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第一章

オオカミのイメージに騙されるな

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「でもさ、オオカミって悪いイメージしかないじゃん。
ほら、送りオオカミとかさ」

「あれも、間違った解釈だよ。
オオカミは縄張りをもっていて、縄張りに入ると好奇心もあって監視にくるんだ。
それで、縄張りから出るまでついてくるんだよ。
だから、オオカミがいなくなったら縄張りから出たってことなんだけど、昔の人は縄張りから出るまで案内してくれてありがとうって、感謝したらしいんだ。
だから、送りオオカミは悪いことをする例えじゃないんだぞ」

「えー、でもやっぱ赤ずきんのイメージが強いな」

「じゃあ、聞くけど。日本の童話で、オオカミが悪いのってあるのか」

「あれっ?
ホントだ。日本で悪さするのって、キツネやタヌキ……」

「あったとしても、最近になって作られた、オオカミを理解していない人の作品だろ。
オオカミは大神であって神の使いとも考えられていたんだ。
神の使いを悪者にするはずがないだろ」

「悪いのは、グリムとか、そういう童話を作った人?」

「どうなんだろうな。
世界的に広く生息してる肉食獣で、生活圏が重なって家畜が襲われることはよくあったみたいだけど、人の被害ってそんな状況でもごくわずかだよ。
結局、作者が怖がりだったんじゃないのかな。
だって、オオカミは犬の起源だろうよ」

「そっか……
でも、仁君はなんでそんなにオオカミを庇うのかな?」

「俺も、最初はオオカミって悪いイメージだったんだけど、調べてたらあれ、実際は違うじゃんって思ってさ」

「じゃあ、オオカミちゃんには……って」

「日本で人を騙すのって、タヌキかキツネだろ」

「でも、騙すだけで、人を襲わないよね」

「人が襲われるとしたら、クマだろうな」

「クマちゃんには騙されない……あははっ、騙される前に、一撃でやられてるね」

「だから、あれも製作側が無知なだけだよ」

「そういえば、クマって日本だとかわいい系になってない?」

「森熊さんとか金太郎でも、悪役じゃないよな。
教訓として残すんなら、クマを怖いイメージで伝えないと駄目だと思うな」

「獣の奏者を思い出すね」

「ああ、人に慣れてても猛獣なんだぞって伝えてるよな。
オオカミもああいうスタンスで表現してほしいよな」

「犬やネコだって、子育て中とか怖いもんね」

「ああ、俺も自分ちの犬に噛まれたことがある。
気が立ってる時に、後ろから首輪外そうとしたらガブってさ」

「ワンちゃんには騙されない……あははっ、意味が分かんないよね」
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