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第一章
第12話 里
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エルフの里へ行くにあたって、手土産をどうするか考えた末、俺は大好きなメロンを選択した。
当然だが、この世界で今まで見たことはない。
それならば、掘り出してしまえばいい。
メロン3玉×3列×3段で、合計27玉入りの木箱をp掘り出した俺たちは、飛行車でエルフの里に向かった。
当然、王城から少し歩いて、人目のないところで車に乗る。
タイヤもシャーシーも白く塗装された車は、重力制御装置の稼働によりフワリト浮かび上がった。
上昇を続けながら、風魔法の噴射で前進していく。
「この道沿いに、まっすぐ西に向かえばいいんだよね。」
「はい。」
助手席にはライラが座り、後部座席にイライザが座っている。
「まったく、こんなもので空を飛ぼうなんて、頭がおかしいんじゃない。」
「でも、魔道具として機能しているってことは、理にはかなっているわずだよ。」
「そうそう。浮かび上がっているのは重力魔法によるもので、前に進むのは風魔法によるものだよ。」
「重力魔法なんて、聞いたことないわよ。」
「そうなんだ。じゃあ、ほの表現方法がわかれば、同じような魔道具が制作できるってことだよね。」
「だが、これほどの魔道具を動かす魔法石なんて、滅多に手に入らないわよ。」
「そこはほら、神様が何とかしてくれるよ、きっと。」
「ススムのところの神様っていうのは、本当に都合のいい神様よね。」
「お姉さんは祝福が使えるってことは、巫女もやったことがあえうんですよね。」
「やったわよ。」
「教会で信仰している神様って、どんな神様なんですか?」
「何を言っているのかしら。神様といったらこの世界をお創りになった創造神様しかおられないじゃないの。」
「最近わかってきたことなんですけどね。」
「何が?」
「人間の直接の祖先が生まれたのは20万年くらい昔なんですよ。」
「いや、教会の教えでは、6000年前だとされているぞ。」
「じゃあ、それでもいいですけど、この大地と太陽が生まれたのが46億年前だとわかりました。」
「人間が誕生するまで、随分かかったのね。」
「そうですね。元は焼けてドロドロだった大地が固まって、冷えて水が発生しました。」
「まあ、順番は経典と大差ないわね。」
「それから、海の中で生命の元が発生して、ゆっくり時間をかけて変化し、今の生物が生まれてきます。」
「それで?」
「神様が世界を作り始めたのが136億年前で、太陽を作ったのが46億年前。人間を作ったのが6000年前だとすると、その間、何をしていたんですかね?」
「それは、……いろいろあったんじゃないかしら。」
「そんなに長い時間なのに、経典には何にも書いてないんでしょ?」
「ええ……。」
「経典って、人間が勝手に書いたんじゃないでしょうか。想像で。」
「じゃあ、祝福はどうなるのかしら。神様のお力なのよ。」
「魔法も同じような力ですよね。」
「何が言いたいの?」
「まあ、神様みたいな存在はいると思うんですけど、それは創造神とかじゃなくて、俺たちを導いてくれる上位の存在なんじゃないかなって思うんです。」
「それって……。」
「どうでもいいことなんですけどね。」
「どうでもいいの?」
「ええ。俺たちは今を受け入れることしかできませんからね。でも、殊更に創造神とかに拘っているのを聞くと笑いたくなっちゃいませんか。」
「……。」
50mの高度で、一時間ほど飛んだあたりで50軒ほどの集落が見えてきた。
「あっ、多分あれよ。」
「多分?」
「だって、上から見たことなんてないから。」
俺は、比較的大きな広場にゆっくりと降下していった。
20人ほどが、口をあけたまま見上げている。
俺たち三人は車から降りて、集まっていた人々に愛想をふりまいた。
「あっ、お父さん!」
「えっ、お前……誰?」
「ちょっと、お父さんボケちゃったの!」
「ライラちゃん、その人チップス叔父さんよ……多分。」
80年も経てば記憶も劣化する。
「ライラだとぉ、そうかお前ナックのとこの娘だな!あのアホだったやつ。」
「アホ……、失礼なことをいう叔父さんなんて嫌いよ。」
「叔父さんって、お前んとこと俺に血の繋がりはないぞ。」
「だって、チップス叔父さんでしょ?」
「いや、俺はラックスだ。」
80年の時は簡単に埋まりそうになかった。
それでも、情報収集をして家を割り出し、家族の体面を果たすことができた。
「ご無沙汰して申し訳ございませんでした……。」
「えー、ようこそお帰りくださいました。」
「お父様もお母様もお変わりなく……。」
80ねんぶりの家族の再会なんて、こんなものだろう。
「えっと、この人が内務大臣の補佐官でススム・ホリスギさん。私の伴侶です。」
「ススム・ホリスギです。今回は突然お邪魔して申し訳ございません。」
「いやいや、こんな遠くまでよく来なすった。何もない村だが、ゆっくりしていってください。」
少しだけ打ち解けたあたりで、やっと俺を紹介してくれた。
お父さんのナックさんは、銀髪の30才くらいに見えるスマートな人だった。困るのはお母さんだ。メグという緑髪ロングのスレンダー女子で、顔だちもライラ・イザベルに似ている。
髪型が違っているおかげで何とか見分けがつく。
「それで、何で空なんて飛んできたのぉ?」
「あれなら、王都から1時間くらいで来られるんですよ。」
「1時間だとぉ!それなら、毎日でも行き来できるじゃねえか。」
「ええ。やっと完成したので、試験飛行がてらお邪魔した次第です。」
「ということわぁ、私もお城に行けるってことよね。」
「あれっ、小笠さんって王都へいったことなかったの?」
「そぉなのよね。ナックがぁ、行かせてくれなくて。」
メグさんは、時々間延びした独特のしゃべりかたをする。
「当たり前だ。お前みたいにトロい奴が王都になんて行ったら、すぐに奴隷商人につかまって売り飛ばされちまうだろ。」
あながち、無いとも言い切れない。
エルフの会話で気が付いた。
時々、子供のころの話になったりするのだが、100年から200年前のことなので、記憶に齟齬が生じるのだ。
しかも、4人とも言っていることが違っていると収集がつかない。
「それにしても懐かしいな。ライラが5才の夏だったか、頭から血を流して帰ってきた時は心臓が止まるかと思ったぞ。」
「あらぁ、血を流して帰ってきたのはイライザよねえ。」
「待って、ライラが血を流して帰ってきたのは、犬に足を噛まれたからよね。」
「それでぇ、頭からの出血を見て、おじいさんホントに心臓が止まっちゃったのよね。」
「おい!親父はまだ生きてるだろうが!」
こんな感じになってしまう。
「それで、今回訪問した理由の一つが、このメロンです。」
「ずいぶん大きな果実だな……。」
「私のぉ、顔くらいおおきいわぁ。」
「ライラとイザベラも初めて見るよね。」
二人がコクコクとうなづく。
収納から大き目のまな板を取り出し、折り畳みナイフで切りわたを除いて切り分けていく。
「な、なんという芳醇な香り!」
「甘いぃ、香水みたい。」
「こんなの初めてだわ。」
「こんな香りが外にもれたら大変なことになりますよ。」
「貴重な種ですから、きちんと保管しておきます。」
「貴重なのか?」
「この世界にはない果実ですからね。」
「どういうことだ?」
「俺の世界から取り寄せたんです。このナイフもバッグも、他にはないモノなんですよ。」
【あとがき】
長生きの種族って、こんな感じだと思うんですよね。記憶力に特化した種族でない限りは……。
当然だが、この世界で今まで見たことはない。
それならば、掘り出してしまえばいい。
メロン3玉×3列×3段で、合計27玉入りの木箱をp掘り出した俺たちは、飛行車でエルフの里に向かった。
当然、王城から少し歩いて、人目のないところで車に乗る。
タイヤもシャーシーも白く塗装された車は、重力制御装置の稼働によりフワリト浮かび上がった。
上昇を続けながら、風魔法の噴射で前進していく。
「この道沿いに、まっすぐ西に向かえばいいんだよね。」
「はい。」
助手席にはライラが座り、後部座席にイライザが座っている。
「まったく、こんなもので空を飛ぼうなんて、頭がおかしいんじゃない。」
「でも、魔道具として機能しているってことは、理にはかなっているわずだよ。」
「そうそう。浮かび上がっているのは重力魔法によるもので、前に進むのは風魔法によるものだよ。」
「重力魔法なんて、聞いたことないわよ。」
「そうなんだ。じゃあ、ほの表現方法がわかれば、同じような魔道具が制作できるってことだよね。」
「だが、これほどの魔道具を動かす魔法石なんて、滅多に手に入らないわよ。」
「そこはほら、神様が何とかしてくれるよ、きっと。」
「ススムのところの神様っていうのは、本当に都合のいい神様よね。」
「お姉さんは祝福が使えるってことは、巫女もやったことがあえうんですよね。」
「やったわよ。」
「教会で信仰している神様って、どんな神様なんですか?」
「何を言っているのかしら。神様といったらこの世界をお創りになった創造神様しかおられないじゃないの。」
「最近わかってきたことなんですけどね。」
「何が?」
「人間の直接の祖先が生まれたのは20万年くらい昔なんですよ。」
「いや、教会の教えでは、6000年前だとされているぞ。」
「じゃあ、それでもいいですけど、この大地と太陽が生まれたのが46億年前だとわかりました。」
「人間が誕生するまで、随分かかったのね。」
「そうですね。元は焼けてドロドロだった大地が固まって、冷えて水が発生しました。」
「まあ、順番は経典と大差ないわね。」
「それから、海の中で生命の元が発生して、ゆっくり時間をかけて変化し、今の生物が生まれてきます。」
「それで?」
「神様が世界を作り始めたのが136億年前で、太陽を作ったのが46億年前。人間を作ったのが6000年前だとすると、その間、何をしていたんですかね?」
「それは、……いろいろあったんじゃないかしら。」
「そんなに長い時間なのに、経典には何にも書いてないんでしょ?」
「ええ……。」
「経典って、人間が勝手に書いたんじゃないでしょうか。想像で。」
「じゃあ、祝福はどうなるのかしら。神様のお力なのよ。」
「魔法も同じような力ですよね。」
「何が言いたいの?」
「まあ、神様みたいな存在はいると思うんですけど、それは創造神とかじゃなくて、俺たちを導いてくれる上位の存在なんじゃないかなって思うんです。」
「それって……。」
「どうでもいいことなんですけどね。」
「どうでもいいの?」
「ええ。俺たちは今を受け入れることしかできませんからね。でも、殊更に創造神とかに拘っているのを聞くと笑いたくなっちゃいませんか。」
「……。」
50mの高度で、一時間ほど飛んだあたりで50軒ほどの集落が見えてきた。
「あっ、多分あれよ。」
「多分?」
「だって、上から見たことなんてないから。」
俺は、比較的大きな広場にゆっくりと降下していった。
20人ほどが、口をあけたまま見上げている。
俺たち三人は車から降りて、集まっていた人々に愛想をふりまいた。
「あっ、お父さん!」
「えっ、お前……誰?」
「ちょっと、お父さんボケちゃったの!」
「ライラちゃん、その人チップス叔父さんよ……多分。」
80年も経てば記憶も劣化する。
「ライラだとぉ、そうかお前ナックのとこの娘だな!あのアホだったやつ。」
「アホ……、失礼なことをいう叔父さんなんて嫌いよ。」
「叔父さんって、お前んとこと俺に血の繋がりはないぞ。」
「だって、チップス叔父さんでしょ?」
「いや、俺はラックスだ。」
80年の時は簡単に埋まりそうになかった。
それでも、情報収集をして家を割り出し、家族の体面を果たすことができた。
「ご無沙汰して申し訳ございませんでした……。」
「えー、ようこそお帰りくださいました。」
「お父様もお母様もお変わりなく……。」
80ねんぶりの家族の再会なんて、こんなものだろう。
「えっと、この人が内務大臣の補佐官でススム・ホリスギさん。私の伴侶です。」
「ススム・ホリスギです。今回は突然お邪魔して申し訳ございません。」
「いやいや、こんな遠くまでよく来なすった。何もない村だが、ゆっくりしていってください。」
少しだけ打ち解けたあたりで、やっと俺を紹介してくれた。
お父さんのナックさんは、銀髪の30才くらいに見えるスマートな人だった。困るのはお母さんだ。メグという緑髪ロングのスレンダー女子で、顔だちもライラ・イザベルに似ている。
髪型が違っているおかげで何とか見分けがつく。
「それで、何で空なんて飛んできたのぉ?」
「あれなら、王都から1時間くらいで来られるんですよ。」
「1時間だとぉ!それなら、毎日でも行き来できるじゃねえか。」
「ええ。やっと完成したので、試験飛行がてらお邪魔した次第です。」
「ということわぁ、私もお城に行けるってことよね。」
「あれっ、小笠さんって王都へいったことなかったの?」
「そぉなのよね。ナックがぁ、行かせてくれなくて。」
メグさんは、時々間延びした独特のしゃべりかたをする。
「当たり前だ。お前みたいにトロい奴が王都になんて行ったら、すぐに奴隷商人につかまって売り飛ばされちまうだろ。」
あながち、無いとも言い切れない。
エルフの会話で気が付いた。
時々、子供のころの話になったりするのだが、100年から200年前のことなので、記憶に齟齬が生じるのだ。
しかも、4人とも言っていることが違っていると収集がつかない。
「それにしても懐かしいな。ライラが5才の夏だったか、頭から血を流して帰ってきた時は心臓が止まるかと思ったぞ。」
「あらぁ、血を流して帰ってきたのはイライザよねえ。」
「待って、ライラが血を流して帰ってきたのは、犬に足を噛まれたからよね。」
「それでぇ、頭からの出血を見て、おじいさんホントに心臓が止まっちゃったのよね。」
「おい!親父はまだ生きてるだろうが!」
こんな感じになってしまう。
「それで、今回訪問した理由の一つが、このメロンです。」
「ずいぶん大きな果実だな……。」
「私のぉ、顔くらいおおきいわぁ。」
「ライラとイザベラも初めて見るよね。」
二人がコクコクとうなづく。
収納から大き目のまな板を取り出し、折り畳みナイフで切りわたを除いて切り分けていく。
「な、なんという芳醇な香り!」
「甘いぃ、香水みたい。」
「こんなの初めてだわ。」
「こんな香りが外にもれたら大変なことになりますよ。」
「貴重な種ですから、きちんと保管しておきます。」
「貴重なのか?」
「この世界にはない果実ですからね。」
「どういうことだ?」
「俺の世界から取り寄せたんです。このナイフもバッグも、他にはないモノなんですよ。」
【あとがき】
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