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第四章 

まだ10歳……

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その夜、ヒメが帰宅し、ささやかだがミャイさんの歓迎会が行われた。

「えへへっ、今日は実家からセミエビとウチワエビを送ってもらいました」

「「「おお!」」」

……もういいや、実家だろうが自宅だろうが、そんなに変わらない……んだろう……きっと

「うわっ、ヒメちゃん、私の好物を覚えていてくれたんだ。感激よ」

「お刺身と、焼いたものを用意させていただきました。
お味噌汁にも使っています。どうぞご堪能ください」

「あぅ、甘い!」

「それで、迷宮の温泉が完成しました。食事のあとで行きませんか?」

エルフも獣人もマーメイドも……みな、人前で裸になる事に抵抗はないらしい。
お風呂というよりも、裸で入る温水プールといった方が近いと思う。
お湯の中で、時々キラキラ光っているのは、スター種らしい。

「うわあ、聖水のお風呂もいいけど、こっちもリラックスできていいわね」

「そうね。気持ちいいわね。でも、タケルの目がオッパイにくぎ付けになってる……」

「仕方ないでしょ。まだ、生後半年なんだから。ほら、おいでタケル」

俺はサクラ姉ちゃんに横抱きにされた。

「少しくらいなら、吸ってもいいわよ。お乳はでないけど」

さすがに、それは……まだ10才だけど……
オッパイは気持ちいい。だけど、この態勢が好きなのは、頬を伝わってくる姉ちゃんの心音だ。
トクン……トクン……トクン……
この安定したリズムは、サクラ姉ちゃん固有のものだ。

「あっ、お姉さまだけずるいです」

目を閉じて、姉ちゃんに体を預けた俺に……次々とオッパイが押し当てられる。
ヒメは見なくともわかる。このボリューム感はカーリーだな。
おお、この柔らかさはミャイさんだろう。やや硬めなのはイシュタルか……

ああ……まだ10才なんだ……

姉ちゃんの心音を聞きながら、俺は眠ってしまったらしい。
眠ってしまった俺の面倒を見てくれたのはカーリーのようだ。
次は私の胸で眠ってくださいね……とか言われてしまった。

朝になってもモアは戻らなかった。
無理難題を押し付けてしまったようで、後悔している。某ネコ型ロボのアニメであまりにも安易に使っているので簡単に思えてしまったのだが、そうではなかったようだ。
そうだよな……そんなものが簡単に使えるのなら、ほかの移動手段は必要なくなる。
物流なんて、とんでもないことになるんだよな。
産地直送どころではない。食べたいものがあったら、直接現地に行って食べればいい。
ひょっとしたら、ダム無しの水力発電もできそうだが……。

俺とヒメは、次の迷宮に向かうための準備を進める。
エジプト・ギリシャ・スペイン・イギリスにある迷宮6か所を一気に制覇するつもりだ。
ドロップ品の整理を行い、武具を点検する。そのまま、不用品処分のためギルドへ行く。

「おっ、今日はヒメとデートかよ。
なら、買取は減額だな」

「そこは、増額でサービスするんじゃないのかよ」

「ばかやろう。なんで幸せそうな顔したお前に、サービスしなくちゃならねえんだよ。
お前が幸せのおすそ分けをするべきだろうが!」

すっかり顔なじみになった武器買取コーナーのあんちゃんが文句を言ってくる。
そのあんちゃんの頭に、何かが当たりスコーンと音を立てた。
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