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第四章 

迷宮巡り

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ヨーコの迷宮は、急ピッチで整備されていった。
土木用ゴーレムの活躍はめざましく、宿泊施設も整っていく。
世界樹の若木も植樹され、成長促進でその根が地下6階と7階に伸びる。
伸びた根から幹が伸び、樹冠で受けた太陽光を地下で成長した木々が放出し、特定の枝から樹液が滴り落ちて池を作り、聖水へと変貌していく。
その一部は、地下7階の別フロアに引き込まれ大浴場が完成した。

こっちの整備は姫たちに任せ、俺は世界中の迷宮に挑戦する。
そもそも、迷宮とは何か?
これは、いまだに分かっていない。
人工物もあれば自然のものも存在する。
この世界での定義としては、魔力等によりモンスターが自然発生し生息する場所であり、廃墟などであっても迷宮になりうるし、発生しなければ迷宮とは呼ばれない。
まったく開けた森の中でモンスターが発生することはなく、実は魔力の溜まりやすい窪みがあったりして、そこから発生することはあった。
そういった場所は、人や精霊の手で修復され迷宮ではなくなっていく。
吹き溜まる魔力の濃度で、モンスターの強弱が決定するとも言われているが、未だ解明はされていない。

迷宮には、発生・生息するモンスターの強さによって、超級・上級・中級・低級の4種類が設定されており、超級は世界に5か所、上級でも30か所前後と言われている。
超級は、バジリスク並みのモンスターが生息しているため、原則として封印されており、まだ俺のステータスでは無理なようだ。
したがって、攻略対象は上級が中心となるが、アジア近郊だけでも、まだ10か所の上級迷宮が残っている。

手始めに、MRSの北側にある上級迷宮に移動した。
メンバーは、俺とモア、カーリーにライム・ナイト・ホシガタ・マグマグ・カゲリ、アニー。
もっとも、ナイト以下のモンスターは、ポケットに入っていたり、胸当てに張り付いていたりして存在感はない。
迷宮の序盤は、スキルのコピーに終始した。
特に、状態異常無効と自動回復は全員に必須だ。
ライムの超高速移動も全員にコピーする。

超高速移動と自動回復を備えたメイドさんは凄かった。

「ご主人様……凄いです。一瞬で相手の死角に回り込めます。
しかも、全然疲れません。」

チーターが元来持っている瞬発力に、上乗せされるのだ。
始動速度はライムを上回るかもしれない。

「この、オリハルコンの出刃包丁も凄すぎます。」

せっかくの鍛冶職だからと、カーリー用の武器を作ろうと言ったら、出刃を希望された。
メイド職には、家事製品の方が使いやすいらしい。

迷宮内で石化ばかり使われたら、邪魔でしょうがない。


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