上 下
26 / 40
第二章

王妃様のご機嫌伺

しおりを挟む
「王妃様、遅くなりましたが新商品のご紹介に伺いました」

「ほう、新商品とな。
それは楽しみですね」

「今回は芋と栗を使っております。
お口に合うか分かりませんがご試食のほど、お願いいたします」

「栗……それは初耳……」

「先に、芋で作って市場に出しましたところ、大変好評でして、栗のほうを試行錯誤しておりましたのでご案内が遅れてしまいました」

「そ、そうでしたか。では早速……」

「栗のモンブランにございます」

「おお、栗のホクホク感が……」

「同じものを庶民向けに作った芋のモンブランもお試しください」

「う、うむ、庶民の味といえど侮れませんね」

「芋を練って作ったスイートポテトにございます」

「芋がこのように上品な味に仕上がるとは、さすが萌殿……」

「芋とハチミツを使った大学芋にございます」

「これは、芋を揚げてあるのですね」

「最後に、焼き芋にございます。
温めた石でジンワリと焼き上げてございます。
これは、あまりにも芋そのものですから、王妃様には下賤かとも思いましたが……」

「い、いえ。
庶民の食生活を知るのも王族の役目……
おお、芋のホクホク感がたまりませんね」

「お気に入りいただけたのでしたら重畳にございます」

「萌殿の作られるものには興味があります。
今後も、新作ができましたら賞味させていただきたいものですわ」

「はい、承知いたしました」

こうして、無事、王妃様のご機嫌を取ることができた。
面倒な……



ある日の事、俺は久しぶりにオオカミの姿で目的もなく走っていた。
風が撫でていく草を全力で追いかけるのは気持ちいいものだ。

と、不意打ち気味にとびかかってきた影があった。
俺は、走っていた勢いのまま弾き飛ばす。
シャドウパンサーという魔物だった。
普段は自分より大きな獣を襲うことなどないのだが……

シャドウパンサーは打ち所が悪かったのか、こと切れている。
気になって飛び出してきた茂みを確認すると、子供が3頭ミィミィと泣いていた。
子供を襲われるかと勘違いして襲い掛かってきたのだろう。
気の毒なことをした。

シャドウパンサーは、墨のような真っ黒な体をしているネコ科の魔物だ。
俺は人間の姿になり、3頭を抱いて家に帰った。

智代梨と萌に事情を話すと、ひどく同情した。

「まったく、目的もなしに走るなんて変態じゃないかしら」

「欲求不満なんでしょう。
夜になったら発散していただくとして、どうしますかね」

メイドに頼んでミルクを持ってきてもらったが口にしようとしない。
腹が減るまで放っておくしかないのだろうか……
しおりを挟む

処理中です...