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第三章 MRS

据え膳

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とりあえず指示を出しておく。
俺の体に張り付いていること。
死なないこと。
成長すること。
この三つにした。

名前はアニーと命名。魔力や生命力は、必要があれば自分で吸収してかまわないと説明。
何となく、モドキングはヘレン・ケラーを連想させた。
聴覚障害と視覚障害により言葉も失った彼女に、指文字などを使って言葉を教えた家庭教師。
彼女の名前がアン・サリバンで通称アニー。

アニーは、シャワーを浴びると、どこにいるのかよくわかる。
そこだけ抵抗がなくなるからだ。
水は苦手みたいで、シャワーのかからない場所に移動する。
これは水だと説明した。

俺が寝ている間、胸から下にいるよう指示をした。
昼前にモアに起こされ、順に魔力を供給していく。
アニーには500ポイントだけ魔力を提供する事にした。
胸のところにいたアニーに手をあてて魔力を供給する。

歯を磨き、顔を洗って服を着る。
ホールでノアちゃんと姫ちゃんに合流し、メタルスパイダーに魔力を供給してから会食の会場へ移動する。
一旦控室に通され、時間を調整する。
迎えに来てくれたのはスフィさん一人だったが、控室にはコアさんとカーリーさんが待機していた。

「おはようございます。
眠る時間はあったんですか?」

「2時間くらいは眠らせてもらえたわ。
それよりも、モドキングはどうなの、生きてる?」

「ええ、元気なのかどうか分かりませんが、ここにいますよ」

「触っても平気かしら?」

「多分……あっ、カーリーさんとスフィさんは左手にしてくださいね」

「ふむ、武器の類は察知するのかな?」

「いえ、僕が怖いので」

「安心しろ、この右手はバカ女にしか使わない」

「この暴力女は、凍らせておいたほうが世のためなんだがな」

「えっと、お二人はヒトデスライムの毒と、ヒクイアリの麻痺、どちらがお好みですか?」

「……タケル、なんで一晩でそんなに状態異常のスキル持ちを手に入れられるんだ」

ヒクイアリは、影縫いという麻痺系のスキルを持っていた。
当然、耐麻痺も持っており、これをコピーしたところ、俺のスキルは状態異常無効という複合スキルに変化した。
これにより、多分強制睡眠なども回避できると思う。
更に、ジョブスキルに状態異常付与が加わっている。

「タケル君が非常識なのは、今に始まった事じゃないでしょう」

「そうですわ。旦那様はただの変態じゃあありません」

「ちょっと……姫ちゃん。俺って変態だと思われているわけ……」

「据え膳を食べずに、生殺しにして楽しむド変態ですわ」

「……」

「ところで、タケルのハーレムはどれくらい広がっているんだ?
この暴力女が契約奴隷になったのは聞いたが……」

「クラスメイトが5人で、獣人の女性が一人。奴隷さんで7人目ですわ」

その時、部屋の空気が変わった。

「タケル、ハーレムなんて許しませんよ」

「ね……姉ちゃん、違う、俺は何もしていない」

「サクラ様、その話は自宅でゆっくりと。
今は、先方をお待たせしています」

「そうですね。では、皆さんお待たせしてしまいましたね。会場に入りましょう」
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