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第四章 

挑発

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養成所のモンスター研究科は、入学式から1週間も経たないうちに多くの課題を抱えてしまった。
単独ではなく、項目によって財団やMRSなどとの共同になるものの、子供に背負わせるには重たすぎる。

問題を整理する。

・スター種の生息場所確保
・スター種の生態および生息数調査
・5種類の新規発見モンスターの生態調査

更に俺固有の依頼として、他の迷宮調査が加わった。
これは願ってもない事だ。
モンスター研究科としては、確実に成果を出して、養成所の実績として完結させたい。
それは、卒業後の進路にも影響するし、MRSと財団連名で公表できる。
だが、間違いなくリスクが存在する。
なにしろ迷宮の最下層が活動の拠点となるのだ。

養成所側は、急遽12名の保護者会を開いた。
あくまでも自主参加で、強制はしない。
例外として、他の科への移動も可能との事だったが、無論そんな希望は無かった。
これを成功させれば、確実にエリートコースだし、しかも、MRSとのパイプもでき、財団とのコネもできる可能性が高い。
こうして、来週から迷宮最下層での寄宿生活が始まる事となった。

クラスメイトの中で、班長をハカセ君、副班長を姫ちゃんとする事が決まり、具体的にどう進めるか、クラスでの話し合いが始まった。

「では、スター種から希望されている環境ですが、可能であれば地上に近い環境が良いという事で、特に光が必要だそうです」

ハカセ君の言葉に、レオが疑問を口にします。

「そうか!整備されたここは、冒険者用に照明が整備されている。だが、それなら上の階層も同じ条件だろう。
何で地下6階と7階なんだ?」

「関連していますが、理由は二つあります。
地下5階までは洞窟がメインで、いくつかの小部屋が付随した構成ですが、地下6階と7階は広い空洞が中心となっている事です」

「戦闘を嫌う彼らは、モンスターや人を回避しますよね。
探知能力に優れ、素早い移動が可能なスター種でも、両側をふさがれるのはイヤって事ですよね」

「なるほどね。そうなると、二つ目の理由は、人やモンスターの数ね」

「そうです。下に行くほど、モンスターは強くなりますが、彼らの脅威となるほどではありません。
一般的な冒険者……いえ、上級の冒険者でも、彼らにとっては亀のようなものだそうです……」

「ほう、やはりそうなのか。
タケル、一度手合わせをお願いしたいんだけど、断らないよな」

「ご主人様の前に、私がお相手いたしますわ。
お馬鹿な白ネコさん」

メイド形態のカーリーは、口調まで変わってしまった。
天職ともいうべきジョブは聖メイド……何だろう、”聖”って……

「いいよカーリー、ボクも一度精霊さんと手合わせしてみたかったんだ。
ただ、スフィさん本来の姿でお願いしますね。女性相手だとやりづらいので」

「ほう、挑発で返してくるとは、楽しみじゃないか」
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