人の希望者を確認しております。すぐに集まるよう手配いたしますわ。」
 その時、コンコンと応接のドアがノックされ、50代くらいのスマートな男性が入ってきた。
 銀色の短髪は誠実な人柄を思わせ、スーツのような紺色の上下は派手さは一切なく、質素ではあるが気品のある装いとなっていた。

「これは、ガラエ宰相。ご無沙汰しています。」
「ススム君も元気そうでなによりだ。」
「メイドさん、遮音結界をお願いします。」
「展開いたしました。」
「遮音?」
「ええ、この部屋の会話を盗み聞きされないように、音を遮る魔法を使わせました。」
「ほう。そんな魔法があるのだね。」
「こちらのイライザ嬢の研究成果で、正直なところこの王国の魔法や魔道具と比べて100年ほどの先端技術になっています。」
「ふむ。君が見せてくれた自動小銃や空を飛ぶ魔道具のことは聞いているが、ほかにどんな技術があるのだね。」
「今、うちで使っている移動用の乗り物は、時速900キロで空を飛べますし、祝福による植物の成長速度は4倍になっています。」
「時速900キロで移動できれば、3時間でこの国を縦断できるではないか……。王都から辺境の町に行くだけで一か月要するというのに……。」
「最先端の技術でいえば、このメイドさんも魔道具なんですよ。」
 メイドさんがカテーシーで挨拶をすると宰相とアリスさんが固まってしまった。
「魔道具……、この女性が。申し訳ないが触らせてもらえないだろうか。」
 メイドさんは宰相に近寄って手を差し出し、どうぞと言った。
「た、確かに体温は感じられないし、目をようく見れば人工物だと思えなくもないが……。」
「彼女は人間の100倍の力がありますし、イライザと同等の魔法も使えます。」
「それは、彼女一人であっても、我が国の軍と戦えるということ……だよなぁ。」
「まあ、剣と初期魔法だけのこの国ではどうにもなりませんね。」
「ところで、今回アリスのほかに10名の希望者がいると聞いている。国としては無期限の留学生としたいのだが、それでいいだろうか?」
「ご配慮いただき、ありがとうございます。それでニワトリの方なんですが。」
「やはり、全部回収してしまうのかね……。」
「……、宰相殿に敬意をはらい、半分は残しましょう。」
「本当か!そうしてもらえると我が国も希望が持てる。」

 宰相との会談の間に、留学生として立候補した10名が集まってきた。
「ごめん。申し訳ないが君を連れていくことはできない。」
「なぜですか!」
「君は、我が国の魔法技術を盗んで、この国で出世することしか考えていないだろ。」
「何の根拠があって!」
 鑑定メガネには、彼の出自から信条まで詳しく表示されているのだ。
「自分の誠意を述べるのでなく、根拠を求める今の発言が如実に語っているだろ。」
「すみません!代わりに、私じゃダメでしょうか!」
「あら、内務局のリンちゃんじゃない。ススム、このこなら私も推薦できるわよ。」
「ライラさん……。」
 こうして10名の留学生が決まり、荷物を送るためメイドさんが同行し、夕方再度集まってもらうことにした。

「じゃあ、私は薬師ギルドの希望者を確認してくるわね。」
「私は商業ギルドへ行ってくるわ。」

 少し経った頃、例のダメ王子が全小隊とともにやってきた。
「ススム、もう逃がさんぞ。」
 この国で小隊というのは、50人規模の舞台であり、第三小隊まで含めると総勢150人規模となる。
 当然総隊長となる貴族がいるのだが、高齢であり寝込んでいるために第一小隊長が好き勝手に振舞っていると聞いた。
「ジェームズ王子、懲りない人ですね……。」


【あとがき】
 うん、ジェームズ王子は定番化してますね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした

月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。 それから程なくして―――― お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。 「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」 にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。 「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」 そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・ 頭の中を、凄まじい情報が巡った。 これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね? ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。 だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。 ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。 ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」 そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。 フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ! うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって? そんなの知らん。 設定はふわっと。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

孤高の英雄は温もりを求め転生する

モモンガ
ファンタジー
 『温もりが欲しい』  それが死ぬ間際に自然とこぼれ落ちた願いだった…。  そんな願いが通じたのか、彼は転生する。  意識が覚醒すると体中がポカポカと毛布のような物に包まれ…時々顔をザラザラとした物に撫でられる。  周りを確認しようと酷く重い目蓋を上げると、目の前には大きな猫がいた。  俺はどうやら猫に転生したみたいだ…。

処理中です...