上 下
5 / 40
第一章

魔法の適正

しおりを挟む
俺たちの毎日は午前中が実技訓練で、午後が魔法の練習となる。

「よおし、今日の実技訓練は念の訓練だ。
念とは、行ってみれば”俺って最強じゃん”という思い込みから始まる。
ジン、掛け声係だ。午前中は、ランニングしながら掛け声を叫び続けること。
わかったな、始めろ」

「ういっす
俺って最強じゃん!」

「「「俺って最強じゃん!」」」

「声が小さーい、力の限り叫び続けろ!」

「俺って最強じゃん!」

「「「俺って最強じゃん!」」」

「まだまだ!」

『俺って最強じゃん!』

『『『俺って最強じゃん!』』』



「こ、こんな訓練、意味あるのかよ」 ゼイゼイッ

「と、とにかく、やるしかないでしょ……」 ハアハアッ


午後は魔法の時間だ。

「では、今日は皆さんの属性を確認しましょう。
最初は水です。
人差し指の先から水が出るのをイメージしてください」

「水か、H2Oが二つだよな。
水素二つに酸素一個集めるイメージか……
だめだ、全然出てこねえよ」

「チヨリさんはもう水が出てきましたね。
キョウスケさんもしっとりしています。
他の二人は、水の素質はないみたいですね」

「いや、もう少しで……
ごめん、トイレ行ってくる」

「ジン、出す場所を間違えてんだろ」

「うるせえよ」



「次は炎です。
指先から炎を出すイメージをしてくださいね」

「炎か……熱ならいいんだろ
水の分子を激しくこすり合わせれば……アッチチ」

「熱と炎は違いますよ
あくまでも炎です」

「ほい、出たぜ。
指先が熱くて仕方ねえよ」

「これは、モエさんも熱くなっていますね。
続いて風です。
指先から風を出すイメージです」

「おっ、出たぜ」

「俺は出ないな」

「出ました!」

「風はモエさんとジンさんですね。
最後は土です。
この泥団子をつぶしてみてください。
ジンさん、直接手でつぶしてどうするんですか。
これはキョウスケさんとチヨリさんですね」

キョウスケの泥団子は、一度潰れて四角くなっていた。

「暫定的ですが、ジンさんは炎でキョウスケさんは土。
チヨリさんが水で萌さんは風ですね。
ここで注目していただきたいのは、炎と風は相性が良いので相手の魔法も少し使える点です。
土と水も同じです。
逆に、炎と水は相性が悪いのでふつうは全く反応しません。
土と風にも同じことが言えます」

「待って。
風と水はどうなのよ」

「あまり相性はよくないですね。
火と土は、状況によっては協力しあえますが、風と水は両方の力が分散してしまいます」

「そ、そんな……」

「えっと、あくまでも魔法の相性であって、人間性とかは関係ないですからね」

「そ、そうよね」
しおりを挟む

処理中です...