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第三章 冒険者

キノコ狩り

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俺は薬師の爺さんを訪ねた。

「すみません、ギルドからいわれて来たんですが」

「あっ、仁さんですね。お爺ちゃんを呼びますのでお待ちください」

薬屋のお姉さんはそういって奥に引っ込んだ。
俺のイメージに反して、店にはそれほど薬が並んでいるわけではない。
おいてあるのは、回復薬と傷薬程度だ。

やがて、仙人みたいな小柄な爺さんが現れた。

「お前さんかい、専属契約を断ってくれたのは」

「悪いな、こう見えて結構忙しいんだよ」

「ああ、承知しておるよ。
竹ペンやリバーシを作っとるんじゃろ」

「まあ、作るのは職人に任せているんだが、何か思いついたらかかりきりになるからな」

「じゃがな、急な病人なんかで特殊な薬が必要になる時があるのじゃよ」

「ああ、空いてる時ならやってやるよ」

「特に、鮮度の必要なものは、使う直前にとらざるをえんのじゃよ」

「わかったよ」

「それとな、別の話になるのじゃが、採取の時にこのカエデを連れて行って欲しいんじゃが」

「俺は構わんが、男の裸に免疫はあるのか」

「なんじゃ、お前は裸で採取するのか」

「裸といえば裸だな……」

「まあ、病人を見るときには裸にすることもあるからのう」

「はい、大丈夫ですよ」

「俺はオオカミに変身できるんだ」

「ほう、では匂いで薬草を探しておるのじゃな」

「そういうことだ。
だから、変身する時は素っ裸だ」

「あ、あの、変身する時は後ろを向いてますから」

「それでいいなら構わないぜ」

そんなやり取りがあって、翌日採取に同行することになった。



翌日、俺はイチロとジロを連れて薬屋へ出向いた。
三匹だと、手が回らない可能性があるからだ。

「これって、シャドウパンサー……」

「ああ、俺よりも劣るが、こいつらも匂いを追うのは得意だからな。
で、今日は何が目的なんだ」

「全般でいいんですけど」

「それじゃあダメだ。
匂いを追うんだから、対象を特定して、サンプルを用意してくれよ」

「じゃあ、センニンダケでいいですか。
それなら、いくらあっても売れますから」

「いきなりハードルをあげるじゃねえか。
一個見つければひと月分の生活費だぜ」

「無理でしょうか……」

「いや、構わねえぜ。
サンプルはあるんだよな」

「はい、大丈夫です」

俺たちは山の麓まで、馬車で移動してキノコ採取を始めるのだった。

最初はイチロとジロだけで探させる。
俺は後ろからついていくだけだ。

その間にも、サルノコシカケやマイタケなどを見つけて採取していく。
シメジ・シイタケなども快調に採取できた。
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